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Chief Investment Strategist
サマリー: 個人投資家が再びハイリスクな賭けに出る動きが強まる中、バブル株(投機的な成長株)は年初から20%を超える上昇を遂げてきました。こうした大規模な投機資金の流入は、短期オプション取引(ODTE)やAI関連銘柄の急騰、および暗号資産ブームの原動力となってきました。これらの投機的な取引は、いずれも市場が急速に高まりつつある地政学的リスクを見落とし、インフレ率正常化を既定路線として織り込んでいることで成り立っています。先週末に開催された「ミュンヘン安全保障会議 2023」で地政学的リスクの高まりが重要な課題として取り上げられましたが、今週は市場がこれらのリスクを見直す良い機会となるでしょう。本稿では、過去1年間にわたって当グループのテーマ別投資で圧倒的なパフォーマンスを上げている「防衛関連株」のバスケットに改めて注目します。
「AI株ブームの過熱」と「利下げ期待」の陰で見落とされるリスク
年初からの7週間は、投資家のマネーゲームに加えて、新たなテクノロジーへの飽くなき追求がもたらしたAI株ブームに賭ける個人投資家の参入が市場を動かしてきました。さらに、構造的なインフレ圧力を裏付ける証拠が相次いで確認され、世界がインフレ加速から逃れることのできない戦時経済に突入しつつある中で、投資家は依然としてインフレ正常化の時期を巡る無意味なゲームを続けています。テスラ株や短期オプションの投機的な買いを背景とする過剰流動性やボラティリティ上昇からも明らかな通り、個人投資家の投機的取引が再び勢力を増し、市場は現実から目を逸らしているようです。残念ながら今、世界は想像以上に暗い現実に直面しており、市場はそのリスクを見落としているに過ぎません。
市場は地政学的リスクを過小評価
先週末に開催された「ミュンヘン安全保障会議 2023」では、各国間の緊張の高まりが垣間見られました。米ポリティコはその内容を非常に的確に要約しています。主な課題のひとつに、NATO加盟各国が弾薬の生産や標準化で後れを取っていることが挙げられました。もし加盟国が標準的なルールを捨て去り、武器生産の承認プロセスを迅速化し、政府が資金・インフラの両面において武器製造を無制限に支援するようになれば、欧州は戦争経済のメンタリティにシフトする一歩手前であると言えるでしょう。また、カマラ・ハリス米副大統領は、「ロシアはウクライナ侵攻で人道に対する罪を犯した」と発言し、軍事支援を継続する姿勢を強調しました。さらに、ブリンケン米国務長官は「中国がロシアに殺傷力を持つ兵器の支援提供を検討している可能性を懸念している」と述べています。
今週はロシアがウクライナ侵攻を開始して1年になるほか、米中関係の悪化やミュンヘン安全保障会議での緊張感が相まって、地政学的リスクの高まりを実感する週になりそうです。もし中国がロシアに対する兵器の支援提供に踏み切れば、長らく続いたグローバル化は終わりを迎え、サプライチェーンは再び混乱に陥るでしょう。一方、FRBのエコノミストであるダリオ・カルダラ氏とマテオ・イアコビエッロ氏が作成した「地政学リスク(GPR)指数」は、ロシアのウクライナ侵攻が開始した時点に比べて、いかに地政学的リスクが低下しているかを示しており、足元の株式市場の楽観的なシナリオを下支えしていることが分かります。しかし、地政学的リスクについて視野を広げて捉えると、ウクライナ戦争が悪化した場合の潜在的なリスクが極めて高いことに気が付くでしょう。
株式市場は地政学リスクに対して常にネガティブに反応するものですが、ウクライナ・ショックの急落を経た後、株式市場は再び堅調さを取り戻し、完全に回復を遂げました。この傾向は第二次世界大戦など過去の戦争でも多く見受けられ、1950年~1953年の朝鮮戦争に至っては、株式市場に特に大きな影響は及ぼしませんでした。こうした事実は市場に安心感を与える要因となり得るものの、過去50年間続いたグローバル化によって世界経済は以前よりもはるかに緊密な相互依存の関係にあるということに留意すべきです。また同時に、人々の富や所得は、かつてないほど地政学的リスクに晒されています。地政学リスクが短期的にもたらす影響は当然ネガティブですが、構造的なインフレ圧力の強まりによって今後長期的に甚大な影響を及ぼす可能性も懸念されます。戦争経済が資源価格の高騰をもたらす中で、インフレ鎮静化に向けた闘いが繰り広げられています。
防衛関連銘柄の見通しは引き続き明るい
地政学的リスクが高まる中で有効なリスクヘッジ手法は、株式へのエクスポージャーの削減(キャッシュのウェイトを増やす)又は先物のショートポジションでマーケットリスクを軽減するか、あるいは防衛関連銘柄をポートフォリオに追加することのみです。当グループのテーマ別投資で防衛関連のバスケットは過去1年間で31%上昇し、パフォーマンス第2位の再生可能エネルギー銘柄(12%上昇)以上に長期的なリターンをもたらしています。また、この1年間繰り返し述べてきたとおり、欧州の防衛予算は今後2倍に膨れ上がる見通しであり、その効果は世界の防衛産業に波及するものと予想されています。防衛セクターは明らかにESGの観点に沿った投資テーマではありませんが、これは逆にESGの制約を受けない個人投資家にとって有利に働くでしょう。
防衛関連銘柄の一つである BAE システムズは2022年下半期(至2023年1月31日)の決算発表を今週木曜日に控えており、アナリスト予想では売上高が前年同期比 23%増、EPS は 250%増の 0.30 ポンドとなる見通しです。ただし、アナリストは来期以降の業績について総じて厳しい見通しを示しており、2023年と2024年通期の売上高の予想はそれぞれ3%および5%となっています。ただし、これは業績上振れ余地はかなり大きいことを意味します。