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Chief Investment Strategist
サマリー: ここ1週間には劇的な動きがあり、2023年6月のFRBのターミナルレートが1ポイント見直されて4%となりました。これを受けて、FOMCは、後手に回らないように、15日に続いて来月も75ベーシスポイントの利上げを実施する可能性が高いと見られます。株式市場では売りが再燃し、最近の弱気相場中の上昇局面による上げ幅が一掃されつつあります。暗号通貨は、「ステーブルコイン」の暴落や、最近の暗号資産貸出大手の問題で打撃を受けており、株式市場にも影響が波及しています。さらに今回は、ハイイールド債を取り上げ、大企業にとっても金融環境が厳しくなっている証拠としてNetflixに注目します。
S&P500が本格的に弱気相場入りした今回の下落局面は、VIX先物カーブが落ち着いて推移してきたという点で秩序が保たれており、2015年初頭からこれまでの世界株式市場の下落の多くとは違いました。しかし、13日の値動きでVIX Indexは34になり、VIX先物カーブは4月下旬の急落以来最も大幅な反転となりました。とはいえ、相場が突然崩壊し、非流動性とボラティリティのヘッジを原動力とする激しい売りに移行するほどの反転にはまだ達していません。しかし、13日の値動きは間違いなく投資家への警告となりました。
14日の相場では、S&P 500先物は暗号通貨とともに反発していますが、株式に対するリスクオフ心理の再燃の主因になっているのはおそらく暗号通貨だと見られます。というのも、暗号資産貸出の大手企業が出金を停止し(詳細については13日のエクイティノートを参照)、その後、13日の取引時間中に突然Binanceが出金を一時停止したことが、市場の動揺を招いたからです。ビットコイン市場は、まるで熱追尾式ミサイルのように、21,000ドルを目指してまっしぐらに進んでいました。この水準は、MicroStrategyが複数の債券の担保にしている多額のビットコインのポジションで追証が発生し始める水準として注目されていました。ビットコインが21,000ドルを割り込んだにもかかわらず、追証に関するニュースは出なかったことから、相場は反転し、ポジティブなリスクセンチメントが株式市場に波及しました。
このところ株式、不動産、暗号通貨、ハイイールド債などのリスクの高い資産が大きく変動している原因は、2023年6月までの予想FF金利から測定されるFRBのターミナルレートの見直しであるのは間違いありません。ターミナルレートが3%程度になることを織り込んでFF金利先物(以下のグラフを参照)の2023年6月限が最初に急落した後、4月~5月には相場はむしろ安定していましたが、わずか2週間余りでさらに1ポイント動いてターミナルレートは4%となりました。このような動きと根強いコアインフレを見て、FRBメンバー内では緊張感が高まってきました。というのも、15日の75ベーシスポイントの利上げに続き、来月にもさらに75ベーシスポイントの利上げを余儀なくされることで、短期の資金調達金利、さらには潜在的に長期金利にも大きな上昇圧力がかかり、株式のバリュエーションへの圧力が一層高まる可能性があるからです。
金利については、2028年4月償還、4.875%のNetflix債が93.345まで下落するなど、いくつか悪化の兆しが見られることに注意が必要です。これは、パンデミックによる緊迫状況が市場で最大限に高まった時期の安値よりわずか3.4%だけ高い水準です。300億ドルの経常収益を上げるNetflixのような大企業にとっても、クレジット市場に明るい兆しは見えません。しかし、株主資本よりも負債のほうが低コストであることから、Netflixはコンテンツ制作(最近は質が低下している)の資金調達に負債を利用することが増えています。その結果、Netflixは、営業キャッシュフローでは不可能だった制作の加速を実現することができました。Netflix債の利回り上昇は一般的な金利上昇の動きであるため、特別に心配はしていませんが、クレジット市場には注目しておく必要があります。世界のハイイールド債のスプレッドは今年大幅に拡大して約424ベーシスポイントとなり、警戒すべき約500ベーシスポイントの水準に迫っています。