テクノロジーセクターのセンチメント、Palantirの決算、割引率

株式 10 minutes to read
Peter Garnry

Chief Investment Strategist

サマリー:  テクノロジーセクターのセンチメントはITバブル崩壊時並みに落ち込み、多くのテクノロジー企業が50~90%の株価下落に見舞われています。ここでは、黒字でありながらも下落に見舞われた銘柄をいくつか取り上げます。これらの企業を好ましいリスクとリターンの水準で買えるのは、今のような時期だからです。また、Palantirの第1四半期の決算発表についても見ていきます。同社は、第2四半期の売上高の見通しが失望売りを誘い、プレマーケットで株価を下げています。さらに、基本的な事業に変更がない場合、金利上昇が株式のバリュエーションにどのような影響を及ぼすかについて説明します。


ハイテク株のセンチメントは急落

「シリコンバレーの投資家のセンチメントはITバブル崩壊以来最悪だ」というDavid Sacks氏による5月4日のツイートは、投資家が知るべきことを全て伝えています。我々が「バブル株」と呼ぶ高成長の赤字企業の株価は、2021年2月の高値から69%下落しています。当社のバブル株バスケットは基本的にパンデミック前の水準に戻っています。Zoom、Teladoc、PayPal、Pinterestなど、いくつかの銘柄で下げが大きく、暗号資産商品は流動性選好とテクノロジーのセンチメントを高いベータ値で表すということが示されてきました。キャッシュフローの割引率の上昇に伴い、バリュエーションが圧縮されているだけでなく、投資家の時間選好が変化し、従来よりも迅速な黒字化が求められるようになっています。

全てのテクノロジー株が同じ状態にあるわけではなく、下落したテクノロジー株の中には実際には黒字の企業もあります。下のリストは、2021年2月14日以降の株価の下落率が50%以上で、フリーキャッシュフロー利回りがプラスである米国上場の株式の一覧です。 ただし、以下のリストは投資の推奨を意図するものではなく、フリーキャッシュフロー利回りがプラスで急落してきた企業に焦点を当てるものです。今は多くの投資家が苦戦していますが、非常に魅力的な長期的な投資機会を見つけられるのは、往々にしてこのような苦しい時期なのです。

  • Teladoc Health(リターン: -88.6%、フリーキャッシュフロー利回り:4.95%)
  • Zoom Video(リターン: -77.8%、フリーキャッシュフロー利回り:5.2%)
  • Pinterest(リターン: -73%、フリーキャッシュフロー利回り:4.6%)
  • PayPal(リターン: -72.6%、フリーキャッシュフロー利回り:5.2%)
  • DocuSign(リターン: -71.7%、フリーキャッシュフロー利回り:3.0%)
  • Bumble(リターン: -71%、フリーキャッシュフロー利回り:3.3%)
  • Alibaba(リターン: -66.4%、フリーキャッシュフロー利回り:8%)
  • Etsy(リターン: -63.1%、フリーキャッシュフロー利回り:4.8%)
  • Baidu(リターン: -62.7%、フリーキャッシュフロー利回り:3.4%)
  • Rackspace(リターン: -60.6%、フリーキャッシュフロー利回り:12.9%)
     

 

以下の表は、当社のバブル株バスケットの現在の構成銘柄を示しています。

NameMkt Cap (USD mn.)12M Fwd EPS12M Fwd EV/SalesDiff to PT (%)5yr return (%)YTD return (%)
Lucid Group Inc30,271-1.0913.297.0NA-52.3
Cellnex Telecom SA29,281-0.1512.457.4228.2-20.3
Rivian Automotive Inc25,929-6.042.7155.0NA-72.2
NU Holdings Ltd/Cayman Islands24,2480.016.096.6NA-44.2
Seagen Inc22,722-2.5810.330.297.4-20.2
MongoDB Inc20,250-0.1815.355.4NA-43.4
SenseTime Group Inc20,062-0.0716.139.7NA-14.5
Unity Software Inc16,971-0.0910.3130.6NA-59.9
BeiGene Ltd16,673-10.486.0116.9288.1-45.6
Argenx SE16,369-17.6051.715.21,650.9-8.4
Alnylam Pharmaceuticals Inc16,280-4.4911.651.8141.9-20.5
Okta Inc16,054-1.068.0112.0336.9-54.3
Brookfield Renewable Corp13,0050.209.98.3NA0.7
Shanghai Junshi Biosciences Co Ltd12,664-1.0926.634.1NA1.3
Bill.com Holdings Inc12,616-0.3713.998.9NA-51.4
Grab Holdings Ltd11,532-0.373.385.6NA-57.8
Plug Power Inc11,221-0.427.4112.6804.9-31.2
Qualtrics International Inc10,4640.036.4101.4NA-49.2
Wolfspeed Inc10,000-0.029.745.7254.9-27.6
Robinhood Markets Inc8,823-1.078.245.2NA-43.0
Novocure Ltd7,653-0.5412.940.6494.9-2.5
SentinelOne Inc7,253-0.7113.089.9NA-48.3
Affirm Holdings Inc7,097-1.823.7143.7NA-75.2
Avalara Inc6,8900.026.857.6NA-39.3
Procore Technologies Inc6,777-0.708.661.0NA-37.5
Kingdee International Software Group Co Ltd6,700-0.057.460.7365.1-36.9
Confluent Inc6,605-0.699.1101.2NA-68.9
Guidewire Software Inc6,450-0.167.144.626.5-32.0
Biohaven Pharmaceutical Holding Co Ltd6,365-6.396.274.8312.7-34.5
Gitlab Inc6,254-0.9112.473.3NA-51.3
Elastic NV6,092-0.255.490.8NA-47.0
10X Genomics Inc5,804-0.797.885.6NA-65.6
Smartsheet Inc5,625-0.596.452.8NA-43.6
Samsara Inc5,625-0.247.8148.9NA-60.7
Monday.com Ltd5,550-2.858.787.8NA-60.0
Ginkgo Bioworks Holdings Inc4,810-0.209.3243.2NA-67.4
Asana Inc4,752-1.248.1112.7NA-66.5
Ascendis Pharma A/S4,730-7.7141.5114.1200.0-38.2
Guardant Health Inc4,008-4.567.3211.2NA-60.7
Intellia Therapeutics Inc3,608-5.7956.5187.3234.5-59.8
Aggregate / median464,0838.786.7271.5-44.9


Palantir株は期待外れの業績見通しで11%下落

Palantirも、2020年後半に株式公開された非常に人気の高いテクノロジー成長株であり、株価は2021年1月の45ドルの高値から5月6日には10ドル以下まで急落しました。米国政府と多くの契約を結んでいるビッグデータ分析企業である同社は、第1四半期決算を発表しました。第1四半期の業績は、営業損失を計上したものの売上高は前年同期比31%増と予想範囲内となりました。しかし、第2四半期の売上高の見通しが4億7,000万ドルと予想の4億8,700万ドルを下回ったことを受けて、プレマーケットで売られ、11%下落しています。営業利益率は改善していますが、割引率に関するバリュエーションの動きを考えると、市場の反応から判断して、投資家はもっと迅速な改善を望んでいると言えます(以下のセクションを参照)。

Source: Saxo Group

バリュエーションにおける割引率の動き

ベンチャーキャピタル投資家のBill Gurley氏は4月下旬に、世代全体の起業家やテクノロジー投資家がバリュエーションについて苦労して学ぶことになると述べ、その「学び直し」のプロセスは多くの人にとって苦痛と驚き、不安を伴う可能性があり、拒否反応が予想されると話しました。金利のような株式評価基準は一方向にのみ動いてきましたが、2020年後半から2021年初めに転換点を迎えました。金利上昇とインフレに伴い、バリュエーションの考え方自体が変化しつつあり、投資家は従来よりも迅速に黒字化できるビジネスモデルを求めるようになるはずです。

米国の金利変動が株式のバリュエーションにどのような影響を及ぼしているかを理解するために、非常に簡単な例を見てみましょう。一例として、十年間の売上高成長率が年率20%、NOPAT(税引後の純営業利益)の利益率が20%、増分収益あたりの再投資率が10%の企業(負債も営業外資産もない)があるとします。株式のリスクプレミアムは5%、当初のリスクフリーレートは0.5%です(2020年の米国10年債利回りに相当)。最終価値を含む将来フリーキャッシュフローの現在価値(継続価値の現在価値)は1,359ドルで、向こう一年間の予想フリーキャッシュフロー利回りは1.6%となります。リスクフリーレートが0.5%から3.2%に上昇し、その他は何も変わらない場合、この企業はどうなるでしょうか?将来キャッシュフローの価値は831ドルに下落し、株式のバリュエーション(一年間のフリーキャッシュフロー利回り)は2.6%になります。2.7ポイントのリスクフリーレートの変動に対して株式価値の下落は39%に相当し、株式のデュレーションは14倍ということになります。

株式のバリュエーションの動きを知っている人は誰でも、継続価値(最終価値)の重要性を理解しています。テクノロジー株の大幅な調整時にバリュエーションの変動を増幅する動きがあるのは、利益率や再投資率などの長期的な見通しの予想を投資家が引き下げ始めているということです。つまり、金利上昇は、将来キャッシュフローの現在価値のモデル化において複数の要因により増幅されるのです。

Source: Saxo Group
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