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チーフ・インベストメント・ストラテジスト
サマリー: 先週金曜に公表された3月米の非農業部門雇用者数(NFP)は、FRBのインフレとの闘いが終わっていないとのメッセージを市場に送る内容となりました。FF金利先物市場ではFRBが5月に25bpsの追加利上げを行う確率が高まっています。株式市場はハイテク主導の上昇によって高値で先週の取引を終えましたが、欧米の市場がイースター休暇で商いが薄いなか週明けの先物市場は強弱入り混じった動きとなっています。原油価格はOPECの削減を受けて先週から強含んでいるものの、金は利回りが上昇する中で再び2000ドル台まで切り下がっています。今週は、FOMCの議事録、米銀の第1四半期決算、および3月米消費者物価指数(CPI)が鍵となります。また、中国の台湾周辺での軍事訓練など、地政学的動向も注目されます。
先週の米国株式市場(US500.I / USNAS100.I)は、週初に景気先行き懸念の強まりから下落した後、上昇して取引を終えました。聖金曜日の祝日を控えた木曜日、S&P500は前日比0.36%上昇し、NASDAQ100も同0.74%上昇しました。Googleの親会社であるAlphabetやMicrosoftなどの大手ハイテク企業の上昇が市場を牽引しました。また、米国の労働市場に減速の兆しが一部見られたこともFRBが5月会合で利上げを一時停止するとの見通しを後押しし、投資家の間で安心感が広がりました。しかし、金曜に公表された非農業部門雇用者数(NFP)の内容は依然堅調で、市場が織り込む5月の25bps利上げ確率は、再び70%近くに上昇しました。
先週金曜の中国株式市場(HK50.I / 02846:xhkg)は上昇して取引を終え、CSI300指数は前日比0.65%高となりました。香港市場は金曜日は休場でしたが、3月の中国Caixin(財新)サービス購買担当者景気指数(PMI)2月の55から57.8に上昇し、景気回復のモメンタムが加速していることを示したため、前日木曜日は0.3%高で取引を終えました。
主にヘルスケア、通信、金融関連銘柄がCSI300指数の上昇を牽引し、エネルギーと生活必需品関連の銘柄のパフォーマンスは振るいませんでした。中国の不動産関連銘柄も、同セクターの回復期待が高まるで今週はプラス圏に浮上しました。一方、半導体を巡る米中対立が深まる中で、SMICなどの中国の半導体メーカーが国内投資家の関心を集め、ハイテク株も急騰しました。中国当局が米半導体大手のMicron Technology社に対するサイバーセキュリティ調査を実施すると発表したことも、中国国内の半導体メーカーの株価を下支えしました。今週は、地政学的リスク懸念が意識されるほか、IMFの世界成長率の改訂見通しの動向が注目されます。最も重要なのは、中国の信用データで、当局の政策がどの程度同国の信用状況を支えているかを判断する材料となります。
前週の新規失業保険申請件数が20万件以上増加し、求人数は減少したものの、金曜に公表された米雇用統計(NFP)は、事前予想ほどには減速しませんでした。米国の労働市場の冷え込みはNFPのデータにはそれほど顕著に表れなかったことから、聖金曜日の祝日で商いの薄い中市場で米ドルはわずかに上昇し、日本円は弱含みました。FRBの5月25bps利上げ見通しが加速し、米2年国債利回りが4%に迫る勢いとなったため、ドル/円は132.38の高値まで上昇しました。今月開催される植田日銀新総裁にとって初回の金融政策決定会合が、円相場の重要な鍵となります。ポンド/ドルも1.25から反転しましたが、1.24でまだサポートされており、ユーロ/ドルは1.09でサポートされています。
原油市場は、景気後退懸念が高まる中において、先週発表された予想外のOPECの減産を引き続き織り込んでいます。今週公表される米経済指標はインフレ対リセッションのシナリオやFRBの政策転換に対する見通しが現実的なものとなるか否かを判断する上でもエネルギー関連の市場にとって重要な材料となります。OPECならびにIEAは今週、月次レポートを発表する予定であり、原油の需給見通しの追加の判断材料として注目されます。今回のOPECの決定は、原油市場での空売りを規制する一環として行われたことから、今後、原油価格が市場ファンダメンタルズをより正確に反映することが期待されます。WTI原油がアジア取引時間帯の早い段階で81ドルを上回った後にわずかに下落に転じる一方、ブレントは依然として85ドルを上回って取引されています。
金相場(XAUUSD)は先週、景気後退懸念の高まりによって2030ドルの高値まで急騰しましたが、金曜に公表されたNFPが依然として堅調な内容となったことで、インフレ抑制への取り組みは引き続きFRBの最優先課題であるとのメッセージを市場に発することとなりました。FF金利先物市場が織り込むFRBの5月25bps利上げ確率は再び上昇しており、金を下押ししていますが、月曜日の早朝のアジア市場では2000ドルの大台に近いところまで戻りを試しています。今後の焦点は、今週水曜公表予定の米CPIと、今後の金利見通しの材料となるFOMC議事録です。
主なポイント
イースター休暇の週末に、強弱入り混じった内容の雇用統計が発表されました。先週の新規失業保険申請件数は22.8万件と予想を上回り(事前予想:20万件)、前週分も前回の19.8件から24.6万件に上方修正されました。米労働省による年次改定値で失業保険申請件数が過去数ヶ月間、当初の報告よりも大幅に増加(また増加傾向にある)していたことで、労働市場が当初考えられていたほどタイト化していないことが示されました。一方、3月のチャレンジャー人員削減数は8.97万人増加し、2月の77.8万人ペースから加速しました。なお、今年1月から3月の累計の解雇者数は2020年以来の高水準となりました。
一方、NFPは堅調さを維持しました。非農業部門雇用者数は前月比23.6万人増と予想を上回り、先月分も32.6万人に上方修正されました。しかし、前月比の伸び率は27ヶ月ぶりの低水準となり、民間雇用者数は予想を下回りました。それでも失業率は2月の3.6%から3.5%に低下しました。賃金は、前月比の伸び率が0.2%から0.3%へと上昇する一方、前年比では前回の4.6%から4.2%へ低下し、引き続き鈍化傾向を示しています。
中国は、台湾の蔡英文総統が訪米から帰国した後、台湾周辺で2日目の軍事演習を行い、航空機や船舶を使って複数の訓練を行いました。中国の一連の行動は、昨年8月にペロシ米下院議長が台湾を訪問した後に繰り返されたものと同様のものとみられます。北京はまた、象徴的なジェスチャーとして、台湾の駐米特使に対する制裁を一部強化し、今後も追加的な措置の発動が警戒されています。一方、中国は米Micron Technology社に対するサイバーセキュリティ調査を開始し、半導体戦争に向けて一歩前進しています。
テスラは、数日前に2023年第1四半期の納車台数を発表して市場の失望を誘った後、より多くの需要を取り込むための取り組みの一環として、再び米国で販売価格を引き下げました。一方、炭酸リチウムの価格は最安値を更新するなど引き続き下落しており、テスラが利益率への影響を最小限に抑えながら価格を引き下げる余地が生じている可能性があります。報道では、Model SとModel Xの価格を5,000ドル下げて84,990ドルと94,990ドルに、Model 3とModel Yの価格をそれぞれ1,000ドルおよび2,000ドル下げて、ベース価格を41,990ドルと49,990ドルに引き下げたことが示唆されました。テスラは今月19日に第1四半期決算を公表する予定ですが、納車台数と利益率の動向が鍵となります。
国際通貨基金(IMF)は、世界経済成長が低迷期に入り、今年の成長率は3%を下回り、今後5年間は3%前後にとどまる見通しであると警告しました。IMFによると、昨年は新型コロナ感染拡大やロシアとウクライナの戦争の影響によって世界経済成長率が急激に鈍化し、この状況は2023年のみならず今後5年間は続く可能性があると指摘しています。IMF専務理事のクリスタリナ・ゲオルギエバ氏は、富裕国に低所得国に対する追加的な支援の提供を呼びかけました。
Levi Strauss(NYSE: LEVI)は、第1四半期決算を発表しました。売上高は予想を上回ったものの、輸送コストの上昇や、昨年積み上がった余剰在庫の処分に向けたプロモーション活動が増加したことで利益率は計画未達となりました。同社は、通期の売上高およびEPSのガイダンスを見直し、純売上高は63億ドルから64億ドル、調整後利益は1株当たり1.30ドルから1.40ドルとなる見通しです。
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