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APACデイリー・ダイジェスト – 2022年7月29日:市場動向および今後考慮すべき事項

株式
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APAC Research

サマリー:  米国株式先物はじり高で推移しています。これは、米国の第2四半期のGDPがマイナスとなったためFRBがさらに積極的な引き締めを行うとの見方がやや後退したことと、取引終了後に大手ハイテク企業のアップルとアマゾンが予想を上回る決算発表を行ったことを背景に、センチメントが高まったことによるものです。米10年債利回りは2.70%を割り込み、円相場を下支えしました。その後さらにドル安が進んだことは商品価格への追い風となりました。商品価格は最近、需要低迷よりも供給懸念に焦点が当たっ ていました。本日は、米国の個人消費支出(PCE)統計、欧州の成長率およびインフレ率が発表され、厳しい冬の到来を予感させるものとなりそうです。


最近の市場動向

ナスダック 100 (USNAS100.I) と S&P 500 (US500.I) は米国のテクニカルリセッション入りにもかかわらず上昇

S&P500は1.2%上昇し、7週間ぶりの高値となる4,072を付け、50日移動平均線をさらに上回りました。FRBが利上げペースを緩めるとの期待から、構成銘柄の80%以上が上昇して引けました。米国GDPは、第1四半期の1.6%減に続き、第2四半期も0.9%減(予想は0.4%以上の増加)となり、米国経済がリセッションに陥ったことが示されました。個人消費は1%増と底堅さを見せましたが、前期の1.8%増 からは減少しています。ジョー・バイデン米大統領は、雇用の伸びが依然堅調であることから、この点を重要視しませんでした。ジャネット・イエレン米財務長官は、米国がテクニカルリセッションに突入しているとはいえ、現在の状況は「経済の弱体化」というものではない と述べました。

景気後退懸念が強まり、米国債利回りが下落

弱いGDPの発表を受け、市場の景気後退懸念がさらに強まり、米国債利回りは、短期債利回りを中心に大きく下落しました。 2年債利回りは12bp低下の2.87%、10年債利回りは10bp低下の2.67%となりました。 6月14日以降、10年債利回りは3.5%から2.67%に低下し、80bpを超える大きな動きをみせました。イールドカーブは、9月の会合で50bp、これから年末にかけて合計93bpの政策金利引き上げを織り込んでいます。

香港のハンセン(HSI.I)と中国のCSI300(000300.I) 

香港と中国本土の取引所では木曜日、主要な指標にほとんど動きがありませんでした。中国人民銀行が主導する救済基金の規模が1兆元まで拡大されるとの報道を受け、午後には不動産開発会社株式が一時的に上昇しました。 鄭州市は住宅ローンの返済拒否事例が最も多い都市の一つで、停滞している開発プロジェクトの再編、買い取り、手頃な価格の住宅への転換などを通じて再開を支援する取り組みを計画していました。中国の銀行の株価は、中国商銀行(03968:xhkg)が-2%と最も下落したほか、大半が小幅安となりました。セコイアのニール・シェンが210万株を売却し、株式保有比率を2.73%から2.69%に減らしたとの報道を受け、食品配達などを手掛ける美団(03690:xhkg)が1%超下落しました。 香港で取引されている中国の教育サービス事業者の株価が軒並み急騰しています。

アマゾンとアップルは時間外に予想を上回る決算を発表

アマゾン (AMZN) は、売上高が予想を上回り、Eコマースの巨人である同社が今四半期について堅調な売上高予想を示したことから13%上昇しました。アップル(AAPL)は、第3四半期決算がウォール街の予想を若干上回り、サプライチェーンの障害や不安定な経済状況がハイテク企業の年間売上高を悪化させるという懸念を緩和したことから、4%上昇しました。

時間外に予想を下回る決算を発表:インテル、ロク、デックス・コム

インテル(INTC)の株価は8%下落しました。コンピューター・プロセッサーの世界最大メーカーである同社では、第2四半期の売上高と利益がアナリストの予想を大きく下回り、また今年度の予想を下方修正しました。ロク (ROKU) は、ビデオストリーミングプラットフォームの第3四半期収益予想がアナリストのコンセンサスを下回ったため、株価が25%急落しました。血糖値測定器メーカーのデックス・コム(DXCM)は、第2四半期の利益と売上高が予想を下回ったため、17%下落しました。

ブルームバーグ商品指数、米ドル下落に支えられつつ、市場がファンダメンタルズに注目し、1か月ぶりの高水準まで急騰

ブルームバーグ商品指数は強気に推移し、6月の安値から11%上昇しました。これは、米ドルの下落に支えられただけでなく、市場が再びファンダメンタルズに注目したためです。原油は経済指標の悪化によりオーバーナイトで下落した一方で、米国の原油在庫が大幅に取り崩され、ドイツとオーストラリアの電力価格が過去最高値まで急騰しました。大豆は米国の暑さと乾燥への懸念から5日続伸し、小麦やトウモロコシも高値圏で推移しました。一方、世界的に不足が深刻化しており、チリの新税制の影響で新規鉱山の建設や採算の維持が困難になっています。そのため、の3か月物は上昇基調が続き、安値から12%上昇しています。鉄鉱石(SCOA)は7週間ぶりに117ドルを上回り(鉄鉱石大手の株価上昇を下支えし)、シカゴ小麦は安値から8%上昇し、ブッシェル当たり8.11ドルを上回りました。

原油価格(OILUKSEP22 & OILUSSEP22)は引き続き下支えされる状況

原油価格は、オーバーナイトで需要懸念が重しとなる展開となった後、アジア時間午前中に再び上昇しました。WTI先物は今週約3%上昇し、1バレル97ドルを超えており、ブレントは107ドルを超えています。米国は第2四半期のGDPがマイナスとなり、テクニカルリセッションに陥りましたが、原油需要が減少する懸念よりも、供給が逼迫する懸念が上回っている状況です。シェルのベン・バン・ブールーデンCEOは、供給が依然逼迫しているため、原油価格に関しては下落よりも、上昇の可能性が高いと警告しています。

銅とアルミニウムが上昇

アルミニウムは、特にロンドン金属取引所における在庫が31年ぶりの低水準に急落しており、供給不足が懸念される中、金属材料の上昇を牽引しています。ニッケルや亜鉛など他の金属の在庫も過去最低に近い水準にあります。 一方、銅はこの5日間で4%以上上昇し、重要なハードルである3.50ドルに到達しました。FOMC後にドル安が進んだことも、金属セクターと商品価格全般を押し上げる要因となっています。

ドル円とユーロ/円に下押し圧力

米ドル円は、第2四半期GDP発表後の米国景気後退懸念により、利回りがさらに低下し、円が上昇したため、重要な135円の水準をオーバーナイトで割り込みました。しかし、東京都区部消費者物価指数が予想を上回ったとしても、日銀が引き締め姿勢に転じることはないと思われます。EUの利回りが低下したことで、ユーロ/円も136.50円まで下落し、133円付近が焦点となる中、欧州の成長率とインフレ率が本日発表される予定です。

考慮すべき点

米第2四半期GDP成長率がマイナスに転じ、個人消費支出統計を控える

米国は2四半期連続でGDPがマイナス成長となり、テクニカルリセッション入りが示唆されました。第2四半期GDPの速報値は前期比の年率換算で0.9%の減少となり、極めて低水準ながらプラス成長というコンセンサス予想を下回る結果となりました。それでも、米国のGDPに最も寄与する個人消費が1%増となり、労働市場が堅調であることから、広範な景気後退は依然として予想しにくい状況です。今週の新規失業保険申請件数は25万6,000件と、前回の26万1,000件をわずかに上回りましたが、4週間平均では依然として懸念水準を大幅に下回っています。FRBが重視するインフレ指標である(コア)個人消費支出(PCE)統計の発表が本日遅くに予定されており、データに基づくFRBの9月の決定を左右する多くの判断材料のひとつとなります。

日本の東京都区部消費者物価指数は予想を上回る

日本の7月の東京都区部消費者物価指数は前年同月比2.5%(予想2.4%、前月2.3%)と予想を上回り、物価上昇圧力が引き続き高まっていることを示唆しました。7月の全国消費者物価指数も上昇する可能性が高いとはいえ、利回りが低下し、世界的な金融引き締めへの日銀の参加圧力は低下しています。日銀は7月、金融政策決定会合議事要旨を発表しましたが、賃金上昇を後押しするために緩和を継続すべきとの考えが示されています。

中国政治局会議、不動産市場の安定性確保を改めて強調

中国共産党政治局会議が木曜日に開催されました。政治局会議の声明では、不動産市場の安定性を確保することが改めて強調されました。 「住宅は居住を目的とするもので、投機を目的とするものではない」という公式見解が強調され、「不動産市場を安定させる」、「各都市の地域事情に合わせて政策手段を十分に活用する」、「地方政府の責任でマンションの引渡しと生活の安定を図る」などの文言が初めて盛り込まれました。 声明ではさらに、金融市場の安定を確保し、地域・地方銀行が直面するリスクに適切に対処する決意を強調しています。また政治部は、当局が改革を完了し、恒久的な規制枠組みの下でインターネットプラットフォーム事業者を規制し、一連の「認可を取得した」投資プロジェクトを展開することに言及しています。 同声明には、今年の成長目標についての言及はありませんでした。

バイデン米大統領と中国の習主席の会談、台湾を巡り議論

木曜日に2時間以上続いた電話会談で、バイデン大統領は習主席に対し「米国の政策は変わっておらず、米国は台湾海峡の現状を変更したり、平和と安定を損なったりする一方的な動きに強く反対する」と述べました。習主席はバイデン大統領に対し「一つの中国の原則」を堅持することが中米関係の基礎であり、「火遊びをすればやけどするだけだ」と言及しました。 両首脳は首脳会談の可能性について議論したとされますが、その計画についてはまだ合意がなされていません。 一方、ナンシー・ペロシ米下院議長はアジア歴訪に出発する予定ですが、歴訪中に台湾を訪問するかどうかは不明です。

中国の製造業PMIは引き続き低調と予想

市場エコノミストは、7月31日(日)に発表される中国の製造業PMIが50.3となり、6月の50.2をわずかに上回るものの、拡大・縮小の基準である50を大きく上回ることはないと予想しています。非製造業PMIは、6月の54.7から53.8に低下すると予想されています。先週発表された新興産業のPMIが予想を下回ったこと、新型コロナウイルス関連の制限措置からの回復、不動産市場の混乱が弱い予測の一因として挙げられています。

成長への懸念が高まる中でもユーロ圏のインフレに低下の兆しなし

ユーロ圏の物価上昇圧力は依然として高く、ドイツが前回の8.1%から8.5%に加速したと報告したことから、本日発表予定の7月の統計でも高い数値が予想されます。一方、ユーロ圏のGDP成長率は、ロシアによるガス供給抑制の脅威が続く中、さらなる景気低迷を示唆する可能性が高い状況です。エネルギー価格の高騰は家計の支出力を抑制しており、ドイツ、イタリア、スペインの家計の実質所得は今年、少なくとも2%減少すると予想されます。それでも、欧州中央銀行が9月に50bpの追加利上げを行う可能性は依然として高く、ソブリン債のスプレッドが拡大し続けているにもかかわらず、調整の余地は急速に小さくなっています。

アップルの決算は期待を裏切らなかった

アップル(AAPL)の決算は、売上高と利益の両方において期待を上回り、サプライチェーンに関する懸念の緩和と中国における幾分の回復を要因に、次四半期についても予想を上回る見通しを示しました。売上高は前年同期比2%増の830億ドルで、コンセンサス予想の825億9000万ドルに近い水準、EPSは1.20ドルでコンセンサス予想1.16ドルを上回りました。アップルは、技術革新と価格決定力という重要なプラス要因により堅調さを維持し、また強固なバランスシートと強力な資金回収モデルは、厳しいマクロ環境下でも長期的な可能性があることを示唆しています。

旅行再開で利益回復のシンガポール航空

シンガポール航空(C6L:xses)の第1四半期決算は、前年同期の4億900万シンガポールドルの赤字から、3億7000万シンガポールドルの黒字となりました。売上高は前年同期比3倍、営業利益は過去2番目の高水準でした。原油価格の高騰や新型コロナウイルス対策などの逆風にもかかわらず、年末年始の旅行需要増に支えられ、先行きは明るいとみられています。


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