市場の現況
国債利回りの上昇に伴いナスダック100(USNAS100.I)とS&P500(US500.I)が下落
米国株は2日連続で下落しました。FRB当局者が利上げのメッセージを維持する中で国債利回りが再び上昇し、10年以上ぶりの領域まで上昇し続けたためです。スワップ取引では、来年前半のピーク金利を5%と予想しています。指標となる10年国債利回りは9ベーシスポイント上昇して4.23%となり、一時は2008年以来の高水準となる4.239%に達しました。政策に敏感な2年国債利回りは5ベーシスポイント上昇し4.608%で取引されました。ナスダックの利回りはわずか0.97%、S&P500の平均利回りは1.8%、ダウ平均は2.2%で、米国企業収益が今年初めて減少している中では、特に高PERのハイテク株は割高に見えます。ナスダック100は0.5%下落し、S&P500はそれまでの1%以上の上昇を帳消しにし、0.8%下落して終了しました。公益事業が2.5%下落し、S&P500の中で最もパフォーマンスの低いセクターとなりました。通信サービスは、AT&T (T:xnys)が予想を上回る収益を計上し、利益見通しを上方修正したことから、7.8%上昇し、アウトパフォームしました。
米10年債利回りは4.23%と14年ぶりの高水準に (TLT:xnas, IEF:xnas, SHY:xnas)
米国債は2日連続で売られ、2年債利回りは5bp上昇の4.615%、10年債利回りは9bp上昇の4.23%と14年ぶりの高水準となりました。フィラデルフィア連銀のハーカー総裁が、FF金利が 「年末までに4%を大きく上回る 」との見通しを示し、クックFRB理事がインフレ対策には 「利上げを継続し、その後に政策を景気抑制的な状況で当面維持することが必要」と述べたことで利回りは急上昇しました。企業の新株に対するヘッジも利回り上昇に寄与しました。
香港ハンセン(HSIV2)、中国CSI300(03188:xhkg)
香港株は急落、ハンセン指数は1.4%下落し、13年ぶりの安値をつけました。中国が訪中外国人旅行者の検疫を短縮するとの報道で反発しましたが、持ち直すには至りませんでした。米国債利回りの上昇と人民元安が相場の重石となりました。さらに、先週日曜日(10月16日)の中国共産党大会で発表された「活動報告」で紹介された「富を蓄積する手段を規制する」という概念や、米国と台湾が兵器の共同製造について議論しているというニュースワイヤー報道が政策に及ぼす可能性について、投資家は懸念を強めています。中国の大手銀行は、1年物および5年物のローンプライムレートを据え置きました。中国のインターネット関連銘柄は3%~8%売られました。EV分野は引き続き軟調で、有力銘柄は2%~6%下落しました。京東健康(JDヘルス・インターナショナル)(06618:xhkg)は自社株買い報道で7.1%上昇しました。香港と本土の取引所で半導体株が急伸しました。報道によると、工業情報化部がマイクロチップメーカーの幹部を召集し、米国製半導体技術への中国のアクセスを制限する米国の最新の動きについて協議し、国内半導体産業への支援を約束したとのことです。また、中国本土の証券会社は、中国共産党の全国代表大会で提案された戦略的技術開発のための全国的な取り組みにより、中国国内のチップ製造産業が恩恵を受けるとするレポートを発表しました。華虹半導体(フアホン・セミコンダクター)(01347:xhkg)が5.6%高、中芯国際集成電路製造(SMIC)(00981:xhkg)が1.6%高、北方華創(002371:xsec)が10%高となるなど、香港と本土の取引所で半導体名が急騰しました。CSI300は0.6%上昇しました。
オーストラリアのASX200(ASXSP200.1)は0.4%下落、リチウムと石炭企業の決算に注目、オールケムとコロナドから
以下の企業が四半期収益を発表し、オーストラリア第2位のリチウム企業であるオールケムが(AKE)四半期の生産を報告します。競合のピルバラ・ミネラルズ(PLS)のリチウム落札価格が最高値を更新しているため、今後の見通しが焦点となります。石炭では、コロナド・グローバル(CRN)の決算が注目されます。石炭価格は高値から13%下落したものの、過去最高値圏にあります。特に石炭需要は通常1月にピークを迎えるため、今年の見通しが注目されます。また、石炭会社のコロナドでは、米ピーボディ・エナジーとの合併の可能性に注目が集まっています。その他の注目企業としては、資産管理・ファイナンシャルプランニング事業のアメリプライズ・ファイナンシャル(AMP)があり、2023年に11億ドルの資本をいかに投資家に還元するかに関心が集まっています。また、工業関連では、年次総会を開催するゴミ処理業のクリーナウェイ・ウエイスト・マネジメント(CWY)に注目が集まります。トレーダーは、クリーナウェイの収益(EBITDA)予想が、6億3000万豪ドルから6億7000万豪ドルに上方修正されるかどうかに注目するでしょう。
ドル円が150円を突破、次に注目水準は153円
昨日、ドル円はついに、多くの人が介入を予想した重要な水準である150円を突破しました。今朝、鈴木財務大臣が「緊張感をもって動向を見ていきたい」と発言するなど、政府関係者が口先介入を行っています。また、市場の信頼を失わないよう財政の健全性を追求するというコメントに示唆されるように、英国市場の混乱に対して警戒感を持っているようです。来週の日銀会合がカギとなりますが、政策スタンスの変更は期待できません。150円を突破すると、次は153円レベルに向かうかが注目されます。
原油(CLX2・LCOZ2)
中国のインバウンド観光政策緩和への期待から原油が上昇しましたが、その後は米国のエネルギー価格上昇抑制への取り組みに注目が集まり、上昇幅が縮小しました。バイデン大統領が発表した戦略石油備蓄からの1500万バレルの追加放出は、今年初めに開始した1億8000万バレルの放出の一環ですが、米国の戦略備蓄がどのように補充されるかが注目されています。WTI原油先物は85ドルを割り込み、ブレント原油先物は92ドルに迫っています。
注目すべき材料
新英国首相は政策転換で何をもたらすか
経済的にも政治的にも大きな混乱が生じた後、リズ・トラス氏は就任からわずか44日で英国首相を辞任しました。この夏、トラス氏の対立候補として党首選に立候補した元財務相のリシ・スナク氏は、トラス氏が国債を財源とする大規模な減税策を進めれば、市場にパニックを引き起こすと正しく予測していました。他の候補として考えられるのは、元首相のボリス・ジョンソン氏か、ペニー・モーダント氏で、彼女も夏の党首選に立候補していました。財政政策は新首相の就任で大きく変わることはないでしょう。なぜなら、現在の英国政権は市場の動きに極めて神経質になっているためです。景気後退の回避や、英国資産への資産配分を回復させたりするために、彼らができることはほとんどありません。
市場のFF金利期待値は5%に到達
2023年初頭のFF金利期待値が5%超に達し、11月の会合では75bpの利上げが完全に織り込まれ、12月の会合でさらに75bpの利上げが行われる可能性が高くなっています。FRBは来年も利上げを継続することを強調していますが、市場の予想はドットプロットに示唆される水準よりも高くなっています。そのため、特にコアインフレについて良好なサプライズが続けば、FRBがタカ派的なサプライズを起こす余地は少なくなっています。昨夜、チャールズ・エバンス・シカゴ連銀総裁は、FRBが政策金利を予定より大幅に引き上げれば、経済を圧迫しかねないと述べ、ある時点で金利上昇が非線形的な影響を及ぼすようになり、企業がより悲観的になることを懸念していると述べました。ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁(2023年投票権者)とクックFRB理事は、FRBは利上げを続ける必要があるとの主張を繰り返しましたが、FRBは引き締めが経済に与える影響を評価するために、来年のいずれかの時点で一時停止できると認識するでしょう。10月15日の週の週次失業保険申請件数は再び減少し、最近のハリケーンによる混乱にもかかわらず、労働市場の強さを引き続き示唆しています。
中国がインバウンド検疫の縮小を検討
報道によると、中国当局は、中国への渡航者の検疫要件である現在のホテル隔離7日間プラス自宅隔離3日間を、ホテル2日間プラス自宅5日間に短縮することを検討しているとのことです。この動きは規模が小さく、まだ当局が確認したわけではありませんが、消費、投資、観光を制約している長年のゼロコロナ政策の緩和という点で、大きなシグナルとなりえます。
米国、対中技術規制の範囲拡大
ブルームバーグは、事情通の話として、バイデン政権が早期に、量子コンピューティングや人口知能ソフトウエアに利用できる高度なコンピューティング技術への中国のアクセスを制限する、新たな輸出禁止措置を検討していると報じています。
世界的に増加するサイバーセキュリティ攻撃、米内務長官がアジアでより増加する可能性があると警告
米国政府高官は、ロシア、中国、北朝鮮、イランから、特にアジア諸国に対して攻撃的なサイバー攻撃が増加すると警告しています。今月、マイクロソフトのデータ漏洩をはじめ、日本証券業協会、オーストラリア国内の税務署、インディアナポリス住宅公社のシステム、オーストラレーシアの通信事業者、ASX上場保険会社メディバンクなど、世界的にサイバー攻撃が相次いで発生したことを受けたものです。このことは、企業や組織がサイバーセキュリティ対策を即刻、かつ継続的に強化する必要性を示唆しています。こうした状況下では、分散投資の必要性を認識し、サイバーセキュリティ関連の株式やETFへの投資を検討することが重要であると考えられます。詳細については、サイバーセキュリティのバスケットを参照してください。
日本のインフレ率は3%に到達、消費者物価見通しが来週修正される可能性
日本のコアインフレ率は30年以上ぶりに3%台に突入し、予想と同水準となりました。ヘッドラインインフレ率は前年比3.0%と予想を上回り、コアコアインフレ率(生鮮食料品およびエネルギーを除く)は1.8%と前回の1.6%から上昇しました。第4四半期も大幅な円安が輸入物価の上昇を促す可能性があり、パンデミック規制から日本が国境を開放したことで、需要も増加する可能性が高いと思われます。日銀は来週会合を開き、政策変更は期待しにくいものの、2022年度(3月期)の消費者物価見通しを2.3%から2%台後半に引き上げると予想されます。
スナップ決算でハイテク企業決算への懸念が急上昇
スナップ(SNAP:xnys)は、第3四半期の売上高が前年同期比6%増となり、ほぼ市場予想と同水準でしたが、第4四半期の売上高成長率の同社予想が前年同期比横ばい(市場予想は同6%増)と減速することを受け、時間外取引で26.5%急落しています。同社は、「多くの業界の広告パートナーが、特に事業環境の逆風、インフレによる圧力、資本コストの上昇に直面して、マーケティング予算を縮小している」と指摘しました。
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