口座開設は無料。オンラインで簡単にお申し込みいただけます。
最短3分で入力完了!
Chief Investment Strategist
サマリー: 投資家は長期的なインフレに備える必要があり、インフレからポートフォリオを守る方法を考えなければなりません。そこで今回の株式アップデートでは、REITとインフレ連動債について取り上げ、それぞれの上位5位までのUCITS ETFを紹介します。REIT(不動産投資信託)は歴史的に高インフレ期には好調に推移してきましたが、今回は不動産のバリュエーションが高いため、そうはならないのではないかという疑問があります。インフレ連動債は有意の期間のインフレ期には存在しなかったものなので、今回初めて実際に試されることになります。
Marijn A. Bolhuisらが新たに発表した経済論文「Comparing Past and Present Inflation(過去と現在のインフレの比較)」では、現在のインフレと過去のインフレを比較しやすくするために、米国のCPIバスケットの経時的な変化について論じています。その中で、現在のインフレ体制は過去のピークにかなり近いことが示されました。主な結論として、現在のCPIコア・インフレ率を2%に戻すには、ボルカー議長時代に達成された水準とほぼ同程度のディスインフレが必要だとされています。また、1970年代のCPIバスケットには一過性の財が多く含まれていたのに対し、現在のCPIバスケットは硬直性が高い要素から構成されているため、インフレ率が下がりにくい可能性があります。特に賃料がCPIバスケット内で占める割合が大きく、ラリー・サマーズ氏は新しいインフレ期を「住宅インフレ時代」と呼んでいます。いずれにしても、インフレは続いており、過去一年半の間にたびたび主張してきたように、現物市場が高値に達していることがインフレ圧力を引き続き支えるはずです。
REITとインフレ連動債はインフレ期に検討すべき商品
インフレが金融市場に長期的に影響を及ぼすならば、投資家はその対策をポートフォリオに組み込まなければなりません。インフレの第一波の多くが経済の供給面、特にコモディティに起因していることから、コモディティは必須の資産であると我々は一年以上前から主張していました。さらに、グリーン・トランスフォーメーション、過去10年間のコモディティ投資の不足、都市化、ウクライナ戦争の影響を原動力として、今後10年間に世界はコモディティのスーパーサイクルに入ると我々は見ています。そのほか、過去一年間のインフレ体制下で好調に推移してきたテーマは、再生可能エネルギー、防衛、物流、インド、サイバーセキュリティです。いずれも相変わらず気に入っているテーマですが、インドはバリュエーションの高い新興市場であることから、おそらく最大の短期リスクになるでしょう。
株式以外のテーマでは、REIT(不動産投資信託)やインフレ連動債が多くの市場参加者の間で話題にのぼっています。REITは1970年代のインフレ期中に存在し、破滅的状況になりましたが、不動産市場とREITは1970年代以降に大きく進化してきたため、同じようなことが起こると予想するのは無理があるかもしれません。インフレ期に不動産に魅力がある理由として、賃料がCPI指数と連動することや、期間が短い賃料契約であれば、インフレに早く追いつけることがあります。また、不動産のバリュエーションが歴史的にインフレ期にもよく持ちこたえてきたこと、さらに保管コストがかからない(ただし維持費はかかる)ことも、インフレ期に金よりも不動産を選ぶ根拠とされます(ただし、二つのうちから選ぶにしても、両方の資産を保有しても良いはずです)。Bernsteinのデータによると、インフレ率が年5%を超えるインフレ環境下では、米国のREITは好調に推移し、債券や株式のパフォーマンスを上回ってきたことも示されています。金利上昇(インフレ率上昇を踏まえた予想に基づく)によるREITの主なリスクは、S&P Globalによって次のようにまとめられています。
金利上昇は、間違いなくREITにとって難しい課題となります。他の全ての条件が同じであれば、金利が上昇すると不動産の価値が下がり、REITの借入コストが増加する傾向があります。また、金利が上昇すると、低リスクの確定利付き債券と比べて、相対的に高いREITの配当利回りの魅力が薄れ、インカムゲインを求める投資家にとって魅力的ではなくなります。
ポートフォリオにインフレ対策を組み込みたいと考える投資家が利用できるもう一つの金融商品は、インフレ連動債です。米国は1997年に最初のTIPS(米国物価連動国債)を発行しました。これは、債券の元本がCPI指数に応じて調整され、インフレ率が高くなるほど支払い利息が増えるように設計されています。Morningstarのウェブサイトにインフレ連動債に関する詳しい説明がありますが、投資家が注意すべき点は、インフレ連動債はたいてい大半の名目債券よりも償還期限が長いため、短期的には金利リスクが大きいということです。しかし、長期的には、インフレ率が上昇傾向にある場合、インフレ連動債は名目債券よりもインフレ後のリターンが高くなります。
以下の表は、各カテゴリの運用資産額上位5位までのUCITS ETFを示しています。