2022年第4四半期見通し:冬の到来

2022年第4四半期見通し:冬の到来

スティーン・ヤコブセン
最高投資責任者(CIO, Saxo Bank A/S)

サマリー:  マクロ政治・経済情勢は、金融市場に凍てつくような厳しい状況をもたらしました。この冬をいかにして乗り切ることが出来るでしょうか。

エグゼクティブ・サマリー 

2022年第4四半期の見通しは、文字通りの意味でも比喩的な意味でも、冬が到来するという現実を認識したものです。まず文字通りの意味で、欧州と英国では特に冬の到来の影響を受けることになります。それと同時に、暖房シーズンに電力・ガス需要が増加し、価格が大幅に下落したとしても、エネルギー不足のピークを迎えることから経済面でも冬が到来するとみられます。当社のマクロ分析責任者であるクリストフ・ダンビは、欧州の見通しが極めて悲観的な中、完全に希望の火を消すことなくエネルギー危機の大きな逆風を乗り切る方法について述べています。これには、効率性の向上による需要の削減、原子力への長期的な投資、グリーントランスフォーメーションに必要なインフラの整備が含まれます。 

中国については、当社のマーケット・ストラテジストであるレドモンド・ウォンが、中国では再生可能エネルギーに対する関心が低下していると指摘しています。同国では過去数四半期における原油価格およびLNG価格の高騰を受け、中国は石炭供給の確保に動き、石炭火力ベースロード電源の効率的な利用や、原子力発電の増強に主要国の中でも最も積極的に重点を置くようになっています。他のアジア市場について、マーケット・ストラテジストのチャル・チャナナは、LNG価格の高騰がアジア太平洋地域のエネルギー安全保障に変化をもたらし、経済力の弱い国々に不利に働くと指摘しています。2011年の福島原発事故を経験した日本が原発再稼働に向けて動いていることや、インドがルーブルでロシア産原油を購入したようにエネルギーが米ドル以外の通貨で取引されるようになるという興味深い見通しなど、さまざまな変化が生じるでしょう。オーストラリアのマーケット・ストラテジスト、ジェシカ・アミールは、同国で原子力への関心が再び高まっている要因と、原子力への投資に関わる難解な領域で、どのような企業やETFに注目したらよいかを解説します。 

次に、2021年11月のFRBの大幅な政策転換以来、資産評価の主な基準となっている金融政策の推移について説明します。次の四半期と冬の前半には、サクソの最高投資責任者のスティーン・ヤコブセンが指摘するように「引き締めのピーク」に達すると思われます。市場は、第3四半期に引き締め圧力が弱まる方向への政策転換を期待したために大きな間違いを犯しましたが、その後、来年初めまで政策金利が上昇する可能性があることをようやく認識しました。今回の政策引き締めは最終的に景気後退につながります。欧州はすでに景気後退に向かっていますが、来年には他の地域にも広がり、最終的には、市場の予想よりも経済が堅調であることが一部のデータに示されている米国も、景気後退に陥るでしょう。  

株式については、株式戦略責任者であるピーター・ガンリューが、生活必需品と一般消費財への圧力に見られるように、来るべき冬が景気後退リスクを引き起こすことは必至であること、また欧州には異常な圧力がかかっていますが、それが結果的に必要な改革を促し、欧州経済がはるかに高い競争力をもつに至るであろうことについて述べています。一方、成長率と株式バリュエーションにとって最大のリスクは脱グローバル化の代償であり、過去12年間に企業がサプライチェーンを大幅に調整してきたことから、多くの株式でトレンドの転換が生じるでしょう。 

コモディティ戦略責任者のオール・ハンセンは、ロシアがウクライナに侵攻して以来の、6か月以上に及ぶ金融市場の激しい変動に比べると、コモディティではそれほど大きな変化はなく、継続する需給両面に関する懸念が中心となっているとみています。第4四半期で興味深いのは、バイデン米政権による戦略石油備蓄の放出が10月末に期限を迎えた場合、その影響を原油市場がどう吸収するかです。  

為替の予想では、FX戦略責任者であるジョン・ハーディが、FRBの利上げサイクルの予想推移における引き締めのピークアウトに伴い、米ドル高もピークアウトする可能性があるかを議論しています。米ドル高の進行は過去11カ月間、世界の流動性と資産価格に厳しい圧力を加えてきました。  その他の為替市場では、日銀がイールドカーブ・コントロール政策を維持してきましたが、市場の圧力により、円相場がこの四半期に大きな変化を見せることになるのかが注目されます。また人民元(CNHおよびCNY)高に対して円が大きく乖離した状況は3四半期連続しており、第3四半期には人民元は米ドルに対して大幅に下落したにも関わらず、対円では依然として強含みで推移しています。これは重要かつ緊張した状況ですが、依然として解消されていません。 

暗号資産では、待望のイーサリアムプラットフォームのプルーフ・オブ・ワークからプルーフ・オブ・ステークへの移行が実現したにもかかわらず、四半期に相場の復活には至りませんでした。クオンツ・ストラテジストのアンダース・ナイスティーンが指摘する通り、この分野の規制強化の懸念はもちろん、政策引き締めの逆風を受けて世界の流動性が枯渇し、「暗号資産の冬」のリスクは続いています。しかし、暗号資産関連のブロックチェーン技術に新たな用途を見出すなど、業界のイノベーションが加速していることから、明るい材料も多くあります。 

最後に、今回の見通しでは、長期的なテクニカル見通しについても解説しています。米国10年債利回りチャート、米国S&P500指数と弱気相場の最終的な底値、第3四半期に象徴的なパリティ水準に達し、さらに下降した後のユーロ米ドル為替レートなどを再検討しています。  

第4四半期が安全で実りのあるものとなることを願ってやみません。供給サイドの課題が山積する中、また政策当局がインフレ対策を強化する中、資産市場の前途は多難です。しかし同時に、現在の資産価格の悪化は、投資機会や長期的な市場リターンの上昇をもたらす可能性があることもお考えいただく価値があります。 

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