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スティーン・ヤコブセン
最高投資責任者(CIO, Saxo Bank A/S)
サマリー: モデルの破壊とは何を意味するのか。ぜひスティーンのエグゼクティブサマリーをご覧ください。
2023年第1四半期見通しのレポートを発行するにあたり、Saxo Bank A/Sの最高投資責任者(CIO)であるスティーン・ヤコブセンは、「簡潔に言うと、経済モデルや市場サイクルのメカニズムにおける前提は崩壊している」と述べています。しかし、1998年にグリーンスパンFRB議長がLTCMを救済して以来、各国中銀がモラル・ハザードを助長し、富裕層や不労所得生活者、そして成功を求めるリスクテイカーらを財政援助するといった、これまですべての景気サイクルで繰り返されてきた古い「モデル」にあえて戻る必要はあるのでしょうか?パンデミック、そしてロシアのウクライナ侵攻後のこの新しい時代には、財政支援や資産価格の上昇を超えた、全く新しい政策が必要性とされています。今、私たちはサプライチェーンの国内回帰と最適化を促進し、エネルギーシステム改革によって化石燃料への依存度を減らし、気候変動抑制する傍ら、長期化するインフレに備える必要に迫られています。しかし、それらの取り組みは、すべての資産に打撃を与えるわけではありません。それどころか、むしろ逆に生産性向上を目指した投資の回復を促し、より明るい未来をもたらすことでしょう。
生産性向上に向けた資本の活用を復活させるためには、市場の寡占化やユーザーの興味を引きことで超過利潤を生みだすデジタルプラットフォームに資金を投じる代わりに、目に見える資産への投資を通じて、サプライチェーンの再構築や資源へのアクセスを提供する枠組みを実現する必要があります。株式戦略責任者であるピーター・ガンリューによると、「有形資産を取り扱う企業の株式が過去数十年にわたってアンダーパフォームを続けてきた流れに終止符が打たれ、今後は無形資産や金融ビジネスが過去数十年に及ぶ過剰な金融化の時代を経て、アンダーパフォームし始める」可能性があるとしています。また、サプライチェーンの分散・多様化に伴い、今後最も注目される地域についても考察しています。
マクロ分析責任者であるクリフトフ・ダンビは、EUが安価なエネルギー資源の脱ロシア化を果たした結果、ヨーロッパは最悪の事態を免れることができたと指摘しています。新たな世界秩序が生まれる中で、最も困難な課題に直面している欧州には、リスクと機会の両方が待ち受けていますが、地域に広がる危機感によって急速な変化がもたらされるものと予想されます。また、欧州は最大の貿易相手国である中国の経済再開による恩恵を享受するでしょう。中国担当マーケット・ストラテジストであるレドモンド・ウォンは、中国政府がゼロコロナ政策や、習近平政権の象徴と考えられていた不動産やテクノロジーセクターの規制強化を一転して緩和したことを受け、中国株式の優れた投資機会について考察しています。また、シンガポールを拠点とするマーケット・ストラテジストであるチャル・チャナナは、その他のアジア地域の市場について取り上げ、各国の株式市場の相対的な価値を分析し、「インドや伝統的な輸出企業は中国からの新たな需要に加えて、生産性の向上およびサプライチェーンの多様化に向けた中国とOECD諸国による投資強化の両面から恩恵を受けるだろう」と述べています。
また、商品市場に関してはコモディティ戦略責任者であるオール・ハンセンは「世界最大のコモディティ消費国である中国経済がロックダウンから本格的な回復を遂げ、特にグリーンエネルギー用金属への投資の加速を背景に、工業用金属の強気相場が長期的に継続する可能性がある」と指摘しています。また、中国の原油需要はロックダウンの終了に伴う航空交通量の正常化によって、数年ぶりの高水準に拡大するものと予想されます。一方、供給面ではロシア産原油の禁輸措置が継続し、これまで行われてきた米国の高リスクかつ大規模な戦略石油備蓄(SPR)放出の大半が終了することが重石となるでしょう。 金は、足元のドル安の進行に加えて、外貨準備を維持しつつ米ドル中心の通貨システムから貿易をシフトすべく米ドルの代替となる通貨を模索する国が増加する流れによって恩恵を受ける可能性があります。豪州を拠点とするマーケット・ストラテジストであるジェシカ・アミールは資源大国である豪州の投資機会に注目し、電気自動車(EV)用バッテリーのサプライチェーンから鉄鉱石や金まで、多岐にわたる分野において有望視される豪州の資源会社をリストアップしています。
欧州を中心とした終わりなきゼロ金利政策(ZIRP)やマイナス金利政策(NIRP)の後、プラス金利へのシフトが本格化しつつある中、ピーター・シクスは、伝統的なバランス型ポートフォリオが予想をはるかに上回る期待リターンを提供すると述べています。2022年は、伝統的な「株式6割・債券4割」ポートフォリオの名目リターンが過去最悪の年となったことを考えると、これはやや皮肉なことと言えるでしょう。
FX戦略責任者であるジョン・ハーディーは、今年、米ドルが一段と下落する可能性があり、日本が今年前半に量的緩和政策からの出口を迎え、各国中銀の金融引き締め政策に遅れて参加すれば、急速な円高が進行すると予想しています。最後に、暗号資産ストラテジストであるマッズ・エバーハートは、暗号、特に小規模な暗号通貨は、今後数年間で機関投資家の参加が厚みを増すにつれて、長期的には明るい見通しも期待できる一方、個人投資家の投資は減速し続けており、さらなる困難が待ち受けている可能性を指摘しています。
2023年がすべての投資家にとって安全で豊かな年となることを願っています。 私たちは、金融市場と世界経済は新しい時代を迎えていると確信しています。これは容易なプロセスではありませんが、「グレート・トランジション(大いなる転換期)」は、古い前提を捨て去り、自らの投資や努力によっていかに新たな世界に貢献できるかを考える人々にとって必ず、素晴らしい投資機会をもたらすことでしょう。