半導体セクターを待ち受ける事業機会とリスク

半導体セクターを待ち受ける事業機会とリスク

株式
Peter Garnry

Chief Investment Strategist

サマリー:  AIチャットボットを巡る誇大広告と、市場の年内利下げに対する期待感がセンチメントを押し上げる中、半導体の株式テーマバスケットは年初来で26%上昇しており、今のところ最も上昇を遂げたテーマとなっています。半導体は、今後も底堅い需要が見込まれますが、地政学的リスクや化学物質PFASの使用禁止による製造コストの上昇など、いくつかのリスクも存在します。


※本レポートは自動翻訳を一部修正したものです。原文と和訳に齟齬がある場合は原文が優先されます。

主なポイント:

  • AI技術に関する誇大広告と市場のFRB利下げ予想が半導体セクターのセンチメントを押し上げており、半導体のテーマバスケットは今年に入って26%上昇しており、株式バスケットの中で最も優れたパフォーマンスを上げている。

  • 半導体は底堅い需要が見込まれるものの、グローバルサプライチェーンが再構築される中で地政学的リスクに晒されている。

  • 半導体の製造において極めて重要な役割を果たす化学物質PFASの規制は、半導体セクターにとって将来的に内在する最大のリスクとなり得る。

半導体:AIの誇大広告に牽引され、今年最も上昇を遂げたテーマバスケットに

2022年の株式市場では、急激な金利上昇によって株価バリュエーションが低下し、半導体関連銘柄は大きな打撃を受けました。また、世界が日常を取り戻す中で、グローバルサプライチェーンの混乱は緩和され、それまで多くの半導体企業がパンデミック初期や特に2021年に享受してきた価格決定力は低下しました。しかし、今年に入ると新たなAIチャットボット(ChatGPT・Bard)をめぐる誇大広告と市場のFRBの年内利下げに対する期待感とが相まって、当グループの半導体テーマバスケットは年初来で25.5%上昇し、メガキャップ、高級品、バブル株(高ベータ成長株)、防衛をいずれもアウトパフォームし、首位の座を獲得しています。

自動車からスマートフォン、データセンター、AI・機械学習システム、防衛システムに至るまで、半導体はいまや私たちの経済活動に必要不可欠なものとなっており、半導体セクターは今後も長期的に高い成長を遂げる見通しです。また、GoogleとMicrosoftが繰り広げるAI競争は、その流れに拍車をかけています。半導体セクター全体の売上高は、過去1年間で13%拡大しており、資本集約型かつ知的財産権が重要な位置を占めるという特性から、高い参入障壁によるメリットを享受しており、利益率は高い水準で保たれています。

 

中国のMicron製品の禁止措置は地政学的リスクを反映

半導体の需要は引き続き底堅く推移する見通しですが、株主にとってリスクがないわけではありません。先週末、中国当局はサイバーセキュリティ上のリスクを理由に米半導体大手Micron Technology製のメモリーチップの使用を一部禁止し、同社の株主は地政学リスクに直面することになりました。しかし、投資家は中国の禁止措置のターゲットが非常に狭い範囲に限られていることや、中国本土と香港がMicronの収益に占める割合がわずか16%であることを認識していたことから、同社の株価へのインパクトは2.9%にとどまりました。中国はMicron製のメモリチップの代わりに国内生産や韓国産の製品を容易に調達することも可能であり、また、今後QualcommやIntelもターゲットに含める可能性も高まっています。しかし、それによって中国は自国のサプライチェーンを破壊するリスクに晒されることになります。

米中間の地政学的対立は、トランプ前大統領が「グローバル化は富を生み出すだけではない」という趣旨の発言したことをきっかけに始まりました。グローバル化に対するこうした考えは、欧米社会に大きな影響を及ぼしました。その後、ロシアのウクライナ侵攻によって地政学的リスクはさらに高まり、米国は国家安全保障に関わる産業再編に踏み切りました。その一つが極めて脆弱なグローバルサプライチェーンによって構成される半導体産であり、欧米諸国でその脆弱性が高まっています。

2022年8月に可決された米国CHIPSは、米国に拠点を置く半導体企業に補助金を提供し、魅力的な投資の枠組みを設定するという明確な意図を持つものです。また、米国は中国向けの半導体輸出にいくつかの規制を導入しました。これに続き、オランダ政府はASMLが販売する極端紫外線(EUV)露光装置の中国向け輸出を制限するよう圧力を強めています。さらに事態を悪化させているのは、日本政府が中国に関連する半導体製造を規制する計画を発表したことです。中国の半導体業界では、日本の規制は米国以上に厳しい内容になる可能性が指摘されています。また、欧州委員会(EC)は今年4月に「European Chips Act(欧州半導体法)」を発表し、米国CHIPS法による競争力の増強や半導体に関連するサプライチェーンのリスクの低減を図る見通しです。世界全体の半導体生産量に占めるEUのシェアは、10%程度に上ります。

Micron Technology share price | Source: Saxo

PFAS規制は半導体産業の弊害となるか

半導体産業にとってのもう一つのリスクは、半導体製造に必要不可欠な化学物質PFASに対する規制強化の動きです。しかし、最近の研究で、PFASは人体を危険にさらし、発がん性が疑われることが判明しました。これを受けて、3Mは2022年12月に将来的な訴訟による潜在的なコストを正当化するだけの利益が得られなくなったとして、2025年末までにPFASの製造から撤退することを発表しました。3Mの決定によってPFASの供給不足や一連の規制に対する懸念が高まり、半導体業界に緊張が走りました。さらに、EUは今年3月に18ヶ月~12年間の移行期間を設けた上で使用を禁止する計画を打ち出しました。今後、こうした動きは半導体業界に厳しい制約を掛けることになります。PFASの代替品を使用する選択肢がないことも事態を悪化させており、PFAS規制の問題はコンピュータチップ、ひいては半導体製造全体に深刻な影響をもたらす可能性があります。こうした中、最も望ましいシナリオはPFASの代替品を同等のコストで賄えるようになることですが、より可能性が高いシナリオは、追加のコストを負担して代替品を使用することでしょう。これもまた、将来的に原材料価格の高騰をもたらす要因の一つとなり得るでしょう。

口座開設は無料。オンラインで簡単にお申し込みいただけます。 

最短3分で入力完了!

【ご留意事項】

■当資料は、サクソバンクグループのアナリストによるマーケット分析レポートの転載、もしくは外部のアナリストからの寄稿となっております。
■当資料は、いずれも情報提供のみを目的としたものであり、特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
■当資料は、作成時点において執筆者またはサクソバンク証券(以下「当社」)が信頼できると判断した情報やデータ等に基づいていますが、執筆者または当社はその正確性、完全性等を保証するものではありません。当資料の利用により生じた損害についても、執筆者または当社は責任を負いません。 
■当資料で示される意見は執筆者によるものであり、当社の考えを反映するものではありません。また、これら意見はあくまでも参考として申し述べたものであり、推奨を意味せず、また、いずれの記述も将来の傾向、数値、投資成果等を示唆もしくは保証するものではありません。 
■当資料に記載の情報は作成時点のものであり、予告なしに変更することがあります。 
■当資料の全部か一部かを問わず、無断での転用、複製、再配信、ウェブサイトへの投稿や掲載等を行うことはできません。
■上記のほか、当資料の閲覧・ご利用に関する「免責事項」をご確認ください。 
■当社が提供するデリバティブ取引は、為替相場、有価証券の価格や指数、貴金属その他の商品相場または金利等の変動によって損失を生じるおそれがあります。また、お預けいただく証拠金額に比べてお取引可能な金額が大きいため、その損失は、預託された証拠金の額を上回る恐れがあります。
■当社が提供する外国証券取引は、買付け時に比べて売付け時に、価格が下がっている場合や円高になっている場合に損失が発生します。手数料については、「取引金額×一定料率」又は「取引数量×一定金額」で求めた手数料が一回の取引ごとに課金されます。ただし手数料の合計額が当社の定める最低手数料に満たない場合は、手数料に代えて最低手数料を徴収させていただきます。また取引所手数料等の追加費用がかかる場合があります。 
■取引にあたっては、取引説明書および取引約款を熟読し十分に仕組みやリスクをご理解いただき、発注前に取引画面で手数料等を確認のうえ、ご自身の判断にてお取引をお願いいたします。 
■当社でのお取引にかかるリスクやコスト等については、 こちらも必ずご確認ください。

サクソバンク証券株式会社
Saxo Bank Securities Ltd.
Izumi Garden Tower 36F
1-6-1 Roppongi Minato-ku
Tokyo 106-6036
〒106-6036 東京都港区六本木1-6-1
泉ガーデンタワー36F

お問い合わせ

国・地域を選択

日本
日本

【重要事項及びリスク開示】

■外国為替証拠金取引は各通貨の価格を、貴金属証拠金取引は各貴金属の価格を指標とし、それらの変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、売買の状況によってはスワップポイントの支払いが発生したり、通貨の金利や貴金属のリースレート等の変動によりスワップポイントが受取りから支払いに転じたりすることがあります。
■外国為替オプション取引は外国為替証拠金取引の通貨を、貴金属オプション取引は貴金属証拠金取引の貴金属を原資産とし、原資産の値動きやその変動率に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、オプションの価値は時間の経過により減少します。また、オプションの売り側は権利行使に応える義務があります。
■株価指数CFD取引は株価指数や株価指数を対象としたETFを、個別株CFD取引は個別株や個別株関連のETFを、債券CFD取引は債券や債券を対象としたETFを、その他証券CFD取引はその他の外国上場株式関連ETF等を、商品CFD取引は商品先物取引をそれぞれ原資産とし、それらの価格の変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、建玉や売買の状況によってはオーバーナイト金利、キャリングコスト、借入金利、配当等調整金の支払いが発生したり、通貨の金利の変動によりオーバーナイト金利が受取りから支払いに転じたりすることがあります。
■上記全ての取引においては、当社が提示する売価格と買価格にスプレッド(価格差)があり、お客様から見た買価格のほうが売価格よりも高くなります。
■先物取引は各原資産の価格を指標とし、それらの変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。
■外国株式・指数オプション取引は、対象とする有価証券の市場価格や対象となる指数、あるいは当該外国上場株式の裏付けとなっている資産の価格や評価額の変動、指数の数値等に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、対象とする有価証券の発行者の信用状況の変化等により、損失が発生することがあります。なお、オプションを行使できる期間には制限がありますので留意が必要です。さらに、外国株式・指数オプションは、市場価格が現実の市場価格等に応じて変動するため、その変動率は現実の市場価格等に比べて大きくなる傾向があり、意図したとおりに取引ができず、場合によっては大きな損失が発生する可能性があります。また取引対象となる外国上場株式が上場廃止となる場合には、当該外国株式オプションも上場廃止され、また、外国株式オプションの取引状況を勘案して当該外国株式オプションが上場廃止とされる場合があり、その際、取引最終日及び権利行使日が繰り上げられることや権利行使の機会が失われることがあります。対象外国上場株式が売買停止となった場合や対象外国上場株式の発行者が、人的分割を行う場合等には、当該外国株式オプションも取引停止となることがあります。また買方特有のリスクとして、外国株式・指数オプションは期限商品であり、買方がアウトオブザマネーの状態で、取引最終日までに転売を行わず、また権利行使日に権利行使を行わない場合には、権利は消滅します。この場合、買方は投資資金の全額を失うことになります。また売方特有のリスクとして、売方は証拠金を上回る取引を行うこととなり、市場価格が予想とは反対の方向に変化したときの損失が限定されていません。売方は、外国株式・指数オプション取引が成立したときは、証拠金を差し入れ又は預託しなければなりません。その後、相場の変動や代用外国上場株式の値下がりにより不足額が発生した場合には、証拠金の追加差入れ又は追加預託が必要となります。また売方は、権利行使の割当てを受けたときには、必ずこれに応じなければなりません。すなわち、売方は、権利行使の割当てを受けた際には、コールオプションの場合には売付外国上場株式が、プットオプションの場合は買付代金が必要となりますから、特に注意が必要です。さらに売方は、所定の時限までに証拠金を差し入れ又は預託しない場合や、約諾書の定めによりその他の期限の利益の喪失の事由に該当した場合には、損失を被った状態で建玉の一部又は全部を決済される場合もあります。さらにこの場合、その決済で生じた損失についても責任を負うことになります。外国株式・指数オプション取引(売建て)を行うにあたっては、所定の証拠金を担保として差し入れ又は預託していただきます。証拠金率は各銘柄のリスクによって異なりますので、発注前の取引画面でご確認ください。
■上記全ての取引(ただしオプション取引の買いを除く)は、取引証拠金を事前に当社に預託する必要があります。取引証拠金の最低必要額は取引可能な額に比べて小さいため、損失が取引証拠金の額を上回る可能性があります。この最低必要額は、取引金額に対する一定の比率で設定されおり、口座の区分(個人または法人)や個別の銘柄によって異なりますが、平常時は銘柄の流動性や価格変動性あるいは法令等若しくは当社が加入する自主規制団体の規則等に基づいて当社が決定し、必要に応じて変更します。ただし法人が行う外国為替証拠金取引については、金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第27項第1号に規定される定量的計算モデルを用いて通貨ペアごとに算出(1週間に1度)した比率を下回らないように当社が設定します。
■上記全ての取引(ただしオプション取引の買いを除く)は、損失が無制限に拡大することを防止するために自動ロスカット(自動ストップロス)が適用されますが、これによって確定した損失についてもお客様の負担となります。また自動ロスカットは決済価格を保証するものではなく、損失がお預かりしている取引証拠金の額を超える可能性があります。
■外国証券売買取引は、買付け時に比べて売付け時に、価格が下がっている場合や円高になっている場合に損失が発生します。
■取引にあたっては、契約締結前交付書面(取引説明書)および取引約款を熟読し十分に仕組みやリスクをご理解いただき、発注前に取引画面で手数料等を確認のうえ、ご自身の判断にてお取引をお願いいたします。

サクソバンク証券株式会社

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第239号、商品先物取引業者
第一種金融取引業、第二種金融商品取引業
加入協会/日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、日本投資者保護基金、日本商品先物取引協会
手数料:各商品の取引手数料についてはサクソバンク証券ウェブサイトの「取引手数料」ページや、契約締結前交付書面(取引説明書)、取引約款等をご確認ください。