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Chief Investment Strategist
サマリー: 株式市場は上昇を続けており、米国市場では超大型株の中でTeslaが上昇を牽引しています。同社の第4四半期の出荷台数が予想を大きく上回る30万8,600台に達したことが株価を押し上げました。欧州株式も史上最高値を更新しました。オミクロンに関する楽観的な見方を背景に、急速な正常化と成長率の上昇を材料として見直し買いが入っています。本日の株式アップデートでは、Maerskと運賃にも注目し、物流と供給の制約によりインフレ予想が難しい状況が続くことについても見ていきます。
Teslaは世界最大の自動車メーカーになるか?
Teslaは2日、2021年第4四半期の出荷台数が30万8,600台、年間の総出荷台数が93万5,600台に達したこと、さらに2022年には出荷台数が150万~160万台に達する見通しであることを発表し、市場に驚きをもたらしました。この出荷台数は予想を大きく上回る数字であったことから、投資家はこれを好感し、Teslaの株価は14%上昇して史上最高値をわずかに更新しました。
バッテリー電気自動車(BEV)に関する当社のチャートでは、既に市場トップの地位にある同業他社と比べてTeslaが加速していることが示されており、自動車業界内の緊張が高まると見られます。Volkswagenも追い上げをかけていますが、2020年第4四半期と同様に第4四半期の数字が歪められるリスクがあります。というのも、EUの排出削減費用の規制上の理由で、年末までに過剰生産し出荷することが後押しされるからです(Volkaswagenは昨年、このために子会社に多数のBEVを供給しました) 。Volkswagen対Teslaの戦いの全貌が明らかになるのは、第1四半期が終わってからになるでしょう。
大手自動車メーカーの多くについてデータがないのは、BEVの販売に関する必要な情報をまだ提供していない企業が多いためです。Fordは大きな計画を立てているものの、その内容はまだほとんど明らかにされていません。いくつかの推計によれば、Fordの2022年のBEV出荷台数は15万台となる見通しであり、そうなればTeslaの10分の1ということになります。
世界の自動車業界に関する最近の当社のリサーチメモでは、新車登録台数が減少しているにもかかわらず、大手自動車メーカーを合計した市場価値が過去5年間で何倍も上昇しており、もはや説明がつかない状況になっていると指摘しました。市場は飽和状態にあり、消費者は電気自動車を手に入れるために購入を先延ばししているのです。合計市場価値が理にかなうとすれば、自動車業界全体が将来、ガソリン車やディーゼル車に代わって電気自動車を生産し、収益性が高まるというケースしかありません。実際その通りになるかもしれませんが、これついてはまだ結論は出ていません。株式市場が概ね効率的だと仮定すると、自動車業界が完全に電気自動車に移行した時に、Teslaが世界最大の自動車メーカーになることを市場は織り込みつつあります。今のところ、成長軌道はこの見方を裏付けていますが、もしそれが正しいと判明すれば、従来の自動車メーカーの多くは著しく過大評価されているということでしょうか?これは複雑な問題であり、今後10年間にわたるテクノロジーおよび自動車業界の予測を進展させるものですが、これには大きな間違いが付き物です。
Teslaの2022年の売上は737億ドル、EBITDAは162億ドルになると推定されます。アナリスト予想によれば、Teslaの営業利益率はさらに拡大し、圧倒的な業界トップになると見られます。Teslaの市場価値は1兆2,000億ドルとなり、同社が今後、業界最大手となること、そして収益性を現在の水準からさらに大きく伸ばしていくことを市場は示しています。この問題に関する判断は投資家自身に委ねますが、過去10年間に様々な業界が新規参入企業による大きな変化に見舞われてきたように、破壊的な変化を過小評価しないようにするべきです。
Maerskはインフレ圧力の予測が難しいことを示唆
コンテナ運賃の上昇が当分続くという投資家の予想を背景に、Maerskの株価は3日、3%上昇しました。主要運賃指数は昨年末に史上最高値で取引を終えました。この上昇の背景には、新型コロナウィルスに対する中国の「感染ゼロ」政策で港の制約が強化されたことに加え、先進国における物資の超過需要、トラック運転手とコンテナ船の不足といった要因がありました。パンデミックは今後も悪影響を及ぼし続けるでしょう。特に、新型コロナウィルス対策に関する中国の姿勢がインフレに重大な影響を与える見通しです。過去30年間、インフレ予想が比較的簡単だったのは、インフレが主に需要面の要因に左右されてきたためです。しかしパンデミックにより、供給面の動向が大きな役割を果たすようになっています。物流と鉱業への投資不足により短期的な価格圧力が生じているのに加え、長期的にはグリーントランスフォーメーションと都市化が価格上昇圧力となるはずです。さらに最大の不確定要素は、企業によるグローバルなサプライチェーンの再構築がどの程度進むかということ、そしてそれに応じて生産コストが上昇する可能性があるということです。
欧州ではオミクロンに対する楽観論を背景にSTOXX 600が史上最高値を更新
現在、欧州では、変異株の中でオミクロンが優勢になるのに伴い、新型コロナの感染者数が急増しています。幸い、オミクロン株は重症化しにくく、デルタ株と比べて入院リスクが半分であることが分かっています。欧州全域で新規感染者数と入院者数がはっきりと乖離しており、トンネルの出口に明かりが見え始めています。移動、旅行、レジャーが急速に正常化する見込みであることから、欧州株が見直され、株価が上昇しています。欧州の株価指数は景気循環に左右されやすいこと、また金融セクターの比重が高いことから、今年、コモディティブームが続き、金利が上昇すれば、欧州株には追い風となるはずです。良好なセンチメントにとって最大のリスクとなるのは、欧州で続くエネルギー危機です。穏やかな気候と米国からの液化天然ガスの輸入により、短期的にはこの危機は多少和らいでいますが、欧州の状況は急変する可能性もあります。