今週はFRBの利上げ決定、重要なインフレ指標、S&P500構成銘柄の3割の企業決算、金のサポート確認など、市場の行方を左右するイベントが続く

今週はFRBの利上げ決定、重要なインフレ指標、S&P500構成銘柄の3割の企業決算、金のサポート確認など、市場の行方を左右するイベントが続く

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APAC Research

サマリー:  アジア太平洋地域の株式は、FRBの利上げ予想と多数の企業決算を前に慎重に取引されています。一方、トレーダーと投資家は金のサポートラインが確認され安堵しています。本稿では、米ドルが対円で上昇し、さらに上昇する可能性がある理由を説明します。マイクロソフト(MSFT)、アルファベット(GOOGL)と、メガキャップ(時価総額が極めて大きい)・テクノロジー企業の決算が火曜日(26日)に発表されるのを皮切りに、相場の行方が左右されるイベントが続きます。S&P500とナスダックは、決算が予想より低調だった場合、軟化する可能性があります。消費の減速と米ドル高圧力という重要なテーマが、引き続き全面に出てくるでしょう。そして鉄鉱石は今が底値なのか否かについても考察します。


最近の市場動向

FRBの利上げ予想と多数の決算発表を前に、アジア太平洋地域の株式は慎重に推移

日経平均(NI225.I)は、FRBの動きや景気後退に対する懸念のなか、約0.9%下落し、アジア太平洋地域のなかでも週初から損失となっています。7月の東京都区部消費者物価指数は今週末に予定されており、インフレ圧力が日銀の目標を上回っていることが再確認されそうです。一方、シンガポールのSTI (ES3)は、6月のインフレ統計を前に約0.7%の上昇となりました。食品と燃料価格の上昇を背景に、シンガポールのインフレ率は過去最高の約6%に上昇し、地域内の出入国再開に伴う需要も加速していると予想されます。一方、オーストラリアのASX200 (ASXSP200.1)は、オーストラリア企業の四半期決算がまちまちであったため、横ばいで推移しています。ASXの足を最も引っ張っているのは、WTI原油価格が需要軟化懸念から2%近く下落し1バレル94ドルとなったことを受け、本日、1%下落したエネルギーセクターです。一方、鉱業会社は相場を維持しており、鉄鉱石価格が2日続伸、本日も2.2上昇し、現在、106.15ドルと約3週間ぶりの高値で取引されていることから、BHPリオなどの大手鉱山会社がそれぞれ1.4%、08%上昇して取引されています。

中国株は業績下方修正と、目先の追加刺激策の見通しが薄れ、下落

今朝の香港と中国本土の株式市場は小幅な値動きとなりました。ここ数週間、建設が停滞している不動産の購入者による不動産ローン返済拒否により、中国の不動産に対するセンチメントや需要の悪化、開発業者や銀行の収益への打撃の可能性が懸念されています。先週、李首相が「中国は今年、過度に高い成長目標のために、通貨を過剰に発行したり、将来のための資金を引き出したりといった大型の景気刺激策をとることはない」と発言したことで、追加刺激策音見通しはさらに暗くなりました。エコノミストは、今年の中国のGDP予測を下方修正し、アナリストは中国企業の収益予想を引き下げています。なかでも、ゴールドマン・サックスは、MSCI中国の2022年のEPS成長率予想を4%から0%に引き下げ、一般のコンセンサスである8%を大幅に下回る予想を発表しました。

ドル円相場は今週のFRBの動きをにらんだ展開

金曜日(22日)に発表された米総合購買担当者景気指数(PMI)の低下を受けて、国債価格が上昇し、ドル円は2週間ぶりの安値となる135.57円まで下落しました。今週はFRBが75bpの利上げに踏み切ると予想されるため、米国債の利回りが注目されます。ここから利上げペースが鈍化するとの見方もありますが、インフレ懸念からFRBはタカ派姿勢を貫く可能性があります。これは、ドルが上昇し、再び上昇基調となる可能性があることを意味します。

米ドルの上昇継続に伴う原油価格の低下

原油価格は先週金曜日、世界的な需要見通しが弱まったこと、リビア原油の一部生産が再開されたこと、またロシアの欧州向けガスの供給再開を受け、下落しました。アジア時間の朝には、WTI先物が1バレル95ドルを割り込み、ブレント先物も104ドルを下回るなど、さらなる弱含みがみられました。今週はFOMCが予定されており、FRBは引き続きインフレ抑制のために積極的な利上げを誘導するとの予想から、米ドル上昇の余地が大きく、需要破壊の懸念がさらに強まることが示唆されています。

考慮すべき点

米国のPMIは縮小域へ

7月の米PMI速報値は、製造業が52.3(予想52.0、事前52.7)と予想を上回ったものの、サービス業が47.0(事前52.7)と予想の52.6を大きく下回り、パンデミック後のリバウンド効果が薄れ、2020年5月以来の縮小域に入るなど、大きく期待を裏切る結果となりました。総合では52.3から47.5への低下と、26カ月ぶりの縮小となりました。先週のフィラデルフィア連銀景況指数や、新規失業保険申請件数の弱さとともに、景気の弱さが第3四半期に向けてさらに加速することが示唆されています。

欧州のPMIは景気後退を示唆

ユーロ圏の経済は、7月の企業活動の低下から、第3四半期は縮小の見通しとなっています。製造業PMIは前回の52.1から49.6へと25か月ぶりの低水準に落ち込み、生産者は販売減少により在庫水準が上昇したと報告しました。サービス業PMIも6月の53.0から7月は50.6と大幅に低下し、総合PMIも49.4まで落ち込みました。エネルギー危機が経済を圧迫しているため、企業の期待値も過去最低に落ち込んでいる。ECBが先週、50bpの利上げを行い、9月にも利上げが予想されていることも、景気の先行きに重くのしかかっています。

サル痘拡大に関する懸念

世界保健機関(WHO)は、サル痘の発生を、国際的に懸念される公衆衛生上の懸念事態と宣言しました。この病気への対応が不十分であることが重要な懸念であり、国際的な懸念は、世界的な協力の強化の道を開くものです。米国も緊急事態を宣言する可能性がありますが、検査とワクチン接種の組み合わせにより、この病気を封じ込めることは可能とホワイトハウス当局者は述べました。現在、米国では44州で2,800人以上のサル痘患者が報告されており、世界では74か国で16,500人以上の患者が報告されています。

政治的な重要イベントが控えており、事態が落ち着く前に中国の新たな景気対策が実施されることは考えにくい

今週は中国共産党中央政治局会議の開催が予定されています。市場では、この会議での発言や資料から、下半期の中国経済政策のヒントやシグナルが得られるかどうかが注目されるでしょう。習主席ら中国共産党幹部は政治局会議終了後、北京の東300キロにある海辺の避暑地・北戴河に向かい、今年10月末から11月上旬に開催される中国共産党全国大会に向けて、引退した党幹部と合流して党指導部の配置などについて協議するとみられています。このような重要な政治イベントの前に、大きな政策が発表されることは考えにくいと思われます。

巨大テクノロジー企業の決算がマイクロソフトとアルファベットから開始、市場の行方を左右

今週は、Week ahead (Saxo Spotlight)でお伝えしたように、決算シーズンで最も忙しい週となります。マイクロソフト(MSFT)アルファベット(GOOGL)のメガキャップ・テック決算が火曜日に発表され、PC需要の低迷、支出の鈍化、米ドル高による圧力が予想されますが、アルファベットの事業であるYouTubeはツイッターやスナップなど他のソーシャルメディアプラットフォームより良い結果が期待されます。メタ(META)は水曜日に発表予定です。木曜日にはアップル(AAPL)アマゾン(AMZN)が続き、雇用の減速とコスト上昇圧力が重要なテーマとなります。

検討すべき取引・投資アイデア

今週の米利回りと米ドルの動きが注目

金曜日のPMIが期待を下回り、景気後退懸念が高まったことで下落した後、FRBの政策に対する米国債利回りの反応が今週の注目点です。パウエル議長が予想以上にタカ派的で、それがインフレ抑制のために必要であれば、利回りと米ドルが再び上昇し、リスク資産や商品相場の重荷となる可能性があります。また、さらに経済成長が弱いことを示すシグナルが見られた場合も、逆イールドの進行を示唆する可能性があります。

米ドルの上昇一服により金はレンジ内での動きを維持

今日のアジア太平洋時間の取引では、ここ数週間の金価格の下落にもかかわらず、金銘柄と原資産である貴金属に買いが入っていることが確認されています。欧州の金利が11年ぶりに上昇し、米ドル高が一服したことが、金のサポートとなっているのではないかと考えられます。つまり、年末が近づくにつれて、貴金属は現在のレベル付近で終了する可能性があるということです。アセットアロケーションにおいて金は安全資産であることから、これは慎重に考慮すべき事項です。

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