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Chief Investment Strategist
サマリー: 水素は、今後10年以内に経済の脱炭素化を実現するためのソリューションとして注目を集めており、水素関連の株式は複数の大型案件の受注などを背景に年初の取引で好調なスタートを切っています。これらを踏まえると、今年は水素ビジネスにとって大きな転換期となる可能性があると当社は考えます。ただし、再生可能エネルギーの発電設備は原子力に比べてより短期間で設置可能で化石燃料の天然ガスよりも環境に優しい一方、安定的な供給が難しいというデメリットもあります。また、水素はクリーンで価格の安定したベースロード電源として活用できますが、発電技術の効率が低いためコストがかかるといった課題も残されています。
今週、最も優れたパフォーマンスを上げたテーマ別バスケットは、年初来で10.2%上昇したエネルギー貯蔵で上位2位のバスケットとなっています。そのうち、パフォーマンス首位の銘柄は主にPlug Power、Bloom Energy、Ballard Power Systems、Nel、FuelCell Energyといった燃料電池や水素生産の銘柄で占められています。また、水素業界では年初に大型案件の受注がいくつか発表されており、2023年は同セクターの転換点となる兆しも見受けられます。
昨年、当社は多くのレポートでエネルギー危機を取り上げました。その中でも特に電力価格の高騰や欧州でのベースロードに関する問題に注目してきました。再生可能エネルギーは発電量が不安定であり、その割合が増えれば増えるほどベースロードを確保して電力網や価格を安定させない限り、電力価格の変動が激しくなるといった課題を抱えています。以前はフランスの原子力発電やロシアからの安価なガスがその役割を果たしてきました。しかし、フランスの原子力発電所の腐食現象やロシアの供給削減によるガス価格の高騰によって欧州のベースロード電源不足は一層深刻化しています。また、電気自動車や空気熱利用ヒートポンプの需要の急速な拡大は電力需要の急増につながりました。こうした中、欧州のスマートグリッド関連の銘柄は向こう数年間にわたって下押し圧力に晒されるでしょう。再生可能エネルギーの余剰電力で製造されるクリーンな水素は、短期的には優れたソリューションのように見受けられますが、それに伴い発電コストも増加します。
一方、原子力発電所は建設に時間がかかりすぎ、核融合発電の実用化には程遠いのが現状です。また、ロシアの天然ガスをベースロード電源として使用する選択肢が失われる中、天然ガスの発電コストは従来に比べて上昇しています。再生可能エネルギー発電設備の容量はより短期間で拡大できるものの、ベースロードの問題は払拭できません。そこで、水電解装置を使用して水と水素を分解するために再生可能エネルギーの余剰電力を活用する方法が有益な選択肢となります。クリーンな水素を製造した後で貯蔵し、発電所でベースロード発電に活用するのです。この技術を活用するためには、ロシアの天然ガスの供給が選択肢に含まれていたとしてもガスに比べて高い発電コストがかかりますが、欧州で電力の脱炭素化を実現するためには、短期的には唯一の解決策となるかもしれません。
エネルギー貯蔵は、より環境に優しい社会を実現するためのテクノロジーとして、その重要性を増しているだけでなく、経済のより多くの部分が電動化される中で、必要不可欠なビジネスとなっています。また、電気自動車の台頭で電池メーカー各社は大規模なEV導入に対応しており、当社は引き続きこれらの銘柄とリチウム採掘関連の銘柄に対して非常にポジティブな見方を維持しています。ただし、今年は水素関連の銘柄が飛躍的な上昇を遂げる年となるかもしれません。