高級ブランドはインフレ時代に成長を遂げる有望株に

高級ブランドはインフレ時代に成長を遂げる有望株に

株式
Peter Garnry

Chief Investment Strategist

サマリー:  欧州はテクノロジーの発展で米国に後れを取ったかもしれませんが、その代わりに高級ブランド業界において圧倒的な優位性を確立してきました。これらの企業はいずれも高い成長力と利益率、およびブランド認知度を誇り、世界中の消費者を魅了しています。投資家は多種多様なETFを通じて高級ブランド銘柄に投資できますが、これらのETFの多くは高級ブランド以外の銘柄へのエクスポージャーを取っているため、あくまでも手始めとして活用する場合に適しています。私たちは独自の調査に基づき、世界の高級ブランド業界に特化したエクスポージャーを獲得する最良の選択肢として、高級ブランド銘柄23社を特定しました。これらの企業は物価上昇や先行き不透明感が続く世界経済において高い成長性と利益率を実現し、強固なビジネスを確立しています。


欧州では医薬品以外で最も成長性を見込めるセクターに

2008年以降、米国のテクノロジー産業は世界をリードし、米国株式の圧倒的なパフォーマンスに大きく寄与してきました。米国のテック企業の多くは象徴的なブランドとなり、世界中の消費者や企業にとって無くてはならない製品を提供しています。欧州は米国とのテック戦争に大敗し、グリーンエネルギーで10年に一度のチャンスを掴もうと躍起になっています。しかし、欧州には世界的な影響力を誇る医薬品セクター以外にも、高級ブランド業界という力強い成長エンジンが存在します。

米国のテック産業ほど世界の株式市場を支配する存在ではありませんが、当グループのテーマ別投資のバスケットに組み入れた4大高級ブランド企業の時価総額は1,000億ドルを上回っており、欧州の主要株式指数において大きなウェイトを構成しつつあります。米国のハイテク銘柄と同様に、これらの企業は高いブランド力と利益率を誇り、適応力に優れた無形資産活用型のビジネスモデルを展開しています。なかでもフランスの巨大企業LVMHは世界の高級ブランド業界で首位の座を誇り、1989年10月以来、年率リターンで14.1%(配当金再投資含む)、トータルリターンで7,974%を上げるなど、過去30年余りにわたって揺るぎない成功を収めてきました。もし米国が情報テクノロジー業界を支配するとするならば、欧州はまぎれもなく世界の高級ブランド業界を支配しています。

LVMH share price | Source: Saxo

株式テーマ別バスケット:高級ブランド銘柄

世界や欧州の高級ブランド業界を投資対象とするETFは数多く存在しますが、これらのETFを比較してみると、実際は高級ブランドとは言えない銘柄を含むETFが非常に多いことに驚かされます。例えば、Amundi S&P Global Luxury UCITS ETF の組入銘柄には、テスラやメルセデスベンツ、エスティローダー、ディアジオ、ペルノ・リカールといった銘柄が上位10銘柄に含まれています。これらの企業は確かに世界の1%、あるいは0.1%の限られた人々に提供する製品も取り扱っているものの、一般市場に流通する中流階級向けの商品が主な収益源となっています。

私たちは独自に調査を行い、世界の高級ブランド業界に特化したエクスポージャーを獲得する最良の選択肢として、以下の上場企業23社を特定しました。これらの企業の時価総額は合計1.19兆ドルに達し、前述のLVMHはあらゆる指標において業界を圧倒する実績を維持しています。世界的な金利上昇やインフレ進行、および経済の先行き不透明感が続く中において、これらのハイブランド企業の売上高は過去1年間で21%拡大し、EBITマージンの中央値は13.5%に上ります。また、そのうち上位10社のEBITマージンの平均値は24.1%に達します。大手10社のアナリストの目標株価が現在の株価をわずかに上回る、あるいは下回っていることからも明らかな通り、ここ最近の高級ブランド銘柄の株価上昇は多くのアナリストにとって予想外の展開となっています。また、過去5年間の株式のリターンを見ると、「LVMH」、「エルメス」、「クリスチャン・ディオール」のいわゆる3大ブランドが最も高いリターンを生み出していることが分かります。高級ブランド業界のビジネスは、大きいに越したことはないようです。

それでは、高級ブランドとは一体何でしょうか?これには複数の定義が存在し、私たちが調査した企業の多くが高級ブランドに該当します。ただ、皮肉なことにそれらの多くが高級ブランドの特性をわずかに備えながらも、中流階級の人々にも手が届く価格帯の商品を提供しているのも事実です。私たちにとって「高級ブランド」とは、主に上流階級の人々だけが日常的に買うことのできる商品を提供する企業を意味します。デロイト社が発行した「Global Fashion & Luxury Private Equity and Investors Survey 2021」というレポートは興味深いもので、本レポートの5ページに高級ブランド業界の分類別の勢力図が掲載されています。その中でも高級車は圧倒的な規模を誇るセグメントで、当グループのテーマ別投資バスケットもポルシェ、フェラーリ、アストンマーティンといった銘柄を通してこのセグメントのエクスポージャーを保有しています。高級ブランド業界全体に共通するもう一つの特性は、比較的寡占化が進んでいることで、業界の専門家はM&A活動を背景に今後もこの傾向は続くと予想しています。LVMHは過去30年間にわたって積極的なM&Aを通して、今や高級ブランド業界のバリューチェーン全体に影響を与えています。

Source: Deloitte

中国経済再開で高級ブランド株に賭ける投資家

中国当局のゼロコロナ政策からの脱却をきっかけに、中国の経済再開に賭けた取引が拡大し、昨年12月中旬から今年にかけて中国株式市場への資金流入が加速しています。コモディティや運賃指数など中国の経済成長に連動する指標は、まだ中国経済が加速する兆候を示していないものの、投資家は高級ブランド銘柄への投資によって間接的に中国の回復シナリオを織り込んだ賭けに出ています。今後、中国経済が順調に回復するならば、中国の富裕層による高級ブランドへの支出は拡大を遂げるでしょう。

当グループのテーマ別投資のバスケットのうち、高級ブランド銘柄は1月に18%上昇し、2月に入ってからも上昇を続けています。これは、世界経済の再加速や中国の富裕層による高級品への支出拡大を見越した投資家から大規模な資金が流入していることを示しています。こうした動きは、中国株式に対して過度なエクスポージャーを保有することに抵抗のある外国人投資家にとって有効な選択肢となっているようです。富裕層の支出は一般的な消費者に比べて景気やインフレにそれほど大きく左右されないため、高級ブランド銘柄はインフレに対する耐性が強いという、もう一つの興味深い特性を持ち合わせています。今朝公表されたエルメスの昨年第4四半期の決算は、売上高の伸び(恒常通貨ベース)が前年同期比23%増と予想を上回り、強力な成長性を裏付けする内容となりました。また、同社は全世界で7%の値上げに踏み切ったことを発表し、インフレによるコスト上昇を消費者に転嫁できる余力があることを示しました。

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