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欧州の防衛備蓄:より多くの弾薬を備蓄か、はたまた火力不足か?

株式
ヤコブ・ファルケンクローネ

グローバル投資戦略責任者

主なポイント

  • 長期的な投資機会:欧州の防衛セクターは、短期的な上昇だけでなく、欧州での軍事支出の増加と防衛の自律性の向上に向けた戦略的政策の転換に牽引されて、構造的な強気サイクルの始まりにある可能性があります。
  • バランスの取れた投資アプローチ:分散化されたアプローチにより、投資家はリスクを管理しながら、防衛セクターの潜在的な成長へのエクスポージャーを得ることができます。
  • 慎重な姿勢:成長のポテンシャルは高いものの、このテーマの銘柄はすでに大幅に上昇しており、バリュエーションが割高で地政学的リスクが高い中で、この勢いがいつまで続くのかという疑問が生じています。

「戦場でもポートフォリオにおいても、時に、一番の攻撃手段は強力な防御であることもあります。」

月曜日、英国、フランス、そして欧州全域の首脳がウクライナへの継続的な軍事支援を約束したため、欧州の防衛関連株は急騰しました。今週末、ロンドンで開かれた重要な会議で、英国のキア・スターマー(Keir Starmer)首相は、欧州諸国が平和確保の責任を主導し、米国を巻き込むことを求める「有志連合」の形成に向けた進展について発表しました。この発表は、トランプ米大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との緊迫したやり取りのわずか数日後に行われ、安全保障の独立性を高めるための欧州諸国による推進に緊急性が加わりました。

防衛関連企業の株式は、この楽観主義的な動きをすぐに価格に反映させました。欧州の主要防衛関連銘柄は急騰し、投資家の熱意が高まる中、主要企業の株式は前日比大幅なプラスでその日の取引を終了しました。ストックス欧州(Stoxx Europe)航空宇宙・防衛セクター指数は、欧州全域で防衛費の増加が大きく期待される中、1日で8%以上上昇し、2020年11月以来最大の上昇を記録しました。

火曜日、トランプ米大統領がウクライナに対する米国の軍事援助の一時停止を発表したことで、新たな不確実性が浮上しました。この決定により、欧州諸国は自国の軍事支援を強化することを余儀なくされ、欧州の防衛関連株がさらに上昇する可能性があります。

「現在の地政学的な状況は、欧州全体で軍事支出を増やす明確な必要性を駆り立てています。この動きは、防衛予算を強化するだけでなく、欧州の防衛企業が業界のグローバルリーダーとして一歩前進する道を開くことにもなります。」

防衛セクターは以前から投資家の注目を浴びていましたが、最近の動向では、この上昇が続くのか、それともピークに近づいているのかという重要な問題が焦点になっています。

株価の力強い上昇の原動力は何でしょうか?

欧州の防衛関連株の力強い上昇は、地政学的な緊張だけを要因として引き起こされたわけではありません。ウクライナで進行中の戦争や米国の外交政策をめぐる不確実性が一因であることは間違いありませんが、この急増は欧州の防衛政策のより広範な変化によっても支えられています。米国がウクライナへの軍事援助を一時停止するという最近の発表により、欧州諸国の防衛に関する自治への注目が強まっています。多くの欧州の政府は、国防費を大幅に増やす用意があることを示しており、中には予算をGDPの3%まで増やすことを目指している国もあります。このように防衛支出に関する政策が現在の水準からシフトする可能性は、このセクターに大きな勢いをもたらし、防衛関連銘柄にとって強い追い風となる可能性があります。

さらに、当セクターに対する投資家の関心は、単に反応的なものではありません。欧州諸国が軍事力を強化し、米国の防衛システムへの依存を減らすことを目指す中で、多くの国々が長期にわたる成長局面を予想して、早期に態勢を整えてきました。この傾向は、欧州理事会が国防費の増加に対応するための財政ルールの緩和に関する議論を行っていることからも見てとれるように益々支持されており、防衛企業が繁栄するためのより支援的な環境が生まれるでしょう。

過去1年間で、サクソバンクグループの防衛テーマに含まれる銘柄のバスケットは73.88%と非常に素晴らしいリターンを達成し、同期間に16.17%上昇したベンチマーク(MSCIワールド)を大幅に上回り、同セクターの強力な勢いが表れています。このバスケットは業界の主要企業8社を対象としており、投資家はこのバスケットに含まれる銘柄を参考に投資をすることで、個別銘柄のリスクを管理しながらも、防衛セクターの潜在的な上昇局面からリターンを得ることを目的とした、分散投資を簡単に行うことができます。

5年間の当バスケットのリターンは356.92%でしたが、ベンチマークの92.38%のリターンに比べて、当バスケットのパフォーマンスで長期的に良好であったことがわかります。下記のグラフと表は、当バスケットのパフォーマンスとそれに含まれる8つの銘柄を表示しています。これらの銘柄の好調なパフォーマンスは、当セクターの勢いを際立たせています。

サクソバンクグループの防衛テーマのバスケット:2025年3月3日現在のパフォーマンスと構成銘柄

リスクと課題:注意が必要です

すべての株価の力強い上昇にはリスクが伴いますが、防衛セクターも例外ではありません。特にウクライナと大西洋周辺諸国の関係に対する米国政権のスタンスをめぐる政治的な不確実性が、市場の変動を引き起こす可能性があります。当防衛セクターは好調なパフォーマンスとなっていますが、地政学的なイベントに敏感であり、その結果、顕著なボラティリティが発生しています。

米国のウクライナへの軍事的援助の停止は、不確実性をさらに高めています。米国がウクライナへの軍事的援助を止めた後のギャップを欧州諸国が埋めることができなければ、一部の防衛関連銘柄の予想成長軌道が弱まる可能性があります。

経済的な課題も同セクターに重くのしかかる可能性があります。多くの欧州諸国は財政上の制約に直面しており、国防予算の増加と社会的支出のバランスをとることは、成長軌道を鈍化させる可能性があります。さらに、2022年のロシアの侵攻以降、一部の銘柄は、最大1,000%上昇するなど、目覚ましい上昇を記録していますが、投資家は、まだ上昇の余地があるのか、それとも多くの防衛関連銘柄が割高なバリュエーションで取引されていることから市場が小さな失望に対して脆弱になっている可能性がないかについて検討する必要があります。さらに、サプライチェーンの課題が問題を引き起こす可能性があります。軍事機器に対する高い需要は、特に弾薬と先進技術のサプライチェーンの混乱と供給の逼迫を露呈させています。欧州連合(EU)の「弾薬製造支援法」(Act in Support of Ammunition Production)はこれに対処することを目的としていますが、改善には時間がかかる可能性があります。

長期的な成長の可能性:防衛関連株がまだ成長する可能性がある理由

一足先に大きく上昇した銘柄については明らかなリスクがありますが、防衛セクターは今後数年にわたる成長サイクルの始まりに過ぎないかもしれません。アナリストは、これは単なる短期的な上昇ではなく、欧州の防衛関連株にとってより長い構造的な強気サイクルの夜明けとなる可能性があると示唆しています。防衛の自律性の向上を求める動きと、政府の一貫した支援が相まって、2030年代初頭までの持続的な成長の舞台が整うとみられます。

欧州の指導者たちは、軍事予算を増やすだけでなく、戦略的な長期投資にも焦点を当てています。一部の国では、欧州の貯蓄共同出資金のプールを活用するために欧州再軍備銀行を設立する可能性を模索しており、防衛セクターに長期的な金融上の安定をもたらしています。この取り組みは、財政面からの圧力が高まっても成長の勢いを維持するのに寄与するでしょう。

イノベーションも重要な推進力です。欧州の防衛企業は、防空システム、デジタル化された機器、ソフトウェアで定義づけられたソリューションなどの先進技術に投資しています。欧州の政策立案者の間では、欧州製の防衛システムを開発・生産することで、米国からの輸入への依存を減らし、より広範な地政学的戦略との整合を計ることができるというコンセンサスが高まっています。ウクライナへの軍事援助を一時停止するという最近の米国の決定は、この傾向をさらに加速させる可能性があります。ウクライナへの軍事援助に関するこの変化は、欧州の防衛面での独立性を強化するだけでなく、欧州の防衛関連株が最近、米国の防衛関連銘柄をアウトパフォームしている理由についても説明しています。

投資家へのアドバイス

防衛セクターは魅力的な長期投資の機会を提供する可能性がありますが、リスクがないわけではありません。以下の考慮事項は、投資家がこのダイナミックな市場の機会と潜在的な落とし穴の両方をうまく乗り越えて進むのに役立つ可能性があります。

  1. 防衛セクターへの投資持分(リスクエクスポージャー)を分散する:少数の上位銘柄だけでなく、より広範な企業への投資配分をすることでリスクを分散させることも検討してください。この(同セクターに含まれる複数の銘柄に投資をする)アプローチにより、投資家は個々の銘柄を選択することなくセクターのアップサイド(価格上昇余地への賭け)に参加でき、(少数の銘柄への)集中的な賭けに係る複雑さとリスクが軽減されます。

  2. 機敏さを保つ:政府予算、主要な防衛契約、地政学的な動向を綿密に監視します。このセクターが政治的なニュースの見出しに敏感であることを考えると、機敏性を持つことはリスク管理に役立ちます。

  3. 段階的な投資配分:まだ投資していないがエクスポージャーをとりたい場合は、当防衛テーマに投資参入するための段階的なアプローチを検討してください。高い期待と最近の急騰を考えると、小さなポジションから始めて、相場の揺り戻しの際に押し目をとってポジションを徐々に増やすことで、リスクを管理し、割高なバリュエーションでの株式購入を避けることができます。

「不確実な時代には、強力な防衛関連株はポートフォリオの安定性以上のものを提供する場合があり、成長と機会の源泉となる可能性があります。」

欧州の防衛産業は重大な岐路に立っています。勢いは強いですが、リスクも大きいです。投資家にとっては、警戒心を持ち、分散し、戦略的に行動することを条件に、長期的なトレンドを活かすチャンスとなる可能性があります。

安全保障が益々重要視される世界では、防衛関連銘柄は引き続き輝き続けるかもしれません。しかし、期待が非常に高い市場では、確信と慎重さを兼ね備えた人が最上位に立つかもしれません。

ベテランの投資家であろうと、始めたばかりの投資家であろうと、思慮深い戦略を立てることで、今日の予測不可能な市場環境を生き残るだけでなく、成功することができます。最近の素晴らしいリターンは、このセクターの潜在力を反映しており、リスクを効果的に管理しながら潜在的なアップサイド(価格の上昇余地)を捉えるための多様で戦略的なアプローチの重要性が強調されます。

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