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Chief Investment Strategist
サマリー: 年明けの欧州と中国株式市場が反発して取引を終えた後、米株式市場は上昇しています。投資家は今年が2022年よりも明るい年となることを期待していますが、依然として多くの企業が利益率の圧迫や景気減速、インフレ等の懸念を抱えていることに変わりはありません。本稿では昨夜、予想を下回る第4四半期の納車台数を公表したテスラの動向に注目します。同社の公表を受け、EV需要を巡る懸念がさらに高まっています。
投資家のシナリオは年初の2週間で明らかに
年明けの市場では、S&P 500先物指数が日中高値で前日比1.2%上昇した後、現在同0.5%高で取引されています。新年を迎えて新たな期待が高まる時期ですが、市場を取り巻くインフレ、金利、地政学リスク、中国等を巡る懸念に何ら変わりはありません。2週間後に米国企業の第4四半期決算発表が始まりますが、重要なポイントは企業が2023年のガイダンスを下方修正するのか、また、営業利益率は引き続き逆風に晒されるのか、という点です。
昨年は、コモディティ、防衛、再生可能エネルギー、原子力発電、物流等の投資テーマに関連する銘柄のパフォーマンスが好調でした。今後2週間で投資家がこれまでのシナリオを維持するのか、あるいは2023年に絶好の投資機会を提供する新たなテーマが出現するのか否かが明らかになるでしょう。
テスラは需要低迷に直面しているのか?
第4四半期に発行したいくつかの株式レポートでも述べてきたように、テスラはバッテリー生産コストの上昇や欧州・中国での過剰な発電コスト等の問題に直面しています。EV需要の見通しは明らかに悪化しており、EV関連銘柄の株価にもすでに織り込まれています。テスラの株主は根底にあるトレンドに気付くのに少し後れを取ったものの、第4四半期に入って速やかにポジションを調整しました。テスラが昨夜公表した第4四半期の納車台数は40万5278台と、事前予想の42万760台および生産台数の43万9701台をいずれも大幅に下回り、生産台数と納車台数のギャップが拡大していることが確認されました(図表)。足元のギャップは、2023年施行のEV税控除を盛り込んだインフレ抑制法(IRA)によって需要が第1四半期に後ろ倒しされたことも要因であると考えられます。しかし、もう一つの要因として、欧州や中国での予想に反する需要の鈍化があり、この点についてはフォルクスワーゲン(VW)社の幹部も指摘しています。
テスラは昨年バッテリーコストの高騰を受けて度重なる値上げを余儀なくされましたが、リチウムイオン電池に必要なニッケルの価格は依然高止まりしています。価格改定と電力価格の高騰が相まって需要にネガティブな影響を及ぼしました。それでは、テスラは需要低迷という問題に直面しているのでしょうか?短期的には、その答えはイエスでしょう。同社は足元の需要に合わせて生産を調整する必要に迫られているからです。しかし、その一方でEV化は急激なスピードで進んでおり、その勢いはとどまるところを知りません。当社が作成した「EV闘争」のチャートからも見て取れるように、テスラは依然としてBYDや VWといったEV車の競合を制し、首位の座を維持しています。利益率の悪化や競争激化が待ち受けるなか、今年はテスラにとって厳しい年となる公算が大きいものの、自動車メーカーは今後も電動化を継続し、需要は拡大し続けるでしょう。ただし、テスラの第4四半期の納車台数が予想を下回ったことで、同社に対する投資家の警戒感は短期的に高まるものと予想されます。