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チーフ・インベストメント・ストラテジスト
サマリー: 最近のテクノロジー株の急伸により、時価総額加重のS&P500指数内で同業種銘柄への集中化が進んでいます。このため、S&P500のようなインデックスに投資した場合の分散投資の効果は損なわれ、金利上昇のリスクに過度にさらされるようになっています。このような中、資産クラス、業種、地域の観点で分散化を図るアクティブ投資戦略の重要度が高まっています。
投資家がインデックス・ファンドを選択するのは、多くの場合、分散投資のためです。公平を期すために言えば、この戦略は少数の銘柄に投資するよりもメリットがあります。しかし、最近は状況が変化し、最近は株式インデックス内で代表的構成銘柄への集中度が高まっています。
S&P500は、最近大型成長企業への偏重を強めているインデックスの一つです。つまり、このインデックスは現在過度な金利リスクにさらされており、それに投資を行っても、真の意味での分散投資効果を得ることはできません。
以下のような理由から、これは考慮すべき重要な問題であると考えます。
最近の人工知能(AI)への関心の高まりを背景に、メガキャップのテクノロジー銘柄は大きく上昇しました。S&P500の上位10社が同インデックスに占める割合は、ドットコム・バブル期が25%であったのに対し、現在は約35%になっています。上位企業間の相関性が低ければ、これはそれほど大きな問題ではないかもしれません。しかし、上位10社のうち8社はテクノロジー株であるため、相関性が高く、金利変動のリスクにさらされやすくなっています。
米国の金利が高止まりした場合を考えてみましょう。これは、テクノロジー株やその他の成長株が脆弱になる可能性があることを意味します。そうした銘柄のS&P500に占める比率が高いことも、「真の分散化」ポートフォリオと比べ、同インデックスがインフレや金利ショックに対して極めて脆弱である要因です。
これら構成比率上位銘柄は最近のAIブームの波に乗りアウトパフォームしてきました。そのため、エヌビディア、マイクロソフト、アルファベットなどの主要銘柄のバリュエーションが上昇しています。S&P500に連動するSPY ETFの保有上位5社(アップル、マイクロソフト、アマゾン、エヌビディア、アルファベット)は現在、予想PER45倍で取引されており、インデックス全体のバリュエーションも20倍に達しています。このため、これら銘柄の上昇は構造的な要因や収益成長に裏付けられているわけではなく、脆弱なものであると感じられます。
もし投資家が業績の先行きや景気の後退を警戒し始めたら、高騰した株価を正当化するのが難しくなり、高水準のバリュエーションの一部がはがれ落ちる可能性があります。AIへの期待が誇大広告やバブルであることが判明した場合、これらのバリュエーションは、上昇スピード以上ではないにせよ、同程度のスピードで巻き戻されるかもしれません。
真の意味でのポートフォリオの分散化は、異なる資産クラス、産業、地域に分散投資することで達成されます。純粋な株式インデックスへの投資では資産クラス間の分散化は図れず、ほとんどの場合で、地域間の分散化も図れません。しかし、S&P500に投資することで、産業間の分散化は期待することができます。
投資家にとって検討可能な選択肢の一つは、S&P500均等加重(EW)型インデックスへの投資です。このインデックスは時価総額加重(MW)型のS&P500と同じ米国上場大企業500社で構成されますが、各銘柄の構成比率は四半期ごとにポートフォリオ評価総額の2%にリバランスされます。EWインデックスは、S&P500の集中度が高く、その水準が低下している時にはMWインデックスをアウトパフォームし、集中度が低く、その水準が上昇している時にはMWをアンダーパフォームします。
集中化リスクに対処するには、アクティブ運用戦略がより一層適しているかもしれません。これは、小型株や小型株インデックスへの投資を追加することで大型株へのエクスポージャーを分散化したり、バリュー株や景気敏感株への投資を追加することで成長株へのエクスポージャーを分散化させたりするものです。ただし、景気減速のリスクを考慮すると、景気敏感銘柄や小型株の選別に留意する必要があります。また、米国に比べて割安なバリュエーションであることから、欧州、日本、新興国への地理的なリバランスが中期的に有効であるかもしれません。