口座開設は無料。オンラインで簡単にお申し込みいただけます。
最短3分で入力完了!
Chief Investment Strategist
サマリー: 欧州連合(EU)欧州委員会はサイバーセキュリティ上の観点からEUの3 つの主要公的機関においてTikTokの利用を全面的に禁止し、欧州委職員に個人用端末からTikTokアプリを削除するよう要請しました。これに続いて、米国ではTikTokの利用禁止に向けた動きが勢いを増しています。一連の報道を受けて米国のSNS関連銘柄はポジティブに反応し、SNSプラットフォーム大手のSnapの株価は9.5%上昇しました。その背景には、同社のユーザーの年齢層が競合他社と比べて最も若く、TikTokの需要が低迷した場合に利用者数の増加が最も期待できることがあります。
勢いを増すTikTok規制
欧州連合(EU)が人気のTikTokアプリを運営する中国のByteDanceなど一部の外資テック企業の規制を強化する中、米国議会でも同様の動きが急速に広がっていることを受けて、昨日の米国株式市場ではSNS関連銘柄が注目を集めました。TikTok禁止法案を巡っては、中国の情報機関がTikTokを通じて米国ユーザーの個人情報にアクセスする恐れがあるとの懸念が高まっています。先週、欧州委員会は職員に公用端末でTikTokを利用することを禁止しました。また、それに続いてEUの3 つの主要公的機関でTikTokの利用を全面的に禁止し、欧州委職員に個人用端末からTikTokアプリを削除するように強く要請しました。なお、最近は中国当局も国有企業に対して世界4大会計事務所の利用を段階的に停止するように求めるなど、データ漏洩に対する警戒感の高まりは決して一方向の展開に限られているわけではありません。また、こうした一連の動きは、世界最重要テクノロジーを巡る中国と欧米各国との分断が深まりつつあるという事実を浮き彫りにしています。
規制法案の可決を控えてSnapは上昇
米連邦議会は外資系の巨大テック企業の規制法案が成立する見通しが強まる中、米国のSNS関連銘柄の株価は総じて反発し、なかでもSnapは前日比+9.5%と最も大きく上昇しました。その他の銘柄はMeta (-0.2%)、Alphabet (+1.6%)、およびPinterest (+1.1%)と、まちまちの動きとなりました。Snapが最もポジティブに反応した背景には、同社がTikTokのユーザーの大半を占める若年層をターゲットとしており、保護者がTikTokを巡るサイバーセキュリティの問題について警戒感を強めた場合に、多くのユーザーがSnapに乗り換える可能性が見込めることがあります。その他にも、GoogleのYouTubeもTikTok の利用禁止によって恩恵を受ける可能性があります。なお、昨日はSNS関連銘柄の上昇が目立ったものの、Alphabetを除いては、これらの銘柄の過去5年間のパフォーマンスは市場を総じて下回っており、同業界の成長モメンタムや投資家の需要は失われつつあることを裏付けています。
.
SNS関連銘柄のバリュエーションは歴史的な低水準に
パンデミックの余波は、株式のリターンやバリュエーションに多大な影響を及ぼしており、中でもSnapの2年先予想利益ベースのEV/売上高倍率はピーク時の18倍超えの水準から足元で3倍までに低下しており、SNS関連銘柄のうち最も影響を受けた銘柄となっています。多くの投資家がSNS関連銘柄の売上高成長率の鈍化を見込んでおり、株価は割高な水準にあると判断しているようです。TikTok は欧米のSNS業界を取り巻く規制環境に大きな変化をもたらしたことに間違いありませんが、Appleによるデータ・プライバシー保護の強化も個人情報のトラッキングを困難にしており、オンライン広告の価格に影響を及ぼしています。また、エネルギー危機、コモディティ価格の高騰、生産の国内回帰、米CHIPS法、ウクライナ戦争などを背景に、投資家は物質世界の復活によって恩恵を享受する企業やテーマに最も注目しているようです。