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Chief Investment Strategist
サマリー: 6月24日に、Zalandoの株価は13%下落し、2014年以来の安値を付けました。エネルギー価格と食料価格の高騰が欧州の消費者を直撃する中、同社では売上高の伸びが大きく鈍化しているためです。物流コストの高騰も利益率の足かせとなっています。Zalandoはバリューチェーン全体を管理しているわけではないため、小売企業として圧迫されています。当社の「Eコマース」テーマバスケットは過去一年間で65%下落しており、パフォーマンスは「暗号資産・ブロックチェーン」テーマバスケットを若干上回っているだけです。また、一層の株価反発の一因となった23日のドイツの2年債利回りの歴史的な動きについても見ていきます。
Eコマースの終わりなき苦境
先日、生活費の危機によりリコール率が通常より高くなったとして、Asosが業績見通しを引き下げたことについて述べました。23日の引け後には、Zalandoが業績見通しの引き下げを発表し、第2四半期の売上高の伸びがアナリスト予想を大幅に下回ること、そして通年の売上高成長率の予想を従来の12~19%から0~3%に引き下げることを明らかにしました。消費者信頼感にも表れているように、マクロ経済状況の悪化により消費活動が予想外に落ち込んだことが示されました。通年のEBITの見通しレンジは1億8,000万ユーロ~2億6,000万ユーロに引き下げられ、予想の3億6,100万ドルを大幅に下回りました。Zalandoの株価は24日の取引で13%下落し、IPO直後の2014年後半以来の安値を付けました。Zalandoでは、第1四半期に、直近12ヶ月のフリーキャッシュフローがマイナスに戻りました。
Eコマースは、労働需給の逼迫による賃金上昇圧力や物流コストの上昇から大きな打撃を受けますが、バリューチェーン全体を管理していると、対処する余地が小さいことも、小売企業の極めて難しい点です。テーマバスケット全体を見ると、Eコマースは過去一年間のパフォーマンスが最下位に近く、「暗号資産・ブロックチェーン」テーマバスケットを若干上回っているだけです。期待が下がりきっている今、Eコマース株の底打ちがいつになるかがますます気になる問題になります。
悪いデータが好材料に
23日の債券市場は歴史的な動きとなりました。ドイツの2年債利回りは25ベーシスポイントと大幅に低下し、2005年以降で二番目に大きな下げ幅となりました。また、米国の2年債利回りは取引時間中に18ベーシスポイントも低下した後、再び上昇に転じました。金利は既にコモディティ価格の下落に応じて多少反転しており、景気見通しの悪化を示唆していました。しかし、23日に金利が異例の動きとなったのは、米国と欧州のPMI(購買担当者景気指数)速報値で予想を上回るペースの鈍化が示されたことで、安全資産に資金が流入したためだったと見られます。米国の総合PMIは5月の53.6から51.2に低下し(予想は53.0)、欧州の総合PMIは5月の54.8から51.9に低下しました(予想は54.0)。予想外だった要因はサービス業です。24日に発表されたZalandoの予想外の下方修正にも表れているように、サービス業は消費者心理の悪化から打撃を受けていると見られます。
金利低下とコモディティ価格の下落は、株価にはプラス材料です。金利低下は資本コストの減少を意味し、これは将来フリーキャッシュフローの現在価値にプラスとなります。また、コモディティ価格の下落は利益率への圧力を和らげることになり、他の条件が同じならばフリーキャッシュフローは増加します。そのため、今のところは、悪いデータは株価にプラスとなっています。今後の業績予想に目を向けると、コンセンサスはあまりにも楽観的すぎます。また、株価には、たいてい予想を上回るインフレだけが織り込まれ、景気後退は織り込まれていません。そのため、景気後退が市場参加者全員に明らかになれば、株式市場は下落すると我々は予想しています。