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マーケット・ストラテジスト(Saxo Group)
サマリー: 市場動向は変化しました。金利上昇下で圧迫されるセクター(テクノロジー)から軸足を移し、経済成長にとってより重要な分野(コモディティ)を選好するようになっています。主要コモディティが流行となり、今年に入ってから上昇基調となっています。石油、リチウム、銅、金、銀が先んじて記録的なパフォーマンスを上げています。ここでは、注目するコモディティ株4銘柄を取り上げ、その理由を説明します。
昨年発表した当社の「Quarterly Outlook (四半期見通し)」では、石油、石炭、リチウム、銅、穀物(小麦)、食肉といったコモディティが先んじて値上がりすると警告していました。その後、ウクライナ戦争の勃発を受けて、供給不安が高まり、脱グローバリゼーションの動きが生じるとともに、コモディティ価格が記録的な高値に押し上げられました。また、これに伴い、カーボンニュートラルを目指す動きも活発化し、 「グリーン・インフレーション」 、すなわち(需要増加と非弾力的な供給による)グリーンメタルの価格上昇が起こりました。万が一、ウクライナでの戦争が明日終わったとしても、やはりコモディティのスーパーサイクルは近いと考えます。コモディティ企業が既に市場で最高のキャッシュフロー(およびフリーキャッシュフロー)を誇る中で、コモディティ価格はさらに上昇し、投資家に一層の利益をもたらすはずです。
来るべきコモディティのスーパーサイクルを支える要因
インフラ需要(道路・鉄道、ダム、住宅、建物、中国が英仏海峡トンネルの2倍の長さの海底トンネルを建設、中国が5Gステーション/データセンターを建設)、食料需要、冷暖房需要が高まっていること、カーボンニュートラルが推進されていること、そして投資家が「現物」資産を求めていることが追い風になるはずです。つまり、需要が旺盛である一方、コモディティの供給は停滞しています。その原因となっているのは、天候上の制約(猛暑、厳冬)や、銀行・企業が鉱山企業・掘削業者に融資することを妨げる規制上の問題(倫理的あるいはESGの制約)、地域社会の抗議による鉱山の操業停止(RioのSerbian鉱山)などです。
パフォーマンスへの影響
今年はコモディティにとって2000年以来最高の年となっています。23種のコモディティ先物価格(エネルギーから素材、農産物まで)を追跡するBloomberg Commodity Indexは、年初来で53%上昇した後、今も記録的な高値圏にあり、上記の理由から2022年中にさらに高い水準に達しそうです。テクニカル指標もこれを裏付けています。
個別株では、今年、米国とオーストラリアでコモディティ株が最も高いパフォーマンスをあげています。石油・ガス企業および作物栄養企業のパフォーマンスは市場全体を大きく上回っています。石油企業の中では、Occidental Petroleum(OXY)が104%上昇、Halliburton(HAL)は60%上昇しています。肥料会社の中では、Mosaic(MOS)が73%上昇、CF Industries(CFF)43%上昇しています。いずれも、米国のベンチマークであるS&P500(年初来12%下落と低迷)のパフォーマンスを大きく上回っています。
コモディティの原動力となるその他の5つの要因
要因1)賃金の上昇と供給問題
Amazon、Tesla、IBM、BHP、Rioなど、世界の大企業の一部は、賃金上昇と供給問題が今年いっぱい続くと指摘しています。TeslaやIBMのように、利益率の縮小に見舞われながらも、コストを消費者に転嫁していくという企業もあります。IBMをはじめとする多くの企業がそう明言しています。
要因 2 )全体的な利益が減速する中、コモディティ企業は例外となっていること
米国の四半期決算では、2022年第1四半期の利益が停滞していることが示されました。賃金上昇とサプライチェーンの問題を背景に、利益の伸びは過去の平均を約70%下回りました。第1四半期の全体的な利益成長率はわずか2.6%(決算発表を終えたS&P 500企業275社の結果)にとどまり、利益成長率の平均10%を下回りました。最も利益の伸びが大きかったのはエネルギーセクターで第1四半期の平均利益成長率は245%、次いで素材(鉱業)セクターの37%でした。
要因3 )今後、金利が上昇する見通しであること
FRBは昨年(2021年11月)、 「インフレと闘う」 ためにできることを実行すると示唆しました。その後、インフレ率は40年ぶりの高水準 (3月には前年同月比8.5%)まで上昇しました。インフレ率はFRBの予想以上に上昇しており、今後もインフレは持続する見通しであるため、FRBはこれに対処するために積極的に利上げを行うはずです。5月第一週にはFRBが0.5%の利上げ(2000年以来最大の上げ幅)を実施すると予想されています。FRBの金利予測モデルであるテイラールールによれば、年末時点の金利はコンセンサス予想金利の2.6%ではなく、9%であるべきだと示されています。
要因4 )優良企業が選好されていること
今年は、バランスシートが良好で、規模が大きく、フリーキャッシュフローも潤沢である企業(特にコモディティ企業)が選好されてきました。これらの企業はインフレ率の上昇と金利上昇の中でも持ちこたえることができるため、こうした傾向は今後も続く見込みです。既に市場動向から分かっていることは、今後6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月にわたり好調に推移しそうな銘柄(コモディティ)が選好されるということです。
要因 5 )2022年にはG7諸国はバランスシートを4,100億ドル圧縮する見通しです。それにもかかわらず、コモディティ企業は買い戻しに十分なキャッシュフローを保有しています。
多くのコモディティ企業は豊富なフリーキャッシュフローを保有し、買い戻しを発表する可能性が高いと見られます。それに加えて、多くの企業では、利益と比べてバリュエーションが堅実です。たとえウクライナ戦争が明日終わったとしても、バイデン米大統領のインフラ刺激策、さらには中国の刺激策により、コモディティ企業のキャッシュフローおよびフリーキャッシュフローはやはり大きく増加します。特に記録的なインフレと金利上昇という現在の新たな相場環境では、キャッシュフローと利益の増加は株価上昇の鍵だと言われています。
注目すべきセクターと銘柄
リチウム
世界のリチウム価格は今年、新高値をつける可能性が高そうです。Lithium Price Index(リチウム価格の指標)は史上最高水準にあり、リチウム株の上昇を支えています。内燃機関(ICE)を段階的に減らしている電気自動車メーカーによる需要増加と供給不足を踏まえると、今年はリチウム価格がさらに上昇する可能性が高いと考えられます。Morgan Stanleyも同様の見方をしています。ただし、Morgan Stanleyはリチウム価格に関しては弱気の見方をとっており、来年にはリチウムは余剰状態に戻ると見ています。リチウムの供給が不足していることや、国際エネルギー機関(IEA)が2050年までに燃料消費型エンジンの販売禁止を目指していることから、リチウム価格は今年だけにとどまらず長期的に上昇する可能性があると我々は考えています。
注目銘柄: Sociedad Quimica y Minera de Chile(ソシエダード・キミカ・イ・ミネラ・デ・チリ:SQM)
SQMは世界有数のリチウム企業であり、植物肥料にも多角化しています。同社の利益の41%をリチウムが占めています。同社は、カリウムなどの肥料・植物栄養素のほか、利益の57%を占めるその他の農業製品も生産しています。リチウムも肥料も成長市場です。炭酸リチウム価格は2026年まで年平均17%のペースで上昇すると予想されています。また、肥料は、世界が収穫高を増やす中で高い年平均成長率を示すこと、また、ビーガン・ベジタリアン志向の高まりにより成長率が上昇することも予想されます。肥料の詳細については、こちら(英語記事)をクリックしてください。
銅
銅は住宅建設に必要なだけでなく、グリーン・トランスフォーメーションにも欠かせない金属です(電気自動車に使われるため)。 銅は「スリーピング・ビューティ」のコモディティだと我々は考えています。2022年には、需給逼迫の中、中国での規制緩和や世界的な需要の回復に伴い、高値を付ける可能性が高いと考えます。
平均的な電気自動車は以下のような材料を必要とします。
これは多量の工業用金属です。BHPは、これらの主要な要素の多くから収益を上げている企業の一例です。
注目銘柄:BHP
世界最大の鉱山企業であるBHPも無視できません。多角経営企業のBHPは、収益源の58.1%を鉄鉱石が占めています。中国が鉄鉱石の購入を増やすという期待(中国は、GPD目標の5.5%を達成できるようにインフラプロジェクトを推進するため)から、鉄鉱石は安値からの長期的な強気の回復が続いています。BHPの収益源の26.5%は銅が占めています。中国のロックダウン終了を前に、銅は上昇局面に入ると我々は考えています(テクニカル指標もこれを裏付けている)。また、BHPの収益源の8.7%は石炭、6.7%は石油(ともに上昇傾向)ですが、これらの事業は売却予定であるため、BHPはより環境に優しい企業になることに注力することができます。BHPの石炭・石油資産の売却による資金は、株式買い戻しを通じて株主に還元される可能性が高く、これも株価の上昇の支えとなります。さらに、BHPは、電気自動車に欠かせないニッケル、アルミニウム、マンガンといった工業用金属からも収益をあげています(ただし、BHPはこれらの金属の収益内訳は示していない)。
金
金価格は年初来で約4%上昇しており、米国の幅広い株式(S&P500)の下落を相殺しています。金は、株価の下落を相殺するために、ポートフォリオに加えるのに適しています。利回りの上昇に伴い、金価格はさらに上昇する見込みです。過去のデータを見ると、FRBが金利を引き上げた時(利上げサイクル中)は必ず、金のパフォーマンスが株式を上回ってきたことが分かります。 当社のコモディティ戦略責任者が指摘したように、昨年12月から、金価格は石油価格の上昇を反映して推移してきました。この上昇の度合いを見ると、経済システム内のリスクレベルが分かります。最近発表した当社の「Quarterly Outlook(四半期見通し)」では、今年中に金価格が上昇し、高値を更新すると予想される理由についても取り上げています。
注目銘柄: Barrick Gold (バリック・ゴールド:GOLD)
Barrick Goldは国際的な金生産企業であり、米国、カナダ、南米、オーストラリア、アフリカでプロジェクトを行っています。同社はアナリストに最も人気のある銘柄の一つと言えますが、個人投資家には金銘柄としてあまり知られていません。多くの金生産企業株は下落していますが、Barrickは大半の銘柄と比べて好調に推移しています。
原油
ロシアの混乱が続いていることに加え、中国では新型コロナウィルスの規制が緩和されていないことから、原油価格は今後さらに上昇し、今年中に史上最高値を付ける可能性もあると予想されます。世界的な移動や旅行が再開されれば、世界の原油価格は上昇するはずです。
注目銘柄: Halliburton(ハリバートン:HAL)
Halliburton(HAL)は今年の米国株式市場で最も好調に推移している銘柄の一つであり、600%上昇しています。市場予想は今後一年間はHALに対して強気の見方をとっています。Halliburtonは、エネルギーサービス企業(エネルギーセクターのエンジニアリング、建設、製品の製造・販売)の最大手です。 同社の収益源は、大半をアメリカ(41.7%)が占めており、中東が25%、欧州・アフリカが17.8%、中南米が15.4%となっています。Halliburtonは、ロシアによるウクライナ攻撃を受けて、ロシアでの全ての業務を停止した最初の大手油田サービス企業でもありました。そのため、同社は2,200万ドルの償却費を計上しました。とはいえ、このことは同社の見通しに影響を及ぼしていません。同社のフラッキング船は全て予約済み(完売)となっており、掘削需要は急増する見込みです。Halliburtonは、石油掘削予算が35%増加すると予想しています。これは、石油会社が深海井などの従来のプロジェクトよりも高リスク、高コストで、より時間がかかる深い領域で、多量の石油を探そうとする傾向があるためです。