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Chief Investment Strategist
サマリー: 昨日は、バブル銘柄などのジャンク銘柄が取引終了にかけて力強く上昇した一方で、最もパフォーマンスの高いアセットクラスが暴落する、大逆転相場となりました。米ドルのブレイクアウトと、極めて厳しいエネルギー価格を背景とした欧州の景気後退懸念の高まりから、取引時間中に商品価格が5%下落したことにより、ロング・ショート、バリュー、モメンタムの各スタイルにおいて大幅なテクニカル上の反転が起こりました。本日の株式アップデートでは、米国における、アマゾンのグラブハブとの提携により、ジャスト・イートの株価が20%上昇したことについても取り上げます。
奇妙な市場の動き
ポットキャストやエクイティノートでお伝えしましたように、市場はインフレと景気後退の二元論となっていますが、インフレ期待があるなかで商品価格が下落したため、最近は後者の景気後退に注目する流れが優勢になっています。昨日の取引では、米ドルの大幅なブレイクアウトと、欧州のエネルギー価格の高騰という二つの要因が重なり、景気後退への懸念から全ての商品価格が一気に反落しました。ブルームバーグ商品指数は5%下落し、ウクライナ戦争とロシアへの制裁措置による上昇分が取り除かれた2月初旬の水準となりました。
債券利回りは商品価格の下落に追随し、株式では、バリュー投資とモメンタム投資を反転させる方向で取引時間中の趨勢が強まりました。バリュー銘柄とモメンタム銘柄は昨今、重なることが多く、ブルームバーグのこの2種類のスタイルファクター(市場収益特性)のロング・ショートは昨日、それぞれ4.5%と5%下落しました。これはロング・ショートスタイルファクターとしては大きな下げ幅です。今年最もパフォーマンスが良好だった銘柄群が下落し、バブル銘柄などのパフォーマンスの低い銘柄群が上昇するなど、趨勢の逆転現象が見られました。これはつまり、景気後退懸念の高まりによりインフレと金利が低下し、その結果、ジャンク銘柄が買われることになったのです。
ただし、これが次の6か月の成功戦略と考えるのは早計で、米国の名目経済は依然として前年比10%の水準で成長しており、一方、経済の供給サイドの根本的な構造的問題はまだ解決していないことを強調しておきたいと思います。7月は流動性の低い月であるため、投資家には昨日の動きをあまり重要視しないことをお勧めします。
アマゾンは食品配達開始へ
「何でも屋」のアマゾンは、消費経済を動かす「何でも屋」になろうとしているように見えます。アマゾンは7月6日朝、米国の食品宅配企業グラブハブ(欧州のジャスト・イートの子会社)の株式の2%を取得する権利(ワラント)を獲得したと発表しました。米国のアマゾン・プライム会員が食品宅配サービスの1年会員になることをその条件としています。この提携の成果次第では、アマゾンはグラブハブへの出資比率を15%まで引き上げることができます。
グラブハブの親会社であるジャスト・イートの株価は本日、20%上昇しています。市場は、この提携によって、競争が激化しているジャスト・イートの成長力が再び活性化することに賭けているのです。ジャスト・イートの収益成長率は2021年の120%から2022年には32%に低下し59億ユーロとなると予想されていますが、営業利益は依然として赤字であるため、金利上昇環境下で同社の株価は下押し圧力を受けています。
アマゾンにとって、収益モデルはますます複雑になってきており、今回の提携で同社が大きな利益を得られるとは考えられません。むしろ、事業をより複雑化させるだけであり、当社としては、アマゾンがクラウト事業を独立した上場企業としてスピンアウトさせることが望ましいと考えています。