アーニングス・ウオッチ:米銀の収益、ASML、テスラに注目

アーニングス・ウオッチ:米銀の収益、ASML、テスラに注目

株式
Peter Garnry

Chief Investment Strategist

サマリー:  来週(10月17日の週)の決算発表に向けて、第3四半期決算シーズンが本格化します。JPモルガン・チェースとウェルズ・ファーゴの本日の決算は、両行の純収益とEPSが上振れしたため、時間外取引で株価が上昇し、株式市場のセンチメントを高揚させました。しかし、JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOのコメントや、想定を上回る貸倒引当金の増加は、全般に暗雲が立ち込めていることを示唆しています。また、来週の決算については、半導体需要の低迷に見舞われているASMLと、投入コストへの厳しい圧力と電力価格の高騰による需要の減少の可能性に直面しているテスラに焦点を当てます。


米銀の第3四半期決算は好調な滑り出し

JPモルガン・チェースとウェルズ・ファーゴはともに純収益で上振れし、預貸金利ざやも見通しを上回っていますが、アナリストの予想よりも早く与信が悪化していることを反映してか、予想を上回る貸倒引当金を計上しています。JPモルガンの投資銀行業務は当四半期、懸念されていたよりも好調で、FICC(債券・為替・コモディティ)セールス&トレーディング部門は特に予想に対して好調でした。JPモルガンの第3四半期のEPSは前年同期比17%減の3.13ドルでした。JPモルガンとウェルズ・ファーゴは商業銀行業務から利益を確保しましたが、モルガン・スタンレーは第3四半期の純収益が予想に届かず、厳しい結果となりました。

JPモルガンCEOのジェイミー・ダイモン氏は、規制資本要件の強化の影響はまだ不透明であり(米銀は債券ポートフォリオに多額の含み損を抱え、規制当局の懸念要因となっている)、来年早々に自社株買いを再開出来ることを望んでいると述べています。同氏はまた、米国経済は今のところ好調だが差し迫った逆風に直面しているという、最近のインタビューでの発言を繰り返しています。JPモルガンとウェルズ・ファーゴの株価は、時間外取引で2%上昇しています。
JPMorgan Chase and Wells Fargo share price | Source: Bloomberg
S&P500種構成企業の決算発表はまだ始まったばかりですが、現在発表されている第3四半期のEPSは予想を下回っており、第4四半期の予想は企業にとって予想を上回ることが難しい状況となっています。第3四半期決算を前に何度もお伝えしているように、賃金への圧力は今後数四半期の業績の行方を占う上で重要なカギを握っています。第3四半期の決算では、金融およびエネルギーセクターは減益という逆風にさらされ、テクノロジーセクターは依然として不透明なものとなるでしょう。

来週の注目はASMLとテスラ

半導体業界は、家電製品の減速と暗号資産産業(ビットコインの採掘事業者)がメモリチップとグラフィックカードの価格下落圧力となり、今年一年を通して注目されました。その結果、当社の半導体テーマバスケットは今年40%下落しました。しかし、問題は需要面だけにとどまらず、米国が半導体の技術移転や軍事利用を回避するため、中国への半導体および装置の輸出に対する圧力を強めていることです。輸出規制は米国の戦略の一環ですが、最近制定された米国CHIPS法はさらに、半導体のグローバルサプライチェーンの大幅な国内回帰させることを目的としています。

オランダの半導体大手ASMLは米国の決定の影響を受ける半導体装置メーカーの1つで、同社は水曜日(10月19日)に決算発表を行う予定ですが、アナリストの第3四半期EPS予想は、第2四半期の決算報告でのネガティブサプライズにより7月中旬から34%減少しています。ASMLにとっては中国市場が重要な市場であるため、最近の米国の輸出規制による見通しへのダウンサイドリスクは当然あり、アナリストの予想では、収益の伸びは前年同期比わずか1%減、EPSは同17%減とされています。
テスラは、その市場価値と、それ以上に市場全体、特に市場の成長部分のセンチメントに影響を与えることから、おそらく来週発表される決算の中で最も重要なものだと思われます。テスラでは最近、第3四半期の納品台数未達が生じ、アナリストは第3四半期のEPS予想を3.6%引き下げました。テスラはリチウム価格の高騰による大きな投入コスト圧力に直面しており、電力価格の高騰も電気自動車の需要に影響を与えている可能性があるため、業績への影響はアナリストの予想以上かもしれません。アナリストは、売上高を前年同期比61%増、EBITDAを51億ドルと予想しています。

来週の最も重要な決算発表のリストは以下の通りです。ASML と テスラの他に、火曜日(10月18日)にジョンソン・エンド・ジョンソンとロッキード・マーティンの決算が発表されますが、ウクライナ戦争の影響を考えると、後者が注目されるところです。プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は水曜日(10月19日)に決算を発表しますが、世界最大の消費財メーカーの一つであり、消費財インフレを知る上で非常に重要な企業です。木曜日(10月20日)は、ABBとダナハーが工業製品の見通しを把握する上で注目されます。金曜日(10月21日)は、世界最大のバッテリーメーカーである寧徳時代新能源科技(CATL)、アメリカン・エキスプレス、そしてエネルギー関連企業として初めて第3四半期決算を発表するシュルンベルジェに注目したいと思います。シュルンベルジェは石油・ガスサービス会社であり、同社の決算は、石油・ガス業界の設備投資と将来の生産量に関する良い先行指標となります。

月曜日:バンク・オブ・アメリカ、サンディスク
火曜日:チャールズ・シュワブ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ゴールドマン・サックス・グループ、インテュイティヴ・サージカル、ロッキード・マーティン、トゥルイスト・ファイナンシャル
水曜日:ASML、エレバンスヘルス、テスラ、IBM、ラムサーチ、プロクター・アンド・ギャンブル、アボット・ラボラトリーズ、アトラスコプコ
木曜日:中国移動(チャイナモバイル)、中国電信(チャイナ・テレコム)、ABB、ダナハー、インベストール、フィリップ・モリス・インターナショナル、ユニオン・パシフィック、CSX、AT&T、ブラックストーン、マーシュ・アンド・マクレナン・カンパニーズ、ヤラ・インターナショナル、ノルデア、ボルボ、エリクソン、フリーポート・マクモラン、ダウ
金曜日:寧徳時代新能源科技(CATL)、アメリカン・エキスプレス、シュルンベルジェ、ベライゾン・コミュニケーションズ、HCAヘルスケア、シーカ
 

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