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コモディティ戦略責任者(Saxo Group)
サマリー: コモディティセクターは5週連続の上昇となり、Bloomberg Commodity Indexは、2021年10月に付けた7年ぶりの高値に迫りました。リターンの原動力となったのは工業用金属であり、LMEX Indexは、中国の景気刺激策と世界的な在庫減少を受けて最高値を付けました。石油は7年ぶりの高値を更新した後、もみ合い局面に入りました。一方、貴金属市場は引き続き予想外の展開となり、銀とプラチナの急騰により金価格が支えられ、金は2カ月ぶりの高値を付けました。
コモディティセクターは5週連続の上昇となり、Bloomberg Commodity Indexは、2021年10月に付けた7年ぶりの高値に迫りました。リターンの原動力となったのは工業用金属であり、LMEX Index(ロンドンで取引されている主要な工業用金属6種から構成される)は、中国の景気刺激策と世界的な在庫減少を受けて最高値を付けました。貴金属市場は引き続き予想外の展開となり、銀とプラチナの急騰により金価格が支えられ、金は2カ月ぶりの高値を付けました。インフレ抑制のために今後数カ月にわたりFRBが積極的な措置を講じることが市場で織り込まれる中、米国の実質利回りが引き続き上昇するという逆風にもかかわらず、こうした動きが起こっています。
エネルギーセクターは強弱まちまちの動きとなりました。原油は5週連続の上昇となりましたが、7年ぶりに高値を更新した後は、利食い売りともみ合いの動きが始まりました。これをきっかけに、短期的および長期的な調整局面に入る可能性があります。しかし、基礎的なファンダメンタルズは相変わらず良好であるため、大幅な下落のリスクは限られているように思われます。一方、天然ガスは欧米で急落しました。これは、米国で穏やかな気候が続いていることや、LNGが欧州に順調に到着していることから、ウクライナ国境沿いでのロシアの攻撃的行動による価格上昇リスクが相殺されたためです。
Bloomberg Agriculture Indexは、小麦、大豆、砂糖、綿花の上昇をけん引役として上放れし、2016年以来の高値を付けました。世界最大の穀物輸出国であるロシアとウクライナの間の緊張が高まり、供給への影響が懸念されることを背景に、シカゴおよびパリで小麦先物が上昇しました。エジプト、トルコ、アルジェリア、中国などの国々からの旺盛な需要に加えて、物流の混乱が更なる価格急騰を招く可能性があります。
砂糖や大豆などの他の食糧コモディティについては、燃料価格の高騰により、農産物をバイオ燃料に転換することの魅力が高まり、価格が下支えされています。ニューヨークで取引されている粗糖先物は、ロングポジションを縮小するファンドの投機的な売りが数ヶ月続いた後、週足で12月以来最大の上げ幅となりました。一方、シカゴの大豆油先物およびマレーシアのパーム油先物は史上最高値付近で売買されています。
こうした動きと肥料価格の高騰が相まって、過去14年間で最高水準となっている食糧インフレはすぐには低下しない見通しが強まっており、そのため、中東や北アフリカの最大の輸入国の経済が更に圧迫されています。欧州では、エネルギー危機が大陸全土にわたる肥料危機に直結しています。この危機の中、異常な高価格や供給不足により、農家は肥料を減らさざるを得ず生産量が低下したり、消費者にコストを転嫁したりする可能性があります。欧州は、生産プロセスの主要エネルギーであるガスの高騰を原因とする肥料工場の削減から、最も大きな打撃を受けています。
貴金属は2週連続の上昇となり、金価格は1,830ドルを突破した後、引き続き買われました。こうした動きの一方で、米国10年債実質利回りはサイクルの最高水準まで上昇した後、金曜日には0.54%低下しています。最近の動きは、FRBが示唆している一連の利上げがインフレ抑制に十分効果的だとの見方から市場がインフレ予想の低下を織り込んでいることに反応したものですが、この見方は間違っていると我々は考えています。こうした動きは全て、株式市場のリスクの高まりと欧州の地政学的懸念を背景に、債券がショートカバーにより上昇している中で起こっています。ここ1週間にコモディティセクターで最も高いパフォーマンスをあげたのは、銀とプラチナでした。これらは金と比べて数週間にわたりアンダーパフォーマンスを続けていましたが、ともに7%以上上昇し、金との差は縮小しました。金価格は今後、下値支持ラインとして1,830ドル、上値抵抗ラインとして1,850ドル、次いで11月の高値1,877ドルを目標に推移することになるでしょう。
工業用金属セクターは、在庫の急減や供給の混乱の見通し、および中国の景気刺激策による価格上昇の期待を背景に急上昇し、史上最高値を付けました。再びニッケルがけん引役となり、十数年ぶりに1トン24,000ドルに達しました。また、数量ベースで最小の金属であるスズが新高値を付けました。リチウムやコバルトと並んで電気自動車のバッテリー製造に不可欠な金属の1つであるニッケルは、ロンドンや上海の取引所が監視する在庫が減少し続けていることから、2007年以来の需給逼迫に直面しています。さらに、ウクライナ情勢の緊迫化により、インドネシアと並ぶニッケルの主要産出国であるロシアからの輸出が途絶える可能性も高まっています。
銅価格は、最近、上値の突破に失敗した後、横ばいで推移しました。銅については、電力需要の増加や需給逼迫の見通しを背景に、我々は強気の見通しを維持しています。また、中国が景気減速に対応して政策を強化している兆候があり、これにより、特に苦境にある中国の不動産セクターに起因する最近のマクロリスクが相殺されることもプラス材料です。
ブレント原油で1バレル90ドルの節目が抵抗ラインになったこと、また米国の原油在庫が8週間ぶりに増加し、ホワイトハウスが戦略備蓄からの放出を加速する見通しを発表したことを受けて、1ヶ月にわたる原油価格の上昇は減速する兆しが見られました。しかし、石油市場は依然として非常に逼迫しています。世界的なオミクロン株の感染拡大が需要に及ぼす影響は限定的であることから、供給が需要になかなか追いつかない状況です。
特に大きな懸念材料は、OPECプラスが増産を示唆しているにもかかわらず、増産目標の達成に苦戦することになるのではないかということです。特にナイジェリアとアンゴラでの問題が原因で日量40万バレルの月間の増産が達成されなかったように、ここ数カ月間はOPECプラスの過剰な遵守が目についていました。最近では、ロシアを含む数ヵ国も生産上の問題に直面し、目標を達成できていません。
OPECプラスの原油の割当量と実際の生産量との差が拡大していることが最大の上昇圧力となっていることに加え、需要の増加と余剰生産能力の減少が見込まれることから、年内に1バレル100ドルに達するリスクが引き続き高まっています。IEAが1月の最新の石油市場レポートで強調していたリスクです。その中で、IEAは、石油需要へのオミクロン株の影響は軽微であることが分かり、石油市場は従来予想よりも逼迫しているようだと指摘しました。
世界の石油需要はすぐにピークをつけることはないと予想されます。そのため、既に毎月減少している余剰生産能力は一層圧迫され、更なる価格上昇のリスクが高まる見通しです。こうした状況は、石油市場に対する当社の長期的な強気の見方を裏付けています。大手石油会社が既に削減した設備投資の一部を低炭素エネルギーの生産に分散する中、石油市場は今後数年間にわたり投資不足に直面することになるはずです。
先に述べたように、石油市場は短期的には最近の大幅な上昇を調整する必要があり、それを念頭に置くと、小幅な下落のリスクが生じていると言えます。ブレント原油は、WTIと同様、下値支持ラインの選択肢がいくつかあります。まず85.50ドル、続いて83ドルが下値支持ラインとなり、その後は、直近の急騰局面の高値から38.2%戻した水準である81.80ドルが重要な節目となります。これほど下落する可能性は低く、もしそうなれば新たなロングポジションを積み増すチャンスとみなされそうです。