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Chief Investment Strategist
サマリー: 売上高見通しが予想を下回ったという理由で大半の企業がたたき売られる中、どういうわけかAmazon株は投資家から好感されていますが、これは第4四半期決算に対する解釈を誤ったものだと我々は考えています。多くの場合、市場は正しいものですが、今回は市場は成長性を過大評価し、パンデミック中の多額の投資のだぶつき、さらには賃金や物流コストの上昇による事業リスクを過小評価していると思われます。Amazonの成長率は20年ぶりの低水準になる見通しです。このため、米国のテクノロジーセクター全体と比べて依然として大幅に割高な水準にあるAmazonの株価評価は、一気に下落圧力に見舞われる可能性があります。
Amazonの成長性は過大評価されているため、夜間の急騰は後退する見通し
2月3日にMetaの株価が急落した後、Amazonが発表した第4四半期決算でセンチメントは好転し、同社株はプレマーケットで11%上昇しています。株価は好意的な動きとなっていますが、根底にある業績の動向は正しく評価されていないと考えられます。市場は巨大な投票マシンであり、たいていの場合は正しいものですが、今回は市場でのAmazonの評価は誤っている可能性があると我々は考えています。
まずは数字を見ていきます。Amazonの第4四半期のEPSは27.75ドル(予想は3.77ドル)となりました。これは主に、営業外利益の11.8ドルを計上したことによるものであり、その大半はRivianの所有から得た利益です。Rivianの株価は42%下落しているため、この営業外資産の価値は既に大きく低下しています。また、Mercedes-BenzのCEOが最近のコメントで、電気自動車の成長は資源不足により今後ますます抑制されると述べたことから、Rivianは今後数年のうちに期待を裏切ることになると我々は考えています。Amazonの第4四半期の営業利益は35億ドルに落ち込み、予想の24億ドルを上回ったものの、2019年第3四半期以来最も低く、第4四半期としては2017年第4四半期以来最低の水準となっています。これは、コストと投資の加速が収益性の足かせとなっているためです。
Amazonの第4四半期の売上高は1,374億ドル(予想は1,378億ドル)で、AWSの売上高は予想通りでした。しかし、さらに重要なのは、第1四半期の売上高見通しが1,120億~1,170億ドルと、予想の1,205億ドルを下回ったことです。パンデミックの勝者が厳しい逆風に直面している状況に対し、アナリストは楽観的すぎるというパターンがまたしても示されました。第1四半期の営業利益の見通しは30億~60億ドル(予想は61億ドル)で、収益性の軌道が予想を下回っていることを示しています。しかし、この見通しのレンジが広いのは、Amazonがコストと売上高の先行きをほとんど見通せていないということです。Amazonの値動きがおかしいと思われるのは、大半の企業は売上高見通しが予想を下回ったことでたたき売られているからです。もしAmazonが第1四半期の売上高見通しの中間点を達成すれば、売上高の成長率は5.5%ということになり(2022年通年予想の前年比16%増にはほど遠い)、2001年第3四半期以来最も低い伸びとなります。また、前年同期比9.4%という第4四半期の売上高の成長率でも、同社史上最も低い成長率です。しかしそれでも、投資家はAmazonを高く評価しているのです。なぜなのでしょうか?
これには考えられる理由がいくつかあります。1つは、クラウド事業のAWSが今でもマーケットリーダーであり、急成長を遂げていることです。この事業が株価の主な原動力となっていますが、反トラスト法の規制が変わり、Amazonが焦点となれば、同社は2つの事業を分離することを強制される可能性があります。このような強制は予防原則の概念に基づいており、Amazonがクラウド事業のキャッシュフローを小売事業にまわすことを禁じるものです。
市場での高い評価を説明できる2つ目の理由は、設備投資の水準の高さです。Amazonの設備投資は、同社がパンデミック以前からの投資の成長トレンドを続けていたと仮定した場合の水準を96%(下のグラフの2本のライン間の差を対数値から変換)上回っています。Amazonのこれまでの成功と高い資本利益率を生み出す能力を考えると、投資家の中にはこれらの投資が将来の大きな成長につながると考える人もいるかもしれません。しかし、パンデミックは異例の状況であり、物流のボトルネックにより、Amazonは業務のより多くの部分を社内でこなすことを余儀なくされた可能性があります。つまり、設備投資の大部分は、サードパーティーから自社のバランスシートに差し替えるメンテナンス投資にすぎず、そのため、実質的な将来の成長に利用できる実際の金額は、認識されているよりも少ないということです。いずれにしても、パンデミック中に設備投資が262%増加したことは、減価償却を通じて営業利益を圧迫するようになるはずで、Amazonの規模を考えると、これらの投資から以前と同じROICを得られるかどうかについては疑問が残ります。
最後に、Amazonのビジネスモデルはこれまでに、高インフレやサプライチェーンの急速な変化、世界的な物流のボトルネックの中でストレステストを受けたことがありません。金融引き締めに加え、これらの要因により、Amazonの事業の下振れリスクは高まります。
Amazonの株価はまだ直近12ヶ月のEBITDAの27倍程度で推移しており、MSCI World Indexの2倍以上の水準、Nasdaq 100銘柄を34%上回る水準となっています。Amazonの規模だけを見ても、成長に対する平均回帰効果が強まっているため、バリュエーション指標は今後も下がり続け、投資家にとって逆風になると思われます。我々は群衆の知恵には賛成ですが、Amazonの決算に対する株価の動きは間違っている可能性があり、投資家は成長性を過大評価していると考えています。