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Chief Investment Strategist
サマリー: 欧州や中国におけるエネルギー価格の高騰が、電気自動車(EV)の需要にネガティブな影響を与えるとの懸念の高まりを受けて、グリーントランスフォーメーションは、過去1年間で最もパフォーマンスの振るわない投資テーマとなりました。この結果、先週は11%下落したテスラを筆頭に、EV関連銘柄の株式は総じて下落しました。テスラは受注残の消化を進めており、来年は需要の低迷を受けてEVメーカーが値下げを余儀なくされることで、各社の営業利益率や利益率の低下するリスクが懸念されます。
電力価格の高騰はグリーントランスフォーメーションの逆風に
先週はFRBとECBがタカ派姿勢を堅持したことで、11月10日に公表された米CPIをきっかけとする上昇相場を牽引してきたインフレ鈍化期待は大きく覆されることとなり、株式市場にとって厳しい展開となりました。なかでも欧州の株式市場は風力発電の発電量不足による電力価格の高騰に加えて、ECBのリセッションを前提とする金融引締め政策が市場のサプライズが追い打ちとなり、とりわけ厳しい状況に見舞われました。フォルクスワーゲンの部品部門のCEOがコメントしたように、欧州の電力価格の高騰は電気自動車(EV)の需要にネガティブな影響を及ぼし始めており、中国の電力価格の高騰もEV普及率の低迷につながっています。欧州と中国は、世界EV市場のシェアで上位2位を占めています。先週、当社のテーマ別バスケットの中でグリーントランスフォーメーションは5.8%減と最も下落し、年初来のトータルリターンは-50.7%とバスケットの中で3番目に低調なパフォーマンスとなりました。EV需要に対する懸念は、バスケット全体のパフォーマンスに影響を及ぼしています。電力価格の高騰は、グリーントランスフォーメーションを阻む逆風となるでしょう。
テスラ株は先週11%下落し、EV関連銘柄のモメンタムを下押し
GXバスケットのパフォーマンスを見渡すと、11%下落したテスラを筆頭に、EV関連株が全体を押し下げるパターンが明らかに見て取れます。需要と供給の決定要因が変化していることを背景に、米国ではテスラの受注残が急速に減少しています。テスラは生産拠点を拡大してきましたが、電力価格の高騰による欧州や中国からの需要減で生産能力は頭打ちとなり、加えて中国ではコロナ禍のロックダウンが需要を下押しする要因となりました。米国ではインフレーション抑制法(IRA)の施行に伴い、EV車両を購入する際に1台当たり最大7,500ドルの税額控除が受けられるようになりますが、2023年以降の適用となるためEV車の需要に寄与するのは来年にずれ込む見通しです。このなかテスラは需要を維持するために、来年は値下げを余儀なくされる可能性があります。同社がその生産能力をフルに活用しつつ値下げに踏み切るならば、2023年に粗利益率は低下し、同社の利益を圧迫するでしょう。こうしたシナリオは、アナリスト予想には織り込まれていないようですが、個人投資家が引き続きテスラ株を買い越すなかで、すでに一部の機関投資家はリスク回避のためにエクスポージャーを減らしはじめています。テスラの株価は150ドルをわずかに上回って先週の取引を終え、2020年後半に形成した上昇フラッグに近い水準で推移しています。