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サマリー: 米国の第3四半期GDPの上方修正によって、インフレ鈍化と米経済のソフトランディングという楽観的なシナリオが打ち砕かれたことでS&P500は前日比1.5%安、ナスダック100は同2.2%安と、いずれも大きく反落して取引を終えました。本日公表されるいくつかの米経済指標のうち、FRBの金融政策の見通しを左右する最も重要なデータとして11月のPCE価格指数の動向が注目されます。
2022年のマーケット・インサイトは本稿で最後となります。年初は1月3日からの配信となります。来年も皆様にとって良い年になるようお祈り申し上げます。 どうぞ良いお年をお迎えください。
米商務省が22日公表した第3四半期GDPの確報値は前期比3.2%増と、改定値の同2.9%増から上方修正され、これを受けて米国の株式は前日の上昇分を吐き出す格好となりました。また、米労働省が同日に発表した週次の新規失業保険申請件数は事前予想の22万2,000件に対して21万6,000件と、予想を下回る結果となりました。これらの指標が米経済と労働市場の底堅さとFRBが金融引締めのペースを加速する可能性を示唆する内容となったことから、これまでインフレ鈍化と米経済のソフトランディングという楽観的な期待を抱いてきた投資家の失望を招く結果となりました。株式市場にとってポジティブな経済指標が続いた前日から一転して、予想以上に強い経済指標が確認されたことで投資家の警戒感が急速に高まりました。S&P500では前日比2%を超える下落となった一般消費財セクター、情報技術セクター、エネルギーを中心に、全11業種で値下がりしました。銘柄別には、Tesla (TSLA:xnas)は8.9%安と、S&P500とナスダック100の組入銘柄のうちで最も大きく値を下げました。テスラの厳しい現状については当社アナリストのピーター・ガンリューのレポートをご参照ください。また、厳しい需要見通しを示した半導体メモリのMicron (MU:xnas)が大きく売られたほか、Lam Research (LRCX:xnas)は8.7%安、Applied Material (AMAT:xnas) は7.8%安、Nvidia (NVDA:xnas) は7%安、Advanced Micro Devices (AMD:xnas) は5.6%安と、半導体関連で幅広い銘柄が売られました。
米第3四半期GDPの確報値は前期比3.2%増と、改定値の同2.9%増から上方修正されました。なかでも堅調なサービス関連の消費を支えに、個人消費は改定値の1.7%増から2.3%増、7-9月のコア個人消費支出(PCE)価格指数は改定値の4.6%から4.7%とそれぞれ上方修正されました。なお、今日は11月のPCEおよびコアPCE価格指数が公表される予定です。事前予想を超えるGDPの上方修正を受けて、米2年債の利回りは4.27%(-6bps)と前日から上昇しました。一方、それよりも長い年限での反応は限定的となり、10年債は3.68%(+2bps)とほぼ横いで取引を終えました。米4週債と8週債の入札が順調に消化された一方、米5年物TIPS入札の需要はやや控えめとなりました。
中華人民共和国国務院、中国人民銀行、および中国証券監督管理委員会は、個別に議事録や声明を発表し、先週行われた中央経済工作会議で決定された経済成長の促進や、不動産セクターおよびインターネット企業の支援拡大に向けた措置の導入を要請しました。これを受けて、香港ハンセン指数は足元で2.4%高、CSI300指数は0.4%高と、それぞれ上昇しています。なかでもAlibaba (09988:xhkg) は4.1%高、Tencent (00700:xhkg)は4.1%高、Meituan (03690:xhkg)は6.8%高、Bilibili (09626:xhkg)は9.6%高と、巨大ネット企業の銘柄が軒並み上昇しました。中国当局が入国者の隔離機関を3日に短縮するとの観測が取引中に流れたことも、リスクセンチメントを押し上げました。大手小売や飲食関連の銘柄も急騰し、Xiabuxibu (00520:xhkg) は 15.7%高、 Haidilao (06862:xhkg) は7.6%高、Li Ning (02331) は7.4%となり、いずれも大きく買われました。また、教育塾規制の緩和への期待感からし、教育サービス関連の銘柄も続伸しました。
今日は11月の米PCEデフレータ、個人消費支出、耐久財受注統計、新築一戸建て住宅販売戸数、米12月ミシガン大消費者信頼感指数(確報値)など多くの経済指標の公表を控えており、米ドルは薄い商いの中で足踏み状態となっています。ドル/円とユーロ/ドルはそれぞれ132.30、1.0600とほぼ横ばいで推移しました。ポンド/ドルは前日比で0.4%下落して1.2030と小幅に下落し、豪ドル/米ドルは同0.5%下落して0.6670で取引を終えました。
総務省が22日発表した11月の全国消費者物価指数(CPI)はほぼ予想通りの内容となりました。総合指数は前年同期比3.8%の上昇と、10月の同3.7%をわずかに上回ったものの、コンセンサス予想の同3.9%を下回りました。生鮮食品を除く総合指数は前年同期比3.7% (事前予想: 3.7%、10月:3.6%)、生鮮食品およびエネルギーを除く総合指数は同2.8% (事前予想:2.8%, 10月:2.5%)と、いずれも予想と一致した内容となりました。
米国のインフレはやや減速傾向にあるものの、当社は最も重要なポイントは「インフレがどの水準でピークに達するのか」ということよりも、「一体インフレがどこまで低下し、また、それにはどの程度の時間を要するのか」であると考えます。パウエル総裁がブルッキングス研究所での講演と12月FOMCの記者会見での重要な指標として強調したように、FRBがインフレ指標として重視するコアPCEは、引き続き注目すべき指標となるでしょう。ただし、CPIと同様にPCEも急速に鈍化する可能性があります。CPI ではエネルギーと財の価格低下が指数を抑制する主な要因となってきましたが、サービスがより大きなウェイトを占めるCPIではそれらの項目はそれほど大きな影響を及ぼさないと予想されます。11月のPCEのコンセンサス予想は前年同期比4.6%と、前回の同5.0%、コア価格指数は10月の前年同期比6%から同5.5%と、いずれも低下する見通しです。しかし、米国の緩和的な財政状況や中国の経済再開がインフレを伴う可能性を踏まえると、来年に向けてインフレ上昇が継続するリスクは依然高まっていると考えられます。このため、たとえ米PCEの伸びが鈍化したとしても、FRBがタカ派的なスタンスから脱却することは難しいでしょう。先日S&Pグローバルが発表した米12月総合購買担当者景気指数(PMI)が景気減速の兆しを示唆する低調な内容となったこともあり、今後は年明けに控えた12月のISM統計の内容が注目されます。また、1月5日には12月13-14日に開催されたFOMC議事録も公表される予定です。
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