金融情勢の再びの悪化に伴い株価下落の可能性

金融情勢の再びの悪化に伴い株価下落の可能性

株式
Peter Garnry

Chief Investment Strategist

サマリー:  米国の金融情勢(金融政策および貸出状況等の状況)は過去6週間改善基調にありましたが、これは7月に米国の一部の経済指標が改善したことを受けた展開でした。FRBは9月の会合で75bpの利上げを行う可能性があり、金融情勢は再び悪化するでしょう。インフレ率を十分に低下させるには名目経済が依然として強すぎるためです。最も可能性の高いシナリオは、エネルギー危機の影響により、冬が近づくにつれて株価が下落するというものです。


一段の引き締めにより金融環境は間もなく再び変化

S&P500先物は先週の高値から3.4%下落し、200日移動平均線にタッチした後、もみ合いの状況となっています。金曜日のFF 先物金利イールドカーブ(青い線)は、1週間前(紫の線)より下方シフトしています。これは市場が、来年の利下げが予想より緩やかなものになると考え、センチメントを変化させていることを示しています。市場では過去1か月、インフレ圧力が鎮静化すると予想する向きが強まっていました。

米セントルイス地区連銀のブラード総裁は最近、名目経済成長を抑えるため、9月のFOMCで75bpの利上げ支持に傾いていると述べました。実質経済成長が低調な中、FRBが75bpの利下げに踏み切れば、経済実態に対して金融情勢がより厳しくなることを意味します。金融情勢は6月以降改善していますが、もう一段の引き締めにより、過去を上回る水準に達し、それに伴い米国株式にも圧力がかかる可能性があるでしょう。

S&P500先物は現在、4,200の水準を大きく下回っており、前回の上昇以前のもみ合いの状況となっています。次の下値の重心は4,100で、その下は4,000のすぐ上です。S&P500のプットオプションは現在、208ドル前後で買われており、アット・ザ・マネーで3か月間のダウンサイド・プロテクションを構築するには約5%のプレミアムが必要であることを示唆しています。
 
S&P 500 futures | Source: Saxo Group
Fed Funds futures forward curve | Source: Bloomberg
US financial conditions | Source: Bloomberg

米国は景気後退に向かっているが、それはいつか

米国の金融環境は7月に緩み、株価は上昇しました。シカゴ連銀全米活動指数(経済活動も最も広範な指標)は6月の-0.25から7月には0.27に上昇し、経済活動が大幅に回復したことを示唆するものとなりました。同指標の中では、生産指数が最も高く、指数の4つの主要なサブカテゴリー全てにわたって回復が見られました。

3か月平均はまだ-0.09で、この指標が米国経済の後退を示唆する統計的な閾値(分岐点となる水準)は-0.7です。したがって、景気後退の可能性はまだ高いですが、米国経済の減速スピードは緩やかになっており、米国株式市場にはプラス要因です。景気予測は困難ですが、北半球が冬を迎えるにあたり、エネルギー危機に直面する経済が、少なくとも実質的な景気後退を回避することは非常に難しいというのが当社の見解です。最も可能性の高いシナリオは、米国経済は実質上の景気後退に陥るが、名目成長は続くというものです。
 

中国は2008年と同様の不動産セクターの救済が必要な状況

恒大集団をはじめとする中国の不動産開発会社の低迷については、今年初めのレポートで述べました。中国の不動産セクターに加わるストレスは、今年初めの大きなテーマでしたが、その後は関心が薄れています。しかし最近、中国の中央銀行は政策金利を引き下げ、また本日、問題を抱えた開発会社に対して290億ドルの特別融資による救済策を計画していると発表しました。中国の不動産業界の緊張は、消費者心理の悪化を通じて経済に重くのしかかり、投資家がますます中国へのエクスポージャーを削減していることは、当社のデイリーポッドキャストでも取り上げています。

中国人民銀行(中央銀行)は銀行に安定した貸出拡大を維持するよう求めていますが、銀行の資産に対する時価総額が長年にわたって低下しているため、市場はもはや、与信拡大が健全な信用分析に基づくものではなく、信用力は不明であまり良好でないであろう貸出先に対する、政府の与信拡大政策の手段となっているとみているようです。

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