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Chief Investment Strategist
サマリー: 昨年第4四半期はエコノミストやアナリストが来るべきリセッションの時期を巡り議論を繰り広げ、著名投資家のウォーレン・バフェットでさえ世界の株式市場が20%下落しても慎重姿勢を維持しました。しかし、今年に入って経済は再び勢いを取り戻し、グロース株を中心にアニマルスピリットの回復が株式市場の上昇を支えています。このところの上昇相場は債券利回りの上昇を吸収し、金利リスクがほぼ相殺されている可能性を示唆しています。ここから先の展開は、経済がリセッションを回避して持続的な回復を遂げるか、あるいは再びリセッション懸念が台頭するかが、鍵となります。
2023年は好調な滑り出しに
昨年10月に急激な金利上昇が世界の株式市場に与えるインパクトはピークに達し、市場は急速にリセッションリスクを織り込み、不透明なインフレ見通しや経済活動の減速が株式リスクプレミアムの拡大につながり、株式は下落するとのシナリオに傾きました。昨年第4四半期に投資会社バークシャー・ハサウェイが株式市場で目立った投資を行わなかったことからも、ウォーレン・バフェットやチャーリー・マンガーのような著名な投資家ですら同様のシナリオを支持していた可能性があります。投資家は「2023年のリセッション」を前に、新たに大きな賭けに出ることを恐れるようになったのです。ただ、年が明けると別のシナリオが待ち受けていました。
昨年の悲観的なシナリオに反して、長期債の利回りと期待インフレ率が切り下げる中、株式市場は年初から徐々に回復を遂げました。新たなシナリオが生まれるまでの道のりは決して平坦ではなく、昨年12月にはテスラ株や暗号資産を巡る懸念の高まりを背景に、株式市場が大きく売られる局面もありました。しかし、これらの懸念は今年に入って後退し、MSCIワールド・インデックスは年初来で8.3%、バブル株は27%上昇しています。グロース株ではその他にも来週の株式レポートで取り上げる予定のエネルギー貯蔵、半導体、eコマース関連の銘柄が年初から20%以上上昇しています。年初からの力強い上昇を踏まえると、テック株はこのまま長期的に上昇するのか、あるいはテック株の弱気なポジションの入れ替えによる短期的な上昇にとどまるのか、という疑問が湧いてきます。
当グループのシナリオは、「2023年第1四半期予想:株式市場:2023年は痛みを伴う転換期に」で述べた通りです:価値システムの二極化(独裁国家vs民主主義国家)による対立や、過去10年間続いたハイテクブームの陰で放置されてきたインフラの再構築が進む中で、有形資産が無形資産をアウトパフォームするという、痛みを伴う転換期を迎えます。当グループのテーマ別バスケット全体の過去1年間のモメンタムを比較した場合に防衛、再生可能エネルギー、コモディティ、原子力、物流、建設、輸送インフラ関連の銘柄が最も好調なパフォーマンスを上げていることも、当グループのシナリオに沿った変化が生じていることを裏付けています。
金利感応度の重要性は低下
当グループのアナリストが議論を繰り広げてきたトピックのひとつに、昨年の大きなテーマとなった金利感応度があります。まず最初の疑問は、米国10年債の利回りが再び3.8%まで上昇しているにもかかわらず、なぜ株式は足元の水準まで上昇しているのか、という点です。実際、金利水準が3.8%近辺にあった昨年9月、MSCIワールド・インデックスは現在よりも9%低い水準にありました。
リセッションが相場の鍵に
株式市場にとっての主なリスクは、「リセッション入りするかどうか」ということに他なりません。過去数か月にわたってお伝えしてきたように、米国の主要経済指標はリセッションは避けられない見通しです。ブルームバーグ・エコノミクスのモデルによると、昨年10月時点でアメリカ経済が1年以内にリセッション入りする確率は100%であると推定されています。一方、経済指標は引き続き堅調に推移しており、米経済はクレジット・ブームの最中にあり、キャタピラー社が最近行った決算カンファレンスで言及したように建設需要は持ち直しています。こうした中で、世界経済の再加速が中国の経済再開と重なることによって、インフレ圧力が強まり、長期国債の利回りが足元の水準から一段の上昇に向かう可能性が懸念されます。ただ、その場合も2023年に企業の利益マージンが極端に悪化しない限り、株式が15%~20%下落する可能性は低いと考えれます。