サマリー: 過去2か月間続いた株式市場の短い上昇は終わり、もみ合いを経て、最近、大幅に下落しました。これは、金融情勢(貸出等の状況)がタイト化したにも関わらず、インフレ圧力がまだ強すぎるとの見方がジャクソンホール会議で明確に示されたためです。その結果、政策金利はさらに引き上げられ、景気後退のリスクが高まり、また金利上昇により株式バリュエーションはさらに低下すると思われます。こうした展開は株式にとってはネガティブであり、年末が近づくにつれ株式相場はさらなる逆風にさらされるとみられます。
先行指標は景気後退に向かっていることを示唆
世界の株式相場は6月17日から8月16日にかけて14.7%上昇しました。投資家は、世界のインフレが鎮静化に向かっていると確信していたためです。金利が上昇してもまだ残っている投機的な余剰資金がミーム株に向かい、そうした銘柄の人気高めました。そして8月、中央銀行による利上げに伴う金融情勢(貸出等の状況)の悪化にも関わらず、名目経済が依然として著しく堅調であることを示す兆候がみられました。その後、市場は、FRBが2023年の早い時期に緩和を開始するという見方はおろか、インフレ動向についての見方についても、突如、確信を失ったのです。
株式バリュエーションは、現在の収益成長率、営業利益率、資本コストによって正当化され、1995年以降の平均を依然として上回っています。しかし、これらの変数のひとつが、株式の重要なダウンサイドリスクになろうとしています。営業利益率は1995年以降の平均を約2標準偏差上回る、歴史的な高水準にあります。これまで、消費者はパンデミックの間、貯蓄を維持していたため、企業は消費者に物価上昇分を転嫁することができていました。しかし、世界的なエネルギー危機が深刻化し、エネルギーコストの対GDP比は今年、13%に達すると予想されており、消費者は物価上昇を吸収することができなくなるかもしれません。企業は、値上げが販売量に直接マイナスの影響を及ぼし、予想以上に収益を圧迫することになるため、そのことを今後数四半期で実感することになると思われます。その結果、企業の利益は縮小し、増収効果が相殺されるでしょう。
9月に入り懸念されるのは、名目ベースではなく実質ベースでの景気後退入り、すなわちスタグフレーションです。通常、中央銀行は利下げを開始し金融情勢の改善を図りますが、名目物価が上昇している一方で景気が後退している状況では、インフレの問題が残るため、利下げを実施することができず、むしろさらに引き上げることになります。エネルギー赤字、脱グローバル化、名目賃金の高騰などから、構造的なインフレは市場が想定している以上に長期化するというのが当社の仮説で、最も可能性の高いシナリオです。米国の景気先行指標は現在、前年比0%であり、今後6か月の間に景気後退入りする可能性が高まっています。2007年の景気後退は、先行指標がピークから6%低下した12月に始まりましたが、今回も同様の分析手法をとり、先行指標の低下が長期化すると想定すると、来年3月には米国経済がリセッション入りする可能性があります。主な要因はエネルギーコストの高騰で、本来なら様々な財やサービスの消費としてGDPに計上される構成要素の額を縮小させてしまうのです。
当社の主要な株式スタンスは依然としてディフェンシブです。商品、物流、再生可能エネルギー、防衛、インド、サイバーセキュリティなどのテーマを引き続きオーバーウェイトしています。半導体については、エヌビディアが中国に半導体を販売することが困難となったというニュースが示すように、業種が大きく変化するため、見解をポジティブからネガティブに変更しました。銘柄種別では、バリュー銘柄とクオリティ銘柄が引き続きグロース銘柄を上回ると見ています。