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Chief Investment Strategist
サマリー: 1973年以降、FF金利の実効レートが上昇することは、株価のリターンが絶対ベースでも相対ベースでも統計的に有意なプラスになることを意味していました。従って、FRBによる利上げサイクルの開始にあたり、それが我々の事前の見解となっていましたが、新たな情報が出てくれば、事前の見解をアップデートする必要があります。今回の非常に重要な点は、金利サイクルの開始前に既に大幅な金融引き締め環境だったことです。その結果、金融引き締めが非常に高水準になり、事前の見解に反して株式のリターンがマイナスになる可能性が高くなりそうです。このため、我々は慎重かつディフェンシブな姿勢を維持しており、最近の反発は再びディフェンシブなポジションをとる機会だととらえています。
過去のデータによれば、フェデラルファンド(FF)金利の引き上げは好材料
21日には、パウエル議長が5月のFOMC会合で50ベーシスポイント、さらに6月に50ベーシスポイントの利上げを行う可能性があることを示唆するタカ派的なコメントを出したことに加え、ブレント原油が1バレル115ドル超に上昇したにもかかわらず、株式市場は意外にも落ち着いた展開となりました。22日の「Saxo Market Podcast」で取り上げたように、一時的なインフレや平均的インフレ目標(長期的に金利が2%超にとどまることを認める)から、何かに中断されるまで続く利上げの実施へと状況は進展してきました。これに伴い、景気後退リスクと株価の下落圧力が高まりますが、株式市場はまだそのような結論には達しておらず、22日にはS&P 500先物は上昇しています。
前の週に示した通り、過去のデータでは、FF金利の実効レートの上昇は、株式の名目リターンおよび超過リターンにとってプラスであることが示されています。この結果は、p値が1%未満であり、統計的に有意だと言えます。つまり、FRBが利上げを開始すれば、それは経済の急拡大、ひいては利益増加と株価のバリュエーションの上昇との相関が高いということです。これは過去のデータでは事実であり、それが事前の見解になるのは当然です。言い換えれば、FRBが予想する金利の軌道は株価にとってプラスです。しかし新たな証拠が出てきた今、我々はベイズ統計学における事前の見解をアップデートします。
現在の金利体制を理解するための手がかりは金融市場環境
現在のインフレ圧力の原因は、中国からの物流・製造における世界的な供給の制約、パンデミック下の過剰な財政刺激策、過去10年間の金属・エネルギーへの投資不足、そして現在のウクライナでの戦争といった要因が複雑に絡み合ったものです。インフレ圧力の原因が経済の供給面にあり、財政刺激策が高水準にとどまっている場合、中央銀行がインフレ圧力を和らげるための唯一の方法は、需要を落ち着かせることだけです。これはまさに今、FRBが利上げと金融引き締めにより迅速に実行しようと計画していることです。
FRBがバランスシートの縮小やFF金利の引き上げを実施していなくても、最近の金融市場環境は既に大幅な引き締め環境にありました(グラフを参照)。1971年以降、金融市場環境とFF金利との相関は0.6でしたが、2003年以降は実質的にゼロであり、金融市場環境が過去とは全く異なることを示しています。現在の利上げ体制が株価にプラスだという事前の見解をアップデートするために、この点が重要です。
積極的な利上げ開始前に既に金融引き締め環境であったため(この時点で相関は低い)、FRBが5月と6月に50ベーシスポイントの利上げを実施すれば、金融市場環境は2008年の金融危機以来の変化率と水準となる可能性があります。Chicago Fed Adjusted National Financial Conditions Indexは現在、-0.25となっており、3月11日時点の米国の金融市場環境は、経済活動を考慮すると、平均よりまだ緩和的だったことを意味しています。1973年以降のデータを見ると、金融市場環境が0.5を上回ると、株式のリターンにとってマイナス要因となることが分かります。この点が、FF金利引き上げはプラスの株式リターンを意味するという見方と比べて、興味深いところです。FRBによる利上げを含む多数の要因によって大幅な金融引き締め環境になるならば、今回の金利サイクルは過去の平均的なサイクルとは異なり、正反対になります。結論としては、我々はディフェンシブな姿勢を維持し、現在の体制で好調に推移するモメンタムの好調な株式テーマ(物流、サイバーセキュリティ、防衛、コモディティセクター。21日に、このグループにグリーントランスフォーメーションを追加)を選好します。