口座開設は無料。オンラインで簡単にお申し込みいただけます。
最短3分で入力完了!
Chief Investment Strategist
サマリー: 第4四半期決算では、インフレ圧力により企業が営業利益率の大幅な低下に見舞われていることが示されました。欧米の大手企業を分析した結果、インフレは経済の供給面に起因しているため、予想通り、エネルギーセクターと鉱山会社では営業利益率が拡大していることが分かりました。これら2つのテーマは引き続きインフレや地政学的ショックに対するヘッジとなるため、投資家は株式のポートフォリオにこれらを組み込むべきです。また、ポリシリコン価格の高騰による太陽光発電株の暴落についても触れていますが、興味深いことに、これは現在の石油・ガスのエネルギー危機が一因となっています。
エネルギーのレジームシフトに伴い、投資家は非ESG企業の受け入れが必要
最近のいくつかのエクイティノートでは、インフレおよびそれが株式リターンに及ぼす影響についてよく取り上げてきました。Home Depot、Danone、MercadoLibreが最近発表した決算は、なぜインフレ期が企業にとって難しいのかを示しています。一般的に、投入コストの上昇をすべて転嫁することは、需要を破壊する可能性があるため困難です。そのため、インフレサイクルの後半(現在の状態)では、多くの企業がインフレを営業費用に吸収するようになり、営業利益率や投下資本利益率が低下します。
インフレ要因が経済の供給面に左右されている場合は、鉱業セクターとエネルギーセクターがナチュラルヘッジとなります。また、インフレ率とともに金利が上昇するならば、ある程度は金融セクターもヘッジになります。当社は、S&P 500およびSTOXX 600のうち、2021年第4四半期の決算を発表した537社(金融と不動産を除く)を対象に、2021年第3四半期と比べて第4四半期の営業利益率(四半期のEBITDA利益率)がどのような影響を受けたかを調査しました。以下の表は、様々なセクターにおける前期比のEBITDA利益率の平均変動率(パーセント・ポイント)を示しています。エネルギー株が現在のインフレ圧力に対する最適なヘッジであることは明らかですが、一般消費財セクター、ヘルスケアセクター、ITセクターもよく持ちこたえています。一方、産業、通信サービス、生活必需品、公益事業は営業利益率が最も圧迫されています。
この中で、鉱山企業はどこに属するのかと疑問に思うかもしれません。鉱業会社は、化学、建材、包装、製紙などの企業から成る素材セクターに分類されます。鉱業会社は四半期決算を発表する予定がない企業、もしくはまだ発表していない企業がほとんどです。Rio Tinto、BHP Group、Glencoreなどの鉱山会社の半期決算を見れば、鉱業セクターの利益率が拡大していることは明らかです。繰り返しになりますが、投資家にとって、エネルギー企業および鉱業会社が現在のインフレ環境に対する最適なヘッジだと言えます。ただし、しばらくは、ESGのことは忘れておく必要があります。
上のヒストグラムで前期比のEBITDA利益率の変動を見ると、中央値が-0.9ポイントと分布がマイナスに偏っており、世界の大企業の間で広範にわたり営業利益率が縮小していることが分かります。以下の表は、米国および欧州の大手上場企業40社とその営業利益率の推移を示しています。プラス側では、Apple、Exxon Mobil、Walt Disney、ASMLなどの企業が価格決定力のある企業として際立っているのに対し、Microsoft、Alphabet、Amazon、Johnson & Johnson、Home Depotなどの企業は利益率が圧迫されています。
Name | Sector | Market Cap (USD mn.) | Chg. EBITDA margin in %-pts |
Apple Inc | Information Technology | 2,681,611 | 3.5 |
Microsoft Corp | Information Technology | 2,156,998 | -2.4 |
Alphabet Inc | Communication Services | 1,713,282 | -3.9 |
Amazon.com Inc | Consumer Discretionary | 1,528,543 | -3.0 |
Tesla Inc | Consumer Discretionary | 849,058 | -0.6 |
NVIDIA Corp | Information Technology | 584,750 | 0.5 |
Meta Platforms Inc | Communication Services | 550,050 | 0.5 |
Visa Inc | Information Technology | 479,048 | 1.6 |
UnitedHealth Group Inc | Health Care | 435,175 | -0.4 |
Johnson & Johnson | Health Care | 423,680 | -2.0 |
Procter & Gamble Co/The | Consumer Staples | 378,569 | -0.3 |
Walmart Inc | Consumer Staples | 378,496 | -0.4 |
Mastercard Inc | Information Technology | 359,995 | -0.5 |
Home Depot Inc/The | Consumer Discretionary | 330,157 | -2.1 |
Exxon Mobil Corp | Energy | 323,699 | 3.2 |
Coca-Cola Co/The | Consumer Staples | 270,013 | -11.2 |
Walt Disney Co/The | Communication Services | 269,618 | 6.3 |
Pfizer Inc | Health Care | 266,780 | -5.4 |
ASML Holding NV | Information Technology | 259,743 | 4.4 |
AbbVie Inc | Health Care | 257,460 | 2.5 |
Chevron Corp | Energy | 255,226 | -3.5 |
Broadcom Inc | Information Technology | 236,535 | 1.6 |
Cisco Systems Inc/Delaware | Information Technology | 233,880 | 0.0 |
PepsiCo Inc | Consumer Staples | 232,904 | -5.4 |
Novo Nordisk A/S | Health Care | 229,970 | -7.5 |
Eli Lilly & Co | Health Care | 228,750 | 7.1 |
Verizon Communications Inc | Communication Services | 226,263 | -5.0 |
Costco Wholesale Corp | Consumer Staples | 222,683 | -0.3 |
NIKE Inc | Consumer Discretionary | 218,519 | -4.4 |
Comcast Corp | Communication Services | 212,790 | -1.8 |
Accenture PLC | Information Technology | 211,705 | 1.4 |
Novartis AG | Health Care | 209,654 | -4.3 |
Thermo Fisher Scientific Inc | Health Care | 208,802 | -1.0 |
Abbott Laboratories | Health Care | 207,227 | -2.6 |
Adobe Inc | Information Technology | 206,793 | 0.0 |
Shell PLC | Energy | 202,153 | 10.5 |
Oracle Corp | Information Technology | 197,934 | -43.6 |
salesforce.com Inc | Information Technology | 192,203 | -1.8 |
Merck & Co Inc | Health Care | 191,845 | 22.2 |
Danaher Corp | Health Care | 190,319 | 7.1 |
皮肉にも、エネルギー危機によりグリーントランスフォーメーションが鈍化
グリーントランスフォーメーションという株式テーマはここ1年以上、下落圧力を受けており、太陽光発電株に関するETF(TAN:arcx)は2021年初めの高値から46%下落しています。これにはいくつか原因がありますが、1つは、PV(太陽光発電)グレードのポリシリコンの価格が2020年の安値から430%上昇したため、太陽光パネルが値上がりし、太陽光発電プロジェクトのコストが上昇していることです。
現在のポリシリコン価格の高騰の背景には2つの要因があります。それは、2018年および2019年に中国メーカーが生産設備を過剰に拡大したこと、また、それと同時に太陽光発電プロジェクトの需要が鈍化し、供給過剰の問題が増幅されたことです。2020年には中国では新たな生産設備は追加されませんでした。大規模な景気刺激策とグリーンエネルギープロジェクトへの注力により、2020年と2021年には再び需要が急増し、供給を大幅に上回るようになりました。さらに、世界的な物流コストの上昇で、太陽光パネルの総コストはさらに上昇しました。また、中国のエネルギー危機により、ポリシリコン生産地域での電力生産の主要エネルギー源である石炭も値上がりしています。従来のエネルギー源のエネルギーコストが高くなると予想されるため、ポリシリコン価格は高止まりし、太陽光発電プロジェクトの需要に影響を及ぼすと考えられます。
エネルギー危機と金属不足が、グリーントランスフォーメーションの減速の原因となっているのは皮肉なことです。グリーントランスフォーメーションは、石油・ガスへの投資を伴わない二者択一的な移行にはならないことが明らかになりつつあります。