口座開設は無料。オンラインで簡単にお申し込みいただけます。
最短3分で入力完了!
サマリー: 0.5%の利上げを決定したFRBに続き、ECBとイングランド銀行が利上げに踏み切ったことを受け、世界の株式市場は急落しました。さらに、ECBは高止まりするインフレを抑制するために量的引き締め(QT)の前倒しと追加利上げを継続的に行う構えを示し、市場の動揺を誘いました。また、経済指標が悪化する中で米国の労働市場は底堅さを保っていることが確認されたこともあり、リスク回避の動きが広まるなかで再び米ドルが買われる展開となりました。上場企業の会計監督機関であるPCAOB(米公開会社会計監視委員会)は、米国の株式市場に上場する中国企業8社の監査業務の検査を無事完了し、中国企業のADRの上場廃止リスクを一旦払拭しました。
ナスダック100指数(NAS100.I)とS&P 500指数(US500.I)は、前日比3.2%安、2.5%安とそれぞれ下落して取引を終えました。前日にFRBがターミナルレートの予想水準を引き上げ、引締めスタンスを継続した直後にECBが利上げとタカ派姿勢を示したことが、市場の重しとなりました。株式市場は幅広い業種で売りが先行し、S&P 500の主要11業種すべてが下落しましたが、なかでも通信サービス、情報技術、および資本財セクターの売りが目立ち、Alphabet (GOOGL:xnas)は4.4%安となりました。また、Netflix (NFLX:xnas)は同社が保証した視聴率を下回ったことで広告主に返金を行っているとのメディア報道を受けて8.6%安と急落しました。一方、大手住宅建設のLennar (LEN:xnys)は新築住宅のキャンセル率は10月にピークアウトを迎え、11月に大きく改善したとのコメントを公表したことで3%高となり、S&P 500で最も強いパフォーマンスを見せた銘柄のひとつとなりました。また、好調な決算を発表したAdobe (ADBE:xnas)も、時間外取引で4.7%上昇しました。
FRBの金利見通しがよりタカ派に傾いた後に発表されたラガルド総裁のタカ派コメントとQT早期開始の決定に加えて、米11月小売売上高が弱い内容となったことを受けて、米国債のイールドカーブはフラット化しました。2年債の利回りは3bps上昇の4.24%、10年国債は3bps低下の3.45%となり、2年債と10年債の格差は-79bpsと逆イールドがさらに進行しました。また、ラガルド総裁がEU諸国に対して「金利はより大幅に、そしてより速いペースで引き上げる必要がある」と表明した後、ドイツの2年債利回りは一時30bps近く上昇し、終値は24bps高の2.36%と14年ぶりの水準を付けました。その他の動きとしては、米財務省が来週、120億米ドルの20年物入札と190億米ドルの5年物TIPS入札を実施すると発表しました。これを受け、シカゴ商品取引所では、5年物の売りと超10年物に買いが入り、カーブをフラット化する大口取引が見られました。短期金利のカーブでは、2023年末時点で4.9%を付けており、FRBのターミナルレート予想である5.1%を大幅に下回っています。
米FRBが前日夜間にFF金利の目標値を引き上げたことを受けて香港は大幅安で取引を開始し、終日横ばいで推移した後、1.6%安で取引を終えました。プライムレートを25bps引き上げて5.625%としたHSBC(00005:xhkg)は1.8%安、同じくプライムレートを25bps引き上げ
5.875%としたスタンダードチャータード(02888:xhkg)は1.4%安となりました。その他にも香港の大手銀が相次いでプライムレートを25bps引き上げています。Shenzhou (02313:xhkg)、 Wuxi (02269:xhkg)、Baidu (09888:xhkg)、およびAlibaba (09988:xhkg)は、いずれも4%を上回る下落となり、これらの株式指数で最も売られる銘柄となりました。中国の鉱工業生産、小売売上高、設備投資はいずれも予想を下回る内容となりましたが、その背景には11月に生じたゼロコロナ政策を巡る深刻な経済の混乱があるとみられます。ただ、12月に入り中国当局がゼロコロナ施策を大幅に緩和したことから、投資家の焦点は11月以降の情勢に移りつつあるようです。一方、中国CSI300指数は小幅な動きにとどまりました。半導体や新エネルギー関連の銘柄が上昇しました。
今週水曜日にFRBのドットプロットがタカ派寄りに傾いたことによる市場の反応は限定的となり、米ドルはその翌日には堅調さを取り戻しました。米国の経済指標が悪化する一方で労働市場は底堅さを保っており、FRBによるさらなる利上げがリセッションを招くことへの懸念が高まっています。短期金融市場の値動きはまだFRBの金利見通しに追いついておらず、ドルの急騰を招いたのはリスクセンチメントの弱さである可能性が高いことを示唆しています。豪ドル米ドルは、G10通貨のうちで最大の下げとなり、中国の弱い経済指標が、昨日公表された豪雇用統計(11月)の強い内容を相殺し、0.6850付近から0.67まで下落しました。GBP/USDも1.22を下回り、ECBのタカ派姿勢が強まる中、EUR/GBPは0.87を超えて上昇しました。米ドル/円は、米国債の利回りが低下したにもかかわらず、再び138円を付けました。
足元のドルの巻き戻しは、金の弱さを裏付けるものとなりました。前日のFRBのコメントで市場はようやく現実を理解したとみられ、他の中央銀行、特にECBのタカ派的な発言は、今後も世界的に金利の上昇がより高く、より長く続くことに対する警報として受け取られました。金は木曜日のアジア市場で1800ドルの大台を割り込み、安値は欧州とNY時間の取引で1780ドル近辺まで下値を切り下げています。銀も急落し、再び23ドル台に向けて反落しています。
今後のポイントは?
イングランド銀行は、利上げサイクルのペースを75bpsから50bpsにやや減速し、基準金利を3.5%にすることを選択しました。今回の利上げの決定では、ハト派2名、タカ派1名の反対意見があり、利上げ当局者のコンセンサスとはなりませんでした。インフレの冷え込みが続く中、市場はイングランド銀行の利上げは2023年上半期に4.25%でピークに達すると予想しています。英金融政策委員会(MPC)は、CPIインフレ率はピークに達したものの、今後数ヶ月は高水準で推移するとの見方を示しています。ノルウェー銀行とスイス国立銀行も50bpsの利上げに動いており、予想通りの結果となりました。
欧州中央銀行(ECB)は、FRBやBOEとほぼ足並みを揃えて75bpsの利上げ軌道から一歩後退し、政策金利を50bps引き上げ、預金ファシリティ金利を2.0%としました。理事会の3分の1が75bpsの利上げを支持したと報じられたほか、ラガルド総裁は投資家に向けて50bpsの利上げを想定し、これを「政策反転のポイント」であると見なすべきではないとの警告を発しました。ラガルド総裁は利上げについて「これだけでは十分ではない。安定したペースでインフレとの戦いを続ける必要がある」とのタカ派的なコメントをしています。また、少額ながらも2023年第1四半期にQTを開始することを発表しました。APPポートフォリオは、第2四半期末までは月平均150億ユーロのペースで縮小し、その後のペースは時間をかけて決定される見通しです。2023年のHICPインフレ率の予想が5.5%から6.3%に引き上げられことも市場のサプライズとなりました。2024年と2025年はそれぞれ3.4%と2.3%となる見通しであり、中期的なインフレ目標を目指すためには一段の引き締めが必要であることを示しています。経済成長率の見通しについては、2022年のGDP予想を3.1%から3.4%に、2023年は0.5%(前回0.9%)にそれぞれ引き上げており、今後のリセッションは浅く、そして短期に収束するものと予想されています。
米国では、複数の経済指標が景気減速の可能性を示唆しています。11月の小売売上高は0.6%減と事前予想の0.1%減を大幅に上回る減少となり、10月の1.3%増を一部相殺する格好となりました。12月のNY連銀製造業景気指数は予想の-1.0に対して-11.2と再びマイナスに落ち込み、前回の+4.5から大幅に低下しました。11月の米鉱工業指数は、製造業生産指数が-0.6%と事前予想の-0.1%と10月の+0.3%(+0.1%から上方修正)のいずれも大きく下回りました。一方、
新規失業保険申請件数は前週の23万1000件から(調整後)に21万1000件に減少し、事前予想の23万件を大きく下回ったことで、米国の労働市場が底堅さを維持していることが確認されました。
PCAOB(米公開会社会計監視委員会)は11日、中国のADR発行企業8社について、「中国本土のKPMG Huazhen LLP と香港のPwCの監査業務を米国および世界におけるPCAOBの検査・調査手法と完全に一致した監査手法で現場監査および調査証言を実施した」と発表しました。PCAOBは、中国当局との協議や中国当局からの情報提供なしに、「投資家と調査員はあらゆる情報を記載した監査書類をすべて閲覧でき、PCAOBは必要に応じて情報を保有することができた」ことに満足しているとの考えを示しています。PCAOBが監査業務を完了したことで、中国ADRの強制的な上場廃止のリスクは一旦払拭されました。なお、PCAOBは2023年初頭から定期的な検査を継続する予定です。
ソフトウェア大手のAdobe(ADBE:xnas)の第4四半期決算は、純利益が前年同期比4.6%増の11億7600万米ドルとなり、アナリスト予想の11億5800万米ドルを上回りました。調整後の1株当たり利益は3.60米ドルと、市場予想の3.50米ドルを上回りました。売上高は前年比10%増の45億2500万米ドルとなり、見通しに沿った水準でした。同社は第1四半期のガイダンスとして売上高で46.0億から46.4億ドル、1株当たり利益は3.65から3.70ドルと、アナリスト予想の売上高42億6000万ドル、1株当たり利益3.64ドルを上回る見通しを示しました。
For our look ahead at markets this week – Read/listen to our Saxo Spotlight.
For a global look at markets – tune into our Podcast.