カバード・コール戦略で追加のリターンを生み出す

カバード・コール戦略で追加のリターンを生み出す

Option
Danny Khoo

Sales Trader

カバードコールとは?
カバードコールは、すでに保有している株式のポジション(原資産)について、その株式のコール・オプションを売却する戦略です。投資家は原資産として株式を保有していますが、カバード・コールがイン・ザ・マネー(原資産の価格が権利行使価格を上回っている状態)で行使された場合、現物株を引き渡すリスクをカバーできます。また同時に、コール・オプションの売り手は、原資産のコール・オプションを売却する時点で追加的な利益(プレミアム)を得ることになります。このように、一定以上の損失を防ぐカバード・コールは、リスクを低減するオプション戦略として考えられています。一般に、機関投資家はある時点で保有する原資産(この場合は株式)の一部に対してコール・オプションを売却し、残りの保有株式についてはアップサイドを追求したり、株価がさらに上昇すると予想される時に、コール・オプションをより高い権利行使価格で売り増す機会を確保できるようにします。

カバードコールの仕組み
カバードコールの売りは、株式を中長期的に保有する投資家の間で人気のある戦略です。通常、コールオプションの売りは、満期日に原資産価格が権利行使価格を上回った場合に投資家は無制限に損失を被ることになるため、リスクの高い取引となります。しかし、投資家が原資産となる株式をすでに保有していれば、オプションの満期日またはオプションの行使時   に株式をオプションの買い手に引き渡すだけで、損失を限定することができます。

カバード・コールオプションの損益イメージ
1. 満期日に株価が権利行使価格を上回っている場合、オプションはイン・ザ・マネー、つまりオプションの売り手は、オプションの買い手に株式を引き渡す義務があります。ポートフォリオに株式を保有している場合、イン・ザ・マネーで権利行使されたオプションに相殺されることになります。オプションの売り手は、プレミアムが手元に残り、オプションの買い手はオプションの行使価格で株式を手に入れることができます。投資家の中には、カバード・コールについてプレミアムと引き換えに、株式の値上がり益に上限を設けることに事前に合意する取引であると考える人もいるようです。

2. 
満期日に株価が権利行使価格を下回っている場合、オプションはアウト・オブ・ザ・マネーとなり、オプションの売り手がオプションの買い手に株式を引き渡す義務は発生しません。この場合、オプションは買い手にとって無価値なまま失効しますが、売り手はプレミアム収入を確保できます。

実例:

例えば、1株30ドルのA株を1000株保有しており、直近の価格は35ドルだとします。

もしA株が40ドルに上昇すれば売却してもよいと考えるのであれば、1ヶ月後に満期日が到来するコールオプションを権利行使価格40ドルで10枚売り建てます(米国株の場合、コールオプションの1枚は原資産となる株式100株を表します)。ここでは、約0.70ドルで取引されていると仮定しましょう。その結果、売り手はコール・オプション10枚分のプレミアム×100株×0.70ドル=700ドルを受け取ることができます。


シナリオ分析:

Goes above $40
You sell your 1000 shares of stock A at $40, making a profit of $10 per share. Total gain = your premium received ($700) + your profit ($10 x 1000 = $10,000) 
 Does not go to $40Total gain = your premium received ($700) from selling 10 call options at $40 strike. There is no obligation to sell your shares to call option buyer.

A株が40ドルを上回った場合

A株1000株を権利価格40ドルで売却し、1株あたり10ドルの利益を得ます。損益 = プレミアム収入(700ドル)+値上がり益(10ドル×1000=10,000ドル)

A株が40ドルを上回らなかった場合   

損益 = 権利行使価格40ドルで売却したコールオプション10枚から得たプレミアム収入(700ドル)です。コールオプションの買い手はコールオプションを行使しませんので、株式を売却する必要はありません。   

カバードコール戦略に最適なタイミングとは?

カバードコール戦略を始めるのに最適なタイミングは、原資産となる株式の市場が横ばいまたは下降トレンドの市場、つまり原資産の水準が短期的に大きく変動しないと予想される時に、株式のロングポジションを維持しながら、オプションプレミアムを獲得することによって追加的なリターンを生み出すことができる時です。市場が強い上昇トレンドにある時は、カバードコールを売却して、それほど高くないプレミアムと引き換えに原資産のアップサイド余地をあきらめることは、最適な選択肢ではないかもしれません。それでもカバード取引をしたいと考える場合は、コールオプション10枚を一度に売却するのではなく、複数のトランシェに分けて売却していく方が理にかなっているかもしれません。例えばコールオプション2枚を5回の取引に分けて順に売却していきます。ここで検討すべきもう一つ重要な点は、オプションのインプライド・ボラティリティです。インプライド・ボラティリティが高ければ高いほど、オプションのプレミアムは高くなります。

カバードコールの主なメリット

1. 追加的な利益(パッシブ・インカム)を生み出します。カバードコールを売却することによってオプションプレミアムを獲得し、ポートフォリオのトータルリターンを向上することが可能です。

2. 
比較的リスクが抑えられている点です。コールオプションを売るリスクは、株式のロングポジションでカバーされるため、比較的リスクの低いオプション取引の方法であるといえます。

3. 
カバードコールを売却する際は、追加の証拠金は必要ありません。お客様は受渡しされる原資産(株式)を保有しているため、サクソバンクで同数のカバードコールを売却する際は、追加の証拠金は発生しません。

カバードコール戦略に関するリスク
1.  原資産(株式など)の価格上昇によるリターンに上限を設けること。主なリスクの一つは、原資産の価格がコール・オプションの行使価格を上回った場合に潜在的な値上がり益を放棄するという機会損失が生じる可能性があることです。 

2. 
利益確定売りの代わりにカバードコールを売るリスク:前述した例では、オプションの有効期間中、株価が40を大きく上回ったものの、満期日に再び35を割り込む可能性があります。この場合、株主はオプションがなければ40で利益確定していたかもしれませんが、カバードオプションを売却していたために、満期が到来するまで待つことになるかもしれません

オプションの満期日におけるシナリオ分析:

Selling against the full holdings of 1000 shares
Selling against half the holdings of 500 shares

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