EUは2016年、積極的な租税回避やタックスプランニングへの対策に「非協力的」とみなされる国や地域を特定する、EUタックスヘイブンブラックリストを導入しました。これは、政治家やスポーツ選手を含む富裕層による課税逃れの問題を浮き彫りにした、数百万件の文書を含む「パナマ文書」を受けたものでした。しかし、このブラックリストでは、ロビー活動等によってリスト掲載を逃れた、大規模なタックスヘイブンもあります。こうして世界のタックスヘイブンは繁栄し続けるのです。タックスヘイブンを活用しているのは個人富裕層だけではなく、プライベートエクイティやベンチャーキャピタルなども、オフショア・フィーダー・ファンドのようなタックスヘイブンを活用した手段により、税制の異なる国々に居住する外国人投資家から資金を集めています。2023年に戦時経済心理が強まると、国家安全保障の焦点は産業政策と国内産業の保護となり、ますます内向きになります。防衛費、リショアリング(海外事業・資産の国内回帰)、エネルギー転換への投資には費用がかかるため、政府は、利用可能な全ての潜在的税収源を特定し、その中でもタックスヘイブンを利用した課税逃れといった、容易に特定出来る課税対象をターゲットとします。タックスヘイブンを通じて法人税を逃れている課税所得は年間5,000億ドルから6,000億ドルにのぼると推定されています。
タックスヘイブンの経済効果は極めて小さいという経済アドバイザーからの助言に基づき、OECDは2023年にタックスヘイブンに対する、より積極的な姿勢に移行することに合意し、ケイマン諸島、バミューダ、バハマ、モーリシャス、マン島など世界最大級のタックスヘイブンを全面的に禁止します。この禁止措置は、OECD加盟国における企業買収は、タックスヘイブンからの資本では行えず、OECD加盟国または資本に関するOECDの透明性基準(自動的な情報交換、受益者登録、国別報告など)に準拠する国からしか実行できないことを意味します。米国では、キャピタルゲインとして課税されていたキャリードインタレスト(プライベートエクイティやヘッジファンドの運用者の報酬)も、給与所得として課税されることになります。EUのタックスヘイブン禁止と、米国のキャリードインタレスト課税ルールの変更は、プライベートエクイティとベンチャーキャピタル業界全体に衝撃を与え、エコシステムの多くは機能不全に陥り、上場プライベートエクイティ企業の企業価値が50%低下するといった状況に直面するでしょう。
市場へのインパクト: iShares Listed Private Equity UCITS ETFは50%下落します。