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Chief Investment Strategist
サマリー: 米国住宅市場は減速しています。不動産仲介企業は人員削減を進めており、住宅ローンの申込件数は1990年以来最も低い水準となっています。住宅メーカーでは、資金調達コストの大幅な上昇が建設資材価格の下落により相殺されず、さらに厳しい状況となっています。ここでは、米国の住宅市場と、米国市場のプレマーケット中に発表されたLennarの第2四半期決算を見ていきます。また、今回のエクイティアップデートでは、Teslaについても取り上げます。イーロン・マスク氏がウクライナに「スターリンク」を提供する決定を下したことで、同社の地政学的なリスクが高まっています。
米国住宅市場は大幅な減速を回避できるか?
今年に入って、米国の30年物住宅ローン金利が約3.3%から最近の6%まで上昇したのに伴い、住宅ローンの申込件数は急減してきました。12週間の平均件数は1990年以降の5%パーセンタイルに入り、住宅活動が急速に鈍化していることを示しています。不動産仲介企業数社は最近、業務の減少を見越して人員削減を実施しました。
米国第二位の大手住宅メーカーであるLennarは、2022年度第2四半期(5月31日期末)決算を発表しました。同社は以前の受注分の追い風をまだ受けており、売上は84億ドル(予想は81億ドル)となりました。さらに素晴らしいことに、粗利益率は340ベーシスポイント拡大して29.5%となり、コスト圧力の中でコストが適切に管理されていることが示されました。先に説明したような動向を反映して、新規受注の伸びはわずか4%にとどまりましたが、受注残は前年同期比16%増、受注残額は33%増加の147億ドルとなりました。これは、建設資材価格、ひいては新築住宅価格のインフレを反映しています。同社の現四半期の新規受注見通しは16,000件~18,000件(予想は17,750件)で、需要は予想よりも鈍化しています。
住宅メーカーにとって状況はさらに悪化しており、Lennarの株価は、売上高と収益性の鈍化を反映して44%下落しています。住宅ローン金利の上昇、建設資材コストの高止まり、労働需給の逼迫が相まって、中古住宅の購入と比べて新築住宅の魅力が低下しています。米国景気先行指標の6ヶ月平均は、最新の発表でマイナスに転じ、下方への動きが加速しています。これは、今後6ヶ月間に米国経済が大幅に減速することを示しています。景気後退に陥るのか、どの程度の後退になるのかはまだ不透明ですが、その可能性は確実に高まっています。
Teslaが直面する二大リスク
NHTSA(米国運輸省道路交通安全局)は最近、Teslaの運転支援システム「オートパイロット」に対する調査を強化し、停止処分の可能性のリスクを引き上げました。コモディティ価格の上昇に伴い、Teslaは最近、粗利益率を維持するために値上げをしてきましたが、キャッシュフロー生成の大半は「オートパイロット」ソフトウェアの販売によるものです。実際、Tesla自身も、将来のフリーキャッシュフローの大部分が「オートパイロット」ソフトウェアから生じる見込みだと述べています。我々が以前指摘した通り、停止処分は大きなリスクです。
Teslaに浮上しつつあるもう一つのリスクについては、21日のFTの記事『Elon Musk’s Starlink aid to Ukraine triggers scrutiny in China over US military links(イーロン・マスクによるウクライナへのスターリンク支援で、中国が米軍とのつながりを注視)』で詳しく説明されています。この記事の中で、ウクライナに「スターリンク」受信装置を送るというイーロン・マスク氏の決定が、中国の国家安全保障上の脅威と見なされていることが述べられています。中国の電気自動車市場と上海のGigafactoryは、Teslaがここ数年で大きな成功を収めてきた重要な要因だと言えます。問題は、地政学的なリスクの高まりと米中間の緊張がTeslaにとって突然大きな問題になる可能性があるかどうかです。
Teslaの株価は依然として完璧な成果を見込んだ水準にあります。我々は同社の素晴らしい業績を認めてはいますが、完璧さを見込んだ価格が付けられた場合、予想の変化に対する感応度は非常に大きくなります。