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Chief Investment Strategist
サマリー: 26日夜はMicrosoft、Alphabet、Visaの決算発表で第1四半期決算シーズンがピークを迎えますが、その前に、最近の経済論文における「生産性の成長は線形(加法的)であり、従って経済成長の主な原動力となるのは経済システムへのエネルギー投入量である」という考えについて検討します。つまり、エネルギー危機に直面している今は、問題があるということです。それは、キャシー・ウッド氏の言う破壊的イノベーションという考えが間違っているということでもあります。そのため、世界では、次のステップの飛躍的な成長を実現するために、エネルギー技術の大きなブレイクスルーが求められています。
生産性の成長はおそらく線形であるため、エネルギー技術の奇跡が必要
MicrosoftやAlphabetなど26日夜の米国の大手テクノロジー企業の決算発表と、Visa、UPS、PepsiCo、General Electric、Mondelezなどのその他の重要な決算発表が待たれる中で、GDPの成長、エネルギー、そして生産性について取り上げ、物質的世界が直面している明らかな障壁について見ていきます。
4月にThomas Philippon氏が発表した経済論文「Additive Growth*(加法成長)」において、全要素生産性(TFP)の成長は線形であり、指数関数的ではないことが示され(線形の成長と指数関数的な成長の違いについては下のグラフを参照)、注目を集めました。この内容は、経済成長理論にとって大きな意味を持つものです。常々、生産性は最も重要な要素だと耳にしますが、その成長が線形ならば、生産性による経済成長は時間とともに収束してゼロになるということです。生活水準の向上は続きますが、そのペースは緩やかになります。蒸気機関や電気、内燃機関(自動車)の発明と比べて、2022年の技術進歩が「爆発的」でないように見えるのは、そのためでしょうか。
しかし、ここからが興味深いところです。GDPは、アンサンブル平均と時間平均の問題があるため、経済活動を測るには欠点がある指標ではありますが、経済活動はGDP=エネルギー投入量×生産性(TFP)と定式化することができます。仮に、生産性の成長が経済成長に対して線形(加法的)であるのに、500年にわたり指数関数的なGDPの成長が見られるならば、その理由は、エネルギー投入量が指数関数的であるからにほかなりません。ここで、エネルギー投入量とは、人力(いわば機械時代以前の機械)と石炭、石油、ガスなどのエネルギーの投入を組み合わせたものと考えることができます。Ole Petersによる下のグラフは、この動向を示すために、CO2排出量(石炭・石油・天然ガスの燃焼)に対してGDPを対数で表したものです。エネルギー投入量を増やせば、経済が成長します。
ソース: Ole Peters
挑発的な言い方をするならば、真の大きなブレイクスルー(蒸気機関、灯油、電気、内燃機関、飛行機、ラジオ、原子力、トランジスタ、リチウムイオン電池など)の中間の期間には、人類はそれほど革新的ではないとも言えます。1859年にエドウィン・ドレークが石油を発見し、石油時代が始まりました。その間、原子力エネルギーが発見されるまでは、必要資本と比べて経済へのエネルギー投入量が最も大幅に増加しました。そしてすぐに、前例のない経済成長と生活水準の向上がもたらされました。上のグラフが示すように、人類は基本的に炭化水素(石炭、石油、天然ガス)を燃やすプロセスを反復することによって、GDP成長率と生活水準を一段と高めてきました。その理由として、生産性の成長は線形(加法的)であるため、長期にわたってGDPを高めていくのに十分ではないということが考えられます。エネルギー投入量の大幅な増加だけがGDPを有意に増加させるのです。
この成長の仮説が正しければ、キャシー・ウッド氏の言う破壊的イノベーションという考えは明らかに間違っているということです。エネルギー技術の大きなブレイクスルーが達成されるか(核融合など?)、あるいは経済成長を大幅に抑えつつ利用可能なGDPを再分配するか、いずれか一方が実現されない限り、世界は破滅的な気候危機に突入するでしょう。炭化水素の拡大からGDPを実質的に切り離すエネルギー技術のブレイクスルー(当然、再生可能エネルギーが一つの解決策になる)を実現することができず、かつ経済活動を縮小させたくないならば、気温上昇とそれに伴うあらゆる副次的影響という気候危機を加速させ、それと共存していくことになります。
エネルギーと金属への投資の急増に伴い、GDP成長の大波が到来?
前のセクションは、ほとんどの人にとって気の滅入るような話になってしまいましたが、楽観的でいるべきです。おそらく、必要に迫られた科学者たちがエネルギー技術のブレイクスルーを実現し、世界は次のステップの大きな富の増加と経済成長へと進むことができるでしょう。エネルギー価格と金属価格の高騰を背景に、スーパーサイクルと新たな投資ブームが生まれ、その影響でGDP成長率が大幅に上昇する可能性があります。エネルギーや鉱業への投資は、ストリーミングやソーシャルメディアのプラットフォームとは違い、GDPに反映される活動だからです。
29日には、Exxon MobilとChevronが第1四半期決算を発表します。ロシアの石油・ガスの代替品を得るためだけでなく、エネルギー全体の産出量を増やすためにも、世界で大幅なエネルギー投資の拡大が必要とされていることから、当然ながら両社の設備投資計画に注目が集まります。