7月は夏季休暇シーズンであるため株式市場は低調に推移しますが、今後3週間に予定されている主要決算のうち、特に注目されるのは以下の決算です。
- JPモルガン・チェース: 米銀は昨年11月以降、米金利上昇に積極的に反応していません。市場は預貸金利ざやの上昇が緩やかであると予想しており、住宅ローンやクレジットカード支出などを含む消費者の活動低下がそれを相殺すると思われるからです。また、財務状況が厳しくなっていることから、貸倒引当金の増加も予想されます。
- ロッキード・マーティン: ウクライナ戦争が勃発して以来、米国の防衛関連株は欧州の競合他社に比べあまり動いていません。欧州が自国の防衛産業を優先させる一方で、支出の増加は米国の防衛企業にも流れ込みます。ロッキード・マーティンの第2四半期決算発表が、その仮説が正しいか否かを示す最初のヒントとなるでしょう。
- ネットフリックス:世界最大のオンラインストリーミングサービスは、ユーザー数の減少、競争の激化、コンテンツ制作のコスト増、そして顧客の生活費全般への圧迫の影響を受けています。投資家の関心は、同社が、インフレの影響を最も強く受けている世帯のストリーミングへの参入コストを下げるために、広告をベースにした新たな階層化モデルを発表するかどうかに集まっています。
- ハリバートン:石油・ガス業界は、化石燃料に対する政治的圧力から、新規油田・ガス田への過大な投資には依然として消極的です。ハリバートンは石油サービス大手で、石油業界では今後、設備投資が回復すると当社はみています。
- テスラ:第2四半期は、中国での新型コロナウイルス感染拡大に伴うロックダウンにより、EVメーカーの事業が大きく制約され、販売台数は2年以上ぶりに前四半期比で減少しました。同時に、テキサスとドイツの工場でも生産が難しくなっており、特にフォルクスワーゲンとBYDとの競争が激化しています。
- ASML:マイクロンやサムスンなどいくつかの半導体メーカーが最近、暗い見通しを発表しており、これらの予測は半導体装置を提供するASMLの見通しにも影響を与える可能性があります。また、同社は最近、特定の装置の中国への販売を停止するよう米国政府から圧力を受けています。
- ABB: 欧州ではエネルギー危機が急速に進行しており、極めて厳しい電力料金により産業活動が困難になっていることから、産業用機器には圧力がかかっています。世界経済の全般的な減速も、見通しにマイナスの影響を及ぼす可能性があります。
- アルファベット: 第1四半期決算以降、スナップは広告需要の弱含みを背景に増収見通しを下方修正していますが、アルファベットは同様の動きをみせていません。しかし、営業利益率への圧力を相殺するために、同社がマーケティング費用を削減していることが多方面で確認されています。広告事業以外では、クラウドコンピューティング部門が依然として好調であると当社は予想しています。
- マイクロソフト: コンピュータのオペレーティングシステムで世界的に依然としてほぼ独占的な地位にあること、クラウド事業がシェアを獲得していることから、経営は安定しています。企業支出はまだ打撃を受けていませんが、サムスンは昨日、そうした影響が現れつつあるとしたため、それがマイクロソフトの収益へのリスク要因になるかもしれません。
- メタ: アルファベットと同様ですが、注意すべき点があります。メタは メタバースという新たな賭けに四半期あたり 30 億ドルを費やしており、投資家はマーク・ザッカーバーグが描く、未来のための新しいコンピューティングプラットフォームを作るという野心に対し、我慢の限界に達しているかもしれません。特に、アップルが iPhone で行ったデータ・プライバシーの変更によって、メタが効率的に広告を配信することが難しくなり、広告事業モデルが勢いを失う動きが続く中では、状況は一層困難になります。
- アップル: ハイエンドの家電メーカーであるアップルは、現在市場が予想しているより大きなインフレによる逆風に直面する可能性があります。サムスンの見通しはアップルの投資家に無視されましたが、アップルの決算発表で再び注目されるかもしれません。また、サプライチェーンの制約もアップルにとって重要な問題であり、これが収益成長率のマイナスのサプライズにつながる可能性があります。
- アマゾン: 「何でも屋」のアマゾンはパンデミック時に経費をかけすぎ、受注から配送までの業務と物流のコスト増により営業利益率が圧迫されています。クラウドコンピューティング部門では、マイクロソフトとグーグルからも、さらに圧力を受けています。新CEOには、Eコマース事業の営業利益率を回復させるよう、大きなプレッシャーがかかっています。
今後3週間の決算発表のうち、重要なものは以下のとおりです。なお、これらの決算発表の一部は、本資料の発表後に変更される可能性があります。
- 7月12日(火曜日):トリグ、DNBバンク、ペプシコ
- 7月13日(水曜日):ファステナル、デルタ航空
- 7月14日(木曜日):ファーストリテイリング、エリクソン、SEB、EQT、JPモルガン・チェース、モルガン・スタンレー、シンタス
- 7月15日(金曜日):インベストール、サンドビック、エムエスケミー、ユナイテッドヘルス、ウェルズ・ファーゴ、チャールズ・シュワブ、ブラックロック、シティグループ、プログレッシブ、USバンコープ、PNCファイナンシャルサービシズ
- 7月18日(月曜日):バンク・オブ・アメリカ、IBM、ゴールドマン・サックス、ノルデア
- 7月19日(火曜日):ジョンソン・エンド・ジョンソン、ノバルティス、ロッキード・マーティン、ネットフリックス、アトラス・コプコ、ボルボ、ハリバートン、アッサ・アブロイ、ハスブロ、ヤラ・インターナショナル
- 7月20日(水曜日):テスラ、アボット・ラボラトリーズ、ASML、CSX、日本電産、バイオジェン、ベーカー・ヒューズ、コーン、ボルボ・カー、アケル、 ダッソー・アビアシオン、ユナイテッド航空、ASMインターナショナル、 アルファ・ラバル
- 7月21日(木曜日):ロシュ、ダナハー、AT&T、ブラックストーン、SAP、 インテュイティブ・サージカル、ABB、フリーポート・マクモラン、キンダー・モルガン、ニューコア、DRホートン、ノキア、エシティ、シーゲート・テクノロジー、マーケットアクセス
- 7月22日(金曜日):ベライゾン、ネクステラ・エナジー、アメリカン・エクスプレス、シュルンベルジェ、ツイッター、ダンスク・バンク、ノルスク・ハイドロ
- 7月25日(月曜日):NXPセミコンダクターズ、キューン・ウント・ナゲル、フィリップス、ライアンエア
- 7月26日(火曜日):アルファベット、ビザ、LVMH、コカ・コーラ、マクドナルド、UPS、テキサス・インスツルメンツ、レイセオン・テクノロジーズ、ユニリーバ、クリスチャン・ディオール、ゼネラル・エレクトリック、UBSグループ、ゼネラル・モーターズ、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド、サザン・コッパー、DSV、ウニクレディト
- 7月27日(水曜日):マイクロソフト、メタ、ブリストル・マイヤーズ・スクイブ、クアルコム、AMD、エクイノール、GSK、サービスナウ、リオ・ティント、モンデレズ、ボーイング、エアバス、3M、ケリング、ヒューマナ、メルセデス・ベンツ、フォード・モーター、クラフト・ハインツ、スポティファイ、BASF、ダノン、エンフェーズ・エナジー、ガーミン
- 7月28日(木曜日):アップル、ネスレ、ファイザー、メルク、ロレアル、シェル、コムキャスト、インテル、リンデ、トタルエナジーズ、サノフィ、ハネウェル、アンハイザー・ブッシュ・インベブ、キーエンス、フォルクスワーゲン、エア・リキード、シュナイダー・エレクトリック、バンコ・サンタンデール、ヴァレロ・エナジー、ステランティス、ネステ、BAEシステムズ、アルセロール・ミッタル
- 7月29日(金曜日):アマゾン、エクソン・モービル、P&G、マスターカード、シェブロン、アッヴィ、アストラゼネカ、ソニー、キャタピラー、コルゲート・パルモリーブ、BNPパリバ、トゥイリオ、ピンタレスト
財務状況と乖離して上昇基調にあるバイオテクノロジー
革新的なバイオテクノロジー産業を大きく反映する、当社の次世代医薬バスケットは、インフレ率低下と金利引き下げへの期待、および潜在的なショートカバーの組み合わせにより、最近の安値から25%上昇しています。同セクターの企業の大半は損益分岐点に達するまでの期間が長いため、市場の中でもデュレーションが最も長く(金利に対する感応度が高く)なっています。株価バリュエーションが高く、研究開発型の企業であるだけに、その影響を受けやすくなります。
バイオテクノロジー関連株は最近反発しましたが、財務状況が引き続き厳しく(グラフ参照)、現在の水準と方向性は、これらの企業の新薬研究活動に必要な資金調達にマイナスの影響を与え続けるため、当社は今後6か月間、同業界に対して慎重な見方を継続します。