グローバリゼーションが後退し、長期的なエネルギー需要が満たされない状態が続く限り、インフレを抑制することは引き続き困難です。
ほぼすべての戦争で価格統制や配給制が実施されてきており、それは戦死者が出るのと同様に避けられないことのように思われます。少なくともその前例は、紀元3世紀後半にローマ皇帝ディオクレティアヌスがすべての商品に価格上限を設定しようとしたところまで遡ることができます。過去1世紀余りの間に、私たちは2つの世界大戦で包括的な価格統制と配給制を経験しました。また、戦時以外でも、英国のウィルソン首相や米国のニクソン大統領による国家主義のピーク時には、価格統制や賃金統制さえも実施されました。
2022年には、インフレをコントロールするための早急かつ場当たり的な取り組みもみられました。エネルギー企業の利益に対する課税が広く行われていますが、政府は古典的な手段である供給量の制限を怠っています。その代わりに、消費者に対して暖房や電気料金の上限を設定することにより、過剰な需要を積極的に補助しています。フランスでは、これは電力会社が倒産し、国有化されなければならないことを意味します。そのツケは政府に回り、インフレを通じて通貨にも影響が及びます。そして、12月5日からロシア産のエネルギー価格に上限を設けるという、西側諸国政府当局にとって破滅的な取り組みがなされます。その意図は、ロシアから収入を奪い、原油の輸出価格を引き下げることですが、おそらくそのどちらも実現しないでしょう。
戦時経済下では、物価圧力により安定が脅かされる限り、政府の手は容赦なく広げられます。政策立案者の間では、物価の上昇は市場の失敗を示唆しており、インフレによる経済・社会の不安定化を回避するためにさらなる介入が必要と考えられています。2023年には、物価や賃金の統制が拡大し、英国や米国で設立された物価・所得に関する国家委員会のようなものが設置されるかもしれないと予想されます。
しかし、その結果は、ほとんどすべての政府の政策と同様に、意図せざるものとなるでしょう。根本的な問題を解決することなく価格を統制することは、一段のインフレ上昇につながるだけでなく、生産意欲の減退による生活水準の低下や、資源や投資の配分の誤りによって、社会構造を破壊する危険性があります。市場原理が働く価格のみが、投資による生産性・効率性の向上を実現することが出来るのです。2023年以降、私たちはもう一度、この教訓を学ばなければならないようです。
市場へのインパクト:
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