EUのエネルギー安全保障を背景に、CCSを活用した石炭の復活の可能性 EUのエネルギー安全保障を背景に、CCSを活用した石炭の復活の可能性 EUのエネルギー安全保障を背景に、CCSを活用した石炭の復活の可能性

EUのエネルギー安全保障を背景に、CCSを活用した石炭の復活の可能性

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ピーター・ガンリュー

最高投資ストラテジスト(Saxo Group)

サマリー:  欧州のエネルギー政策が分断されていることが国家安全保障危機の一因となっています。欧州は今後、できる限り早いペースでこの危機に対処していくことになります。石炭、原子力、太陽光、風力を含むあらゆる選択肢の中で、発電所をガスから転換するのに圧倒的に迅速な方法は一般炭です。しかし、ガスから石炭への転換には、欧州におけるグリーントランスフォーメーションの進展と環境への負荷が伴います。しかし、二酸化炭素回収・貯蔵(CCS)技術が急速に進歩しつつあることから、欧州は、CCSと組み合わせることを条件に石炭を復活させ、新しい産業を生み出すことができます。ここでは、石炭とCSSの組み合わせに着目し、これら2つの業界に関わる様々な企業を取り上げます。


あらゆる選択肢が検討対象

ここ1週間の動きは、欧州にとって存在の根幹にかかわる出来事であり、防衛・エネルギー政策は欧州各国間でまとまらなかった状態から超国家的な問題へと発展しました。欧州がロシアのガス・石油に依存していることで、欧州の軍事的な柔軟性は低下してきました。そのため、今後数年で欧州のエネルギー政策は大きく変わることになるはずです。ドイツは基本的に、原子力、石炭、液化天然ガス(LNG)を含むあらゆる選択肢を検討すると述べています。ドイツのScholz首相は27日、連邦議会で「個々のエネルギー供給元からの輸入への依存から抜け出すために、方針を変えなければならない」と述べました。

LNGターミナルや原子力発電所は長期的な解決策であり、太陽光や風力などの再生可能エネルギープロジェクトは、拡張に時間がかかるため、中期的な解決策です。さらに、再生可能エネルギー源の比率を高めれば、再生可能エネルギーの生産量の急増の中断を抑えるために、エネルギー貯蔵に関する余分なコストがかかります。

欧州は「ガス危機」に突入しています。最近の欧州の温暖な気候を考えると、欧州はこの寒い季節を乗り切れる見込みですが、欧州各国は次の冬までに天然ガスの貯蔵庫を満たすことを迫られており、ここでロシアが助けになることはなさそうです。ドイツは、既に石炭備蓄量を増やしており、石炭火力発電所の耐用年数を延長すると発表しました。ガス発電所の多くは石炭に切り替えることができるので、今この時点で、エネルギー政策で石炭が復活する可能性は非常に高いと思われます。

欧州がエネルギー危機を解決し、エネルギー安全保障政策を最も迅速に変更するためには、現実的に、石炭火力発電所に焦点を当てることが唯一の短期的な方法です。世界には豊富な石炭が埋蔵されており、世界の石炭埋蔵量のうちアメリカが24%、オーストラリアが世界第3位の約14%を占めています。石炭は安価でベースロード発電に最適であり、欧州は地政学的パートナーから大量の石炭を入手することができます。しかし、環境汚染源になるため、気候変動やグリーントランスフォーメーションの面で問題になります。

石炭火力発電所と二酸化炭素回収の組み合わせ

ロシアからの天然ガスの影響を軽減するためには、石炭火力発電所が迅速かつ拡張可能な解決策となりますが、有権者の中の環境団体が反対するはずです。しかし、1つの戦略として、二酸化炭素回収・貯蔵(CCS)をできる限り早く導入することを条件として、石炭火力発電所を加速することが考えられます。そんなことが可能なのでしょうか?

何より注意すべきことは、エネルギー政策が国家安全保障の重要な問題になれば、その問題はもはや自由市場の意思決定ではないということです。ちょうど、グリーントランスフォーメーションが自由市場の力を弱める政策決定であるのと同じことです。石炭火力発電所のコストにCCSのコストが加わることは、エネルギー面でのロシアからの自立のためのコストに過ぎないかもしれませんが、欧州は短期的にはその負担を受け入れざるを得ないでしょう。

CSSの利点は、この技術が既に存在し、急速に普及していることです。Global CCS Instituteが公表したTechnology Readiness and Costs of CCS20213月)では、50ページにわたってCCS技術の要点が説明されています。

CCSは基本的に3段階のプロセスから成ります。まず工場や発電所から排出される二酸化炭素を回収し、その二酸化炭素を船舶やトラック、パイプラインで輸送します。そして最後のステップでは、深さ800メートル以上の地中で、二酸化炭素を74バール以上の超高圧に圧縮して貯留します。貯留は通常、枯渇した油田やガス田、または含塩水層で行われます。下の図は、発電所における二酸化炭素回収プロセスを示しています。

Source: Global CCS Institute

国際エネルギー機関(IEA)も、CCSが発電に関連する点について、非常に有用な図解と情報を提供しています。下のグラフは、百万トンの二酸化炭素抽出に関して進行中のCCSプロジェクトを示しています。IEAによると、第2世代のCCS45ドル/CO2トンのコストで抽出することができます。つまり、安価な一般炭 (供給が大幅に拡大された場合) CCSを組み合わせることで、原子力や再生可能エネルギーに次ぐコスト効率の高い解決策になり得るということです。この第2世代のCCS装置では、資本コストが67%削減され、回収率は95%になります。

Source: IEA

最近、これまでにない規模でCCSを実現可能にしてきた大きな原動力の1つは、EUの二酸化炭素排出権価格が90ユーロ/CO2トン超に急騰したことです。しかし、二酸化炭素排出権価格に加え、エネルギー価格と金属価格が上昇していることで、投入コストが増加し、その結果、工業製品の総生産コストは、実質的な需要破壊が起こる水準にまで達しています。

Source: Bloomberg

二酸化炭素回収と石炭採掘に関わる企業

二酸化炭素回収業界は急成長し、成熟しつつあります。CCSは、導入コストの低下により、二酸化炭素排出による気候への影響を抑えるための実現可能な解決策になっています。二酸化炭素回収の専業企業はほとんどありませんが、二酸化炭素回収の専業企業と、一部関与する企業を探し出してみました。

  • Aker Carbon Capture (専業)
  • CO2 Capsol専業
  • Occidental PetroleumCCSに一部関与
  • SchlumbergerCCSに一部関与
  • EquinorCCSに一部関与
  • California ResourcesCCSに一部関与

以下のリストは、石炭採取または関連する石炭採掘サービスを行う企業で、先進国市場の取引所に上場している企業です。

  • Glencore
  • China Shenhua Energy
  • Yancoal
  • Arch Resources
  • Alliance Resource Partners
  • Warrior Met Coal
  • Consol Energy
  • Peabody Energy
  • Whitehaven Coal

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