売上総利益率の状況
エヌビディアは、2か月余り前に2023年度第1四半期の決算を発表し、過去最高の売上高を記録しましたが、本日、第2四半期の決算を
事前発表し、第2四半期(7月31日に終了する四半期)の売上高総利益率(GAAPベース)の予想を65.1%から43.7%に、売上高の予想を前回発表の81億ドルから67億ドルに下方修正しました。売上高の減少は、マクロ経済環境の影響を受けているゲーム部門が原因であるとしています。ゲーム部門の需要減少は、在庫が過大であったために価格調整を余儀なくされたことも示唆しています。そのため、同社は13億ドルの在庫償却費を計上しています。
エヌビディアはビットコインマイニング業界との関連を公式に示してはいないものの、同社のGPUがビットコインマイニングに多用されていることは周知の事実です。同社は、自社のGPUの最終用途を正確に把握していないため、ビットコインマイニングに関連する収益は同社のデーターセンター部門とゲーム部門に計上されているとみられます。エヌビディアのGPUの需要減少は、ゲーム業界とは関係なく、ビットコインマイニング業界の収益性によるものです。下のグラフの通り、ビットコインマイニングの収益性は2021年後半には極めて高水準でしたが、現在ではほぼ赤字になるほど縮小しています。これにより、ビットコインマイニングに使用されるGPUの追加需要は当然減少し、マイナーを廃業に追い込み、その後、古いGPUが市場に流通しています。このように二次販売で入手可能なGPUが増えたことで
GPUの価格が劇的に下落したことが、6月に米ギズモードによって明らかにされました。
エヌビディアは長期的な見通しに変更はないとしている
前回、エヌビディアの株価が劇的に下落したのは、2017年末にビットコインの大規模な投機的上昇でマイニング用GPUの需要が高まった後、ビットコインのマイニング収益性がマイナスになった2018年末でした。今回も同じです。長期的にエヌビディアは多くの重要な技術領域における可能性を有しますが、米中関係の緊張の高まりにより、サプライチェーンと市場機会が変化する可能性があるという重大なリスクも抱えています。同社は中国に102社のパートナーを有しており、これは同社のパートナー総数の約12%に相当します。
決算予想の大幅な下方修正にも関わらず、投資家は8%下落して取引開始された同社の株式を買っています。その結果、同社の株価は最初の下げを半値戻し、4%の下げとなりました。その理由は同社が、長期的な売上総利益率は損なわれないと述べているためと思われます。