口座開設は無料。オンラインで簡単にお申し込みいただけます。
最短3分で入力完了!
Chief Investment Strategist
サマリー: 驚異的なテクノロジーを搭載したChatGPTは、従来のインターネットやGoogleの検索エンジンに代わるAIツールとして大きな注目を集めています。本稿では、ChatGPTの性能や、子会社のDeepMindが対抗する新製品をリリース予定であるGoogleにとってChatGPT が真の脅威となり得るかどうかについて考えます。
ChatGPT とは? - 人気の理由を探る
先月、マイクロソフトはChatGPTブームの火付け役となったOpenAIに100億ドルの追加投資を行う計画を発表し、今後ChatGPTの機能を様々な製品に導入することに意欲を見せています。OpenAIが開発したChatGPTがGoogleの存在を脅かすことになるかどうか判断する前に、まずChatGPTの特徴をいくつか取り上げたいと思います。
人の質問に自動的に回答できるチャットボット自体は特に革命的な製品ではなく、すでに多くのアプリケーションに搭載されているAI技術です。それでは一体なぜChatGPTは瞬く間にブームを引き起こしたのでしょうか?まず、ChatGPTは一般的なユーザーが気軽に利用できる、全く新しいタイプのAIツールのひとつです。他のチャットボットと大きく異なる点は、ChatGPTはまるで人と会話しているように回答できる機能を備えているところです。また、大規模なデータセットでトレーニングされ、膨大な言語処理能力を備えており従来のチャットボットとは比べ物にならないほど優れた性能を持っています。しかし、こうしたサービスを一般ユーザーに提供するためには相応のコストが不可欠となります。これは、これまでに開発されてきたチャットボットが一般向けのサービスを提供していない理由の一つかもしれません。OpenAIはChatGPTの運営に1日当たり10万ドル程度のコストを費やしており、1文字当たり0.0003ドルかかる計算になります。このように、ChatGPTは決して安く提供できるサービスではありません。
ChatGPTはGoogleの検索エンジンに取って代わるか?
それでは、ChatGPTはGoogle – あるいはマイクロソフトのCEOが2022年第4四半期決算のコンファレンスで言及したようにインターネットを置き換える存在となるのでしょうか?ChatGPTは、入力された情報に対して文字を生成するようにトレーニングされた機械学習ソフトウェアです。一方、Googleはウェブサイト間の紐づけによってインターネットにある情報を検出するように設計された検索エンジンです。このため、Googleは最近掲載された情報を検出できるのに対してChatGPTはその情報を含む新しいデータでトレーニングし直す必要があり、これによって膨大な処理プロセスが生じる場合もあります。ここで、現行のChatGPTを実際に使用した時の例をいくつか見てみましょう。これらは学習データに限界があることを示しています。
上段はユーザーの入力内容、下段はそれに対する回答(2023年1月25日にChatGPTで抽出)
Googleで同様の検索をした場合:
2023年1月25日にChatGPTで抽出
ChatGPT と比較した場合のGoogleの強み
Googleの DeepMind はChatGPT に対抗
Alphabet(Googleの親会社)の子会社であるDeepMindもAIテクノロジーの開発を進めており、AIセクターを代表する研究開発企業のひとつです。AphabetとGoogleは、いずれもChatGPTでOpenAI に後れを取ったことに苛立ちを感じているとみられ、DeepMindに独自のチャットボットを開発するためのリソースを集約するよう要求しました。また、DeepMindは先月、ChatGPTに対抗する「Sparrow」というチャットボットのプライベートベータ版を年内にリリース予定であると発表しました。Sparrowはより情報の正確性を重視し、特定の情報を引用する能力に長けていると期待されています。
ChatGPTは実に多くの種類のSQLクエリやその他のタスクに革新的な変化をもたらしましたが、Googleに取って代わる、あるいはインターネットが新たなフェーズに入るといった見方については、まだ多くの疑問が残ります。ChatGPTのAI技術は特許化されておらず、DeepMindや、おそらく中国のBaiduも複製している事実を踏まえると、たとえChatGPTが優れた製品であったとしても、単にチャットボットが抱えているいくつかの技術的な課題をクリアしたに過ぎないのかもしれません。また、他のテック企業が独自のバージョンを相次いで開発すれば、ビジネスとしての付加価値は薄れるかもしれません。いずれにせよ、マイクロソフトはAI技術の開発において大きな賭けに出ています。
Alphabetの株価は直近のピークから44%下落しましたが、テクノロジーセクター全体の上昇につられて年初来では12%上昇しています。ChatGPTの機能やGoogleの検索エンジンを危ぶむシナリオは短期的にはセンチメントに多大な影響を与えてきました。しかし、当グループはChatGPTの脅威は過大評価されており、Googleの検索エンジンは今後も活躍し続けるでしょう。Alphabetのフリーキャッシュフロー利回りは6%と、世界金融危機以来の水準にあり、同社の株価に織り込まれた期待成長率が、いかに低かを表しています。