口座開設は無料。オンラインで簡単にお申し込みいただけます。
最短3分で入力完了!
Chief Investment Strategist
サマリー: 2020年の安値以降続いてきた株式市場の「ハネムーン期間」は終わりました。株式市場は、極端な景気刺激策と大幅な金融緩和という体制から脱却し、利益およびバリュエーションが爆発的に高まっています。インフレが利益成長に打撃となること、地政学的リスクが現在のエネルギー危機を悪化させる可能性があること、金利上昇が株価のバリュエーションを圧迫していること、そして今年の中国の経済活動に関する不透明性が高まっていることなど、現在の体制には下振れリスクが数多く潜んでいます。これはすべて、株式に対するディフェンシブな姿勢が強まることを示唆しており、今後数ヶ月は厳しい状況になる可能性があります。
株式市場に潜む数多くのリスク
ロシアとウクライナの間の対立における発言が激化する中、先週は神経質な動きで終わりましたが、Biden大統領とPutin大統領との首脳会談の可能性が原則として合意されたとのホワイトハウスの発表を受けて、21日早朝には相場はすっかり明るいムードで始まりました。しかし、ロシア政府はすぐに、具体的な予定はないと発表し、最新情報を先取りするNasdaq 100先物は現在、1月の安値に近い水準で推移しています。下振れリスクに注意すべき重要な節目となるのは13,831の水準であり、21日の終値がこの水準を割り込むと、米国のテクノロジー株は更なる下落局面に入る可能性があります。
インフレ率の上昇により利益率が圧迫されること、金利上昇が将来のキャッシュフローの割引率の上昇を介してバリュエーションに影響すること、ウクライナにおける戦争が世界のエネルギー市場や商品市場を揺るがす可能性があること、今年は財政刺激策が大幅に縮小することから、一般に株式市場はマイナスの影響を受けます。株式市場は、20ヶ月間にわたり非常に好調に推移してきましたが、現在、大きく変化する経済的要因を織り込み始めています。Nasdaq 100先物は11月の最高値から17.2%下落しています。経済的背景に対して米国の金融環境が大幅に引き締められる前でさえも、このような状況になっています。
株式市場では21日朝、Biden大統領とPutin大統領との首脳会談の噂を受け、先走った買いが入りましたが、石油市場をはじめとするコモディティ市場の反応は遥かに鈍いものでした。ウクライナの地政学的リスクに関しては、現物コモディティ市場の方が現地での圧倒的に高い情報収集力を持っており、コモディティ市場は遥かに優れたシグナルになるため、株式投資家はノイズを排除するためにコモディティ市場を主要指標として利用すべきだと我々は考えています。
株式市場のリスクを見るもう1つの方法は、米国のインフレ率と株式益回り(PERの逆数)とのスプレッドを観察することです。現在のPERは、インフレ率とバリュエーションとの過去の関係に対するスプレッドが最も大幅なマイナスとなっています。このチャートの読み取り方はいくつかあります。第1に、投資家の想定では、インフレ率はすぐに2~3%まで低下してその水準にとどまり、それに応じてバリュエーションは急速に「安全圏」に戻ると考えられているということです。第2に、バリュエーションは基調インフレ率と大きくかけ離れているため、インフレがより構造的なものだという理解が市場で広まればすぐに、株価は一気にさらに15%下落する可能性もあり、それが理不尽ではないということです。中立的な解釈は、オレンジ色の点から回帰直線に向かって45度の角度で移動するというものです。これは、実現インフレ率が低下すると同時に長期インフレ予想が上昇することを示し、米国株はPERが低下する方向に株価が見直されるということになります。
今年は中国のテクノロジー株は苦戦
中国のテクノロジー株は18日、デリバリー企業の手数料引き下げを目的とする新たな政策を受けて、Meituan(美団)の株価が急落したことから、荒れた展開となりました。中国の主要なテクノロジー指数であるHang Seng Techは、21日もさらに下落し、2021年2月の週次の高値から49.5%の下落となりました。中国株式市場は全般的に、経済活動の減速、中国大手不動産開発業者に関する住宅危機の勃発、産業界の収益に影響を及ぼすエネルギー危機から打撃を受けています。さらに、大手テクノロジー企業の市場独占と反競争的行為を抑えることを目的としたテクノロジー規制も、テクノロジー企業の足かせとなってきました。こうしたことが中国のテクノロジー企業の深刻な成長鈍化につながっています。懸念材料は、テクノロジー業界に対する規制がまだ終わっていないことです。中国のテクノロジー株は割安に見えるかもしれませんが、10月に中国共産党の党大会が終わるまでは、中国のテクノロジー株は様々なネガティブな地合いに見舞われる可能性があるため、投資家にとって罠になる可能性が高いというのが我々の考えです。
2月21日からの週の決算発表と利益率の縮小
21日からの1週間には、当社が決算発表シーズン中に追跡する2,500社のうち、約200社が決算発表を行います。米国の決算発表シーズンはほぼ終了し、欧州株と中国株にステージが移ります。この週には様々な業種でいくつかの重要な決算発表があります。特に注目するのは、HSBC、Home Depot、MercadoLibre、Rio Tinto、Danone、Booking、eBay、Sant-Gobain、Alibaba、Block、Moderna、Coinbase、BASF、Amadeus IT、Li Autoの決算です。
Home Depotの決算発表は、今年に入って住宅ローン金利が100ベーシスポイント上昇する中でも過熱状態にある米国住宅市場に関連する重要なイベントです。MercadoLibreは南米最大のEコマース企業であり、当社のEコマースのテーマバスケットに組み入れられています。この分野は今年、下落圧力を受けてきたため、Eコマース企業には大きな注目が集まっています。Rio Tintoは鉱業分野の世界的企業であり、需供不均衡に関する新たな材料が示される可能性があります。Danoneは大手食品企業であり、個人消費者向け食品へのインフレ圧力についてヒントが得られる可能性があります。Saint-Gobainは通常は注目している企業ではありませんが、現在、建設資材の価格が高騰していることから、今回の決算発表は普段よりも注目を集めるでしょう。この週で最も重要な決算発表は24日のAlibabaです。同社の決算で、今後数週間の中国のテクノロジー株の基調が決まることになります。24日には、Block、VMware、Autodesk、Dell Technologies、Coinbaseなど、数社の米国のテクノロジー企業も決算発表を行います。
第4四半期の決算発表で最も重要なのは、純利益率が縮小傾向にあることです。MSCI World Indexでは、第4四半期に2期連続で純利益率が低下して10.8%となりました。これは、2003年初頭以来4番目に高い水準です。純利益率は長期平均の7.5%に向かって平均回帰を続けると予想されます。この水準はグローバル企業にとって3.3ポイントもの逆風であり、株価の下落圧力が高まると見られます。
2月28日からの週の最も重要な決算発表は以下の通りです。
月曜日:Williams Cos
火曜日:Hang Seng Bank、HSBC、ASM International、Norsk Hydro、Home Depot、Medtronic、MercadoLibre、Palo Alto Networks、Agilent Technologies、Mosaic
水曜日:Rio Tinto、Danone、Munich Reinsurance、Barclays、JDE Peet's、Iberdrola、Oversea-Chinese Banking、Lowe's、Booking、TJX、Stellantis、eBay
木曜日:Anheuser-Busch InBev、Royal Bank of Canada、Canadian Imperial Bank of Commerce、AXA、Safran、Saint-Gobain、Deutsche Telekom、Sun Hung Kai Properties、Hong Kong Exchange&Clearing、Anglo American、Lloyds Banking Group、BAE Systems、Alibaba Group、Intuit、NetEase、EOG Resources、Block (旧Square) 、Moderna、Newmont、Keurig、VMware、Autodesk、Dell Technologies、Monster Beverage、Coinbase、Zscaler
金曜日:BASF、Amadeus IT、Holcim、Swiss Re、Sempra Energy、Li Auto
土曜日:Berkshire Hathaway