消費財株:歴史的なエネルギーコスト高により打撃

消費財株:歴史的なエネルギーコスト高により打撃

株式
Peter Garnry

Chief Investment Strategist

サマリー:  一般消費財セクターは金融危機以降、勝ち組の一角を占めていましたが、金利上昇とエネルギーコストの高騰により、消費者はクレジット消費と(生活必需品ではない)一般消費財消費に振り向けうる所得に「課税」されつつあります。こうした動きは欧州で冬場にかけて強まり、悪化するとみられ、複数のセルサイド企業が既に一般消費財銘柄の目標株価を引き下げています。本稿では、一般消費財関連企業10銘柄を取り上げ、世界的なエネルギー危機へのエクスポージャーについて投資家に検討を促したいと思います。


エネルギーコストの高騰は消費への大幅な「課税」に相当

当社の先日の株式レポート「有形資産の反撃が始まる」では、2008年4月から2020年10月にかけて、無形資産主体の業種群がいかに大きくアウトパフォームしてきたかを紹介しました。一般消費財はこの大きなトレンドの一部でしたが、世界的なエネルギー危機、特に欧州のエネルギー危機は今後、消費財株にマイナスの影響を及ぼすことになると思われます。Thunder Said Energyによると、世界のGDPに占める一時エネルギーコストの割合は、2021年の6.5%から14%に上昇しています。これは、GDPに対する7.5パーセンテージポイントの課税に相当し、家計は他の支出を削減せざるをえません。経済の最も脆弱な部分は、マズローの欲求5段階の最上位(自己実現欲求)に位置する活動であり、メディア&エンターテイメントや一般消費財がそれに該当します。
FRBは、インフレが当初考えられていたような一過性のものではないとの判断から2021年11月に金融政策の転換を発表しましたが、世界の一般消費財株はその時点のピークから今年6月にかけて世界株式全体に対して20%下落した後、さらに13%下落しました。当初、アンダーパフォームしていたのは、金利上昇により株式バリュエーションが低下したためで、金利を要因としたものでした。金利上昇は、消費者ローンなどを通じて消費にも影響を与えますが、理解すべき重要なポイントは、エネルギー危機の影響が、一般消費財銘柄の株価に十分に織り込まれていないということです。一般消費財や金融危機以降、大きくアウトパフォームしてきましたが、家計が圧迫される中、需要の大幅な冷え込みが予想され、複数のセルサイド企業が欧州の一般消費財銘柄の目標株価を大幅に引き下げています。
 
MSCI Consumer Discretionary / MSCI World | Source: Bloomberg

フランスの高級品と自動車産業が要注意

一般消費財の中で最も大きな打撃を受けるのは欧州の高級品業界でしょう。次が世界の自動車業界ですが、EVの普及により、テスラが需要破壊の影響からどの程度免れるかが大きな注目課題となっています。エネルギー税は、消費者株には不利ですが、世界のエネルギー企業には有利であるため、以下に大手エネルギー企業10社を挙げました。

世界の10大一般消費財企業

アマゾン
テスラ
LVMH
ホーム・デポ
アリババ
トヨタ
マクドナルド
ナイキ
美団
エルメス・インターナショナル

欧州の10大一般消費財会社

LVMH
エルメス・インターナショナル
クリスチャン・ディオール
フォルクスワーゲン
インディテックス
エシロールルックスティカ
リシュモン
ケリング
メルセデス・ベンツ
BMW

世界の10大エネルギー企業

エクソンモービル
シェブロン
リライアンス・インダストリーズ
シェル
コノコフィリップス
トタルエナジーズ
中国石油天然気(ペトロチャイナ)
エクイノール
BP
 

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