中国のリスクプレミアムが上昇。重要な決算発表の週。

中国のリスクプレミアムが上昇。重要な決算発表の週。

株式
Peter Garnry

Chief Investment Strategist

サマリー:  中国株は、週末に行われた同国の指導部交代を受け、投資家が民間部門の長期的な利益成長に対する見方を下方修正する傾向が強まり、本日大幅に下落しました。中国株は米国株に対して歴史的な安値で売られており、中国株に対する株式リスクプレミアムが上昇していることを示しています。多くの米国企業は中国に大きな収益エクスポージャーを有しているため、この株式リスクプレミアムの上昇は米国株式市場にとってもリスクとなります。また、第3四半期決算に注目していますが、今週の決算発表が短期的なセンチメントおよび反応を左右すると見られます。


海外投資家は中国へのエクスポージャーを見直すか?

株式市場には、流動性効果によってすべての銘柄が売られ、崖っぷちに立たされる悪い日があれば、他のほとんどの株式市場が上昇する中で特定の株式市場だけが急落する日もあります。本日(10月24日)は後者が起こりました。週末に行われた中国指導部の交代を受けて、投資家が、疑問点を検討するよりもまず売りを実行したため、本日の取引ではハンセン指数が6%、CSI300(中国本土の指数)が3%下落しました。

週末の中国での出来事は、中国の「共同富裕」政策に象徴されるように、民間部門よりも公的部門の重要性を強調してきた長い道のりの集大成であると言えるでしょう。中国株の値動きは、2009年の世界金融危機以来の水準で取引されているハンセン株価指数を見れば一目瞭然ですが、トータルリターン指数はそれほど悲観的ではなく、直近では2013年に見られた水準にとどまっています。さらに重要なのは、ハンセン総合指数のS&P500に対する株式バリュエーションの乖離幅が非常に低い水準まで下がり(S&P500の60%下)、ハンセン総合指数のバリュエーション倍率が現在、利益のわずか6.8倍となっていることです。

中国株リスクプレミアムの上昇

バリュエーションの差は、政治的リスクプレミアムの上昇と、「共同富裕」に向けた取り組みが長期的に民間企業の収益成長の足を引っ張る可能性の高まりから、中国の収益基盤への信頼が低下していることを反映しています。近年、中国のテクノロジー企業がシリコンバレーの同業他社よりも高い株式バリュエーションで取引されることも多くみられるようになっていましたが、「共同富裕」が採用されて以来、中国のテクノロジー企業の利益と収益の伸びが低下し、投資家に巨額の損失をもたらすなど状況は一変しています。当社では、リスク回避アプローチとして中国株のアンダーウエイトを維持しています。一方、これまでのレポートで述べてきましたように、インド、ベトナム、インドネシアといった国々は、現在のグローバルなサプライチェーン再編で大きな成果を上げているため、アジアのこうした国々へのエクスポージャーを検討しています。

中国株に対する株式リスクプレミアムが高まっていることから、米国株式市場が中国へのエクスポージャーの見直しによって突然揺さぶられる可能性があるのではないかという懸念が当然出てきます。中国のフリーキャッシュフロー1ドルは、米国や欧州のフリーキャッシュフロー1ドルと同じ価値があるのでしょうか。このことは、多くの半導体企業の再評価に反映されていますが(米国のCHIPS法の影響もあります)、アップルやテスラのような消費者銘柄には十分反映されていないようです。収益の約20%を中国から得ているアップルのリスクプロファイルは、中国株リスクプレミアムによる急速な価格修正のリスクにより上昇する可能性があります。テスラも収益の25%を中国で得ており中国へのエクスポージャーが大きいものの、現在のところ株式バリュエーションには反映されていません。以前のレポートで述べましたように、アップル株とテスラ株は市場の広範な株式センチメントにとって重要な意味をもち、この2銘柄の下落リスクによって株式市場が急速に危険にさらされる可能性があります。

中国株と中国へのエクスポージャーが高い企業への投資家の流入

価格動向は中国に関するひとつのシナリオを示していますが、MSCI中国A株に連動するETFにおける投資家のフローは、少し異なる様相を呈しています。中国の資本市場の開放に伴い、発行済み株式数(指標の原資産となっている株式の資本量)は長年にわたって着実に増加しています。このため、EMや世界の株式・債券のベンチマーク指数への組み入れが進んでいます。中国の債券に連動するETFからは大量の資金が流出していますが、少なくともごく最近まで、中国株式では逆の現象が観察されていました。中国の株式価格の下落は、「中国は割安である」というストーリーで投資家の流入を促しました。しかし、安いことには理由があります(上記の株式リスクプレミアムの議論)。ここ数か月、この傾向は変化しています。8月、MSCI中国A株に連動する最大のUCITS ETFでは、発行済み株式数の減少が確認され始めています。金曜日(10月21日)の時点でのドローダウンは-12%でした。これは、投資家の投資意欲が減退していることを示す初期の兆候といえるかもしれません。

世界有数の株式インデックスプロバイダーであるMSCIは、MSCI World with China Exposure Index (USD)と呼ばれるインデックスを作成しました。このインデックスは、中国への収益エクスポージャーが最も大きい51社をカバーしており、中国へのポートフォリオエクスポージャーを分解して把握したいと考える投資家にとって、良い出発点となります。MSCI World with China Exposure Index (USD)の上位10社は以下の通りです。

クアルコム
BHPグループ
テキサス・インスツルメンツ
ブロードコム
リオ・ティント
アプライド・マテリアルズ
ウッドサイド・エナジー・グループ
ラムリサーチ
フォーテスキュー・メタルズ・グループ
マーベル・テクノロジー・グループ

上記のリストに加え、アップルやテスラなどの企業は中国への収益エクスポージャーが大きいため、株式バリュエーションに対するダウンサイドリスクを抱えていると言えるでしょう。

これまでに発表された第3四半期決算は利益縮小を示す

これまでの数字を見ると、好調だった第2四半期の後、主要な株式指数すべてにおいて収益が前四半期比で減少しています。インフレの影響で収益の伸びは堅調に推移していますが、利益率は圧迫されています。特にテクノロジー銘柄の比重が大きいナスダック100指数は、2021年第2四半期から利益率が2.8ポイント低下し、MSCIワールドとのスプレッドが縮小するなど、厳しい利益率の圧縮が見られます。このMSCI ワールドに対する利益率の低下は、金利上昇とインフレに伴い、無形資産からの利益よりも現物資産への回帰が促されているとも解釈できます。

下のリストは、当社がカバーする決算発表企業のうち、今週発表される400以上の決算発表を集約したものです。米国株で市場心理上、最も重要な決算発表は、マイクロソフト、アルファベット、ビザ、UPS、ゼネラル・エレクトリック、メタ、アップル、アマゾン、マスターカード、インテル、キャタピラー、エクソンモービル、シェブロンです。欧州では、DSV、SAP、HSBC、メルセデス・ベンツ、BASF、トタルエナジーズ、EDF、シェル、クレディ・スイス、サノフィ、エアバス、フォルクスワーゲンに注目が集まるでしょう。

本日:日本電産、フィリップス、ケイデンス・デザイン・システムズ

火曜日:ファースト・クァンタム・ミネラルズ、カナディアン・ナショナル・レールウェイ、DSV、UPMキュンメネ、SAP、HSBC、ASMインターナショナル、ノルスク・ハイドロ、ノバルティス、UBS、キューネ・アンド・ナーゲル、マイクロソフト、アルファベット、ビザ、コカ・コーラ、テキサス・インスツルメンツ、UPS、レイセオン・テクノロジーズ、ゼネラル・エレクトリック、3M、ゼネラルモーターズ、バレロ・エナジー、バイオジェン、エンフェーズ・エナジー、ハリバートン、スポティファイ・テクノロジー

水曜日:ダッソー・システムズ、メルセデス・ベンツ・グループ、BASF、ドイツ銀行、中国平安保険(集団)(ピンアン・インシュアランス)、中国広核電力(CGNパワー)、ウニクレディト、キヤノン、バークレイズ、スタンダードチャータード、ハイネケン、アケルBP、イベルドローラ、バンコ・サンタンデール、SEB、メタ・プラットフォームズ、サーモフィッシャーサイエンティフィック、ブリストルマイヤーズスクイブ、オートマチック・データ・プロセシング(ADP)、ボーイング、サービスナウ、フォード・モーター、ツイッター

木曜日:オーストラリア・ニュージーランド銀行、アンハイザー・ブッシュ・インベブ、アルジェ二クス、ショッピファイ、テック・リソーシズ、ネステ、コネ、トタルエナジーズ、フランス電力(EDF)、STマイクロエレクトロニクス、中国石油天然気(ペトロチャイナ)、中国人寿保険(チャイナ・ライフ・インシュアランス)、中国海洋石油(CNOOC)、オリエンタルランド、信越化学、武田薬品工業、HOYA、ファナック、シェル、ロイズ・バンキング・グループ、ユニバーサル・ミュージック・グループ、レプソル、フェロビアル、ヘキサゴン、エボリューション、クレディ・スイス、アップル、アマゾン、マスターカード、メルク・アンド・カンパニー、マクドナルド、リンデ、インテル、ハネウェル、キャタピラー、ギリアド・サイエンシズ、パイオニア・ナチュラル・リソーシズ

金曜日:マッコーリー・グループ、OMV、中国工商銀行、中国招商銀行、隆基緑能科技、美的集団(ミデア・グループ)、インペリアル・オイル、ダンスケ銀行、サノフィ、エアバス、フォルクスワーゲン、中国建設銀行、中国農業銀行、中国銀行、比亜迪(BYD)、中国神華能源(チャイナ・シェンファ・エナジー)、エニ、キーエンス、日立、デンソー、エクイノール、カイシャバンク、ウィルマー・インターナショナル、スイス・リー、エクソンモービル、シェブロン、アッヴィ、ネクステラ・エナジー、コルゲート・パルモリーブ、ロイヤル・カリビアン・クルーズ

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