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Chief Investment Strategist
サマリー: ロシア株はロンドンでの取引で大幅に下落し、2/26の週末には欧州によるかつてない厳しい制裁により不確実性が最高水準に達しています。エクイティオンリーのポートフォリオを有する投資家は、十分に分散された資産配分戦略を採用して分散を高め、エクイティの配分内ではコモディティ・セクター、サイバーセキュリティ、防衛、超大型株、および物流銘柄のウエイトを高めるべきであると考えます。本日2/28のエクイティ・アップデートでは、軍事・エネルギーセキュリティ面でのドイツの歴史的な方針転換、およびそれが防衛銘柄やグリーンエネルギー、LNG、空気/水ヒートポンプメーカー等のエネルギー資産に意味するところについて考察します。また、SWIFTからの排除により欧州の銀行および欧州諸国が最も損害を被ることになるだろうことを説明します。
非常に流動的な環境のため、適切な分散が必要
ウクライナの状況は懸念すべきものであり、その結末は予想し難く、また2/26の週末のロシアへの新たな制裁により不確実性がさらに増しています。この状況がどのように終わるかは誰にも分からず、大半の投資家に再考を迫る、最高水準の不確実性が存在する環境にあります。2/26の週末の事態の進展(本日のレポートの後半において詳述しています)により株式相場は下落し、Gazprom株が一時62%も下落した後ロンドンで36%値下がりする等、ロシア関連資産は非常に大きく売り込まれました。
100%エクイティのポートフォリオを有するリテール投資家であれば、弊社ではタイミング的に不利な戦略であるため良くない戦略だと考える「すべて売却する」以外に、以下のふたつの選択肢があります。
欧州およびドイツは2/26の週末に歴史的な方針転換
株式市場は、欧州は自らの経済に大きな負担になるようなことはしないだろう、ウクライナとロシアの間で和平交渉が行われるだろうと事態を解釈して2/21の週を終えましたが、2/26の週末に状況は大きく変わりました。ドイツが歴史的な方針転換を行い、まず第二次世界大戦以降初めて紛争地帯に軍装備品を送り、日曜日(2/27)にはドイツ連邦議会が過去30年間にわたる純朴さにピリオドを打つと発表しました。ドイツは軍事費をGDPの2%超に拡大し、常備軍を欧州における自国の規模と重要性に応じた水準に大幅増強すると発表しました。他の国々もドイツの先例に矢継ぎ早に倣う可能性があり、2/25に最もパフォーマンスが良かったバスケットである、Saxoの防衛バスケット(以下のバスケットを参照してください)に順風となるでしょう。
Name | Mkt Cap (USD mn.) | Sales growth (%) | EBITDA growth (%) | Diff to PT (%) | 5yr return |
Raytheon Technologies Corp | 146,428 | 13.8 | 319.7 | 6.7 | 64.9 |
Airbus SE | 101,966 | 4.5 | 234.2 | 26.1 | 71.3 |
Boeing Co/The | 117,463 | 7.1 | 92.8 | 29.5 | 17.2 |
Lockheed Martin Corp | 111,515 | 2.5 | 5.6 | -0.2 | 73.0 |
Northrop Grumman Corp | 63,950 | -3.1 | 29.2 | -0.6 | 81.3 |
General Dynamics Corp | 63,310 | 1.4 | 1.4 | 3.4 | 32.7 |
L3Harris Technologies Inc | 45,083 | -2.1 | 39.4 | 4.8 | 129.8 |
TransDigm Group Inc | 36,741 | 2.9 | 17.4 | 11.6 | 216.9 |
BAE Systems PLC | 27,483 | 1.3 | 17.1 | -0.5 | 26.1 |
Rolls-Royce Holdings PLC | 11,873 | -3.9 | 339.6 | 23.5 | -58.8 |
Thales SA | 21,965 | -1.7 | 2.9 | 13.1 | 8.9 |
Howmet Aerospace Inc | 14,976 | -5.5 | 4.8 | 11.4 | 49.0 |
Dassault Aviation SA | 11,631 | -14.4 | -28.0 | 3.3 | 19.7 |
Elbit Systems Ltd | 8,203 | 12.1 | 30.3 | NA | 48.4 |
Kongsberg Gruppen ASA | 5,883 | 7.2 | 29.9 | 7.9 | 185.0 |
Leonardo SpA | 4,496 | 1.3 | -7.9 | 21.8 | -44.9 |
Rheinmetall AG | 7,197 | 2.4 | NA | -18.0 | 116.9 |
Saab AB | 3,461 | 10.5 | 61.1 | 28.8 | -22.7 |
Ultra Electronics Holdings PLC | 2,933 | 0.0 | 4.4 | -2.3 | 78.6 |
QinetiQ Group PLC | 2,036 | 7.2 | -9.1 | 29.8 | 5.1 |
Babcock International Group PLC | 2,074 | 0.2 | -94.4 | 21.3 | -62.4 |
Chemring Group PLC | 1,034 | -2.3 | -2.5 | 26.9 | 51.5 |
INVISIO AB | 571 | 11.5 | -26.7 | 56.5 | 85.1 |
Avon Protection PLC | 471 | 0.7 | -98.8 | 49.2 | 24.9 |
Avio SpA | 316 | -17.7 | -40.4 | 42.2 | 5.7 |
Aggregate / median values | 813,059 | 1.3 | 5.2 | 12.4 | 48.4 |
さらに、EU、米国および英国が多くのロシアの銀行をSWIFTから排除することを決定しました。SWIFTは国際金融システムにおける迅速な決済のためのメッセージ・システムですが、これによりロシアとの貿易が一段と困難になります。ロシアの国民所得の約50%を占めるエネルギーおよび資源セクターは現時点で制裁の範囲外ですが、キエフがロシア軍に制圧されるような暁にはこれも視野に入ってくる可能性があります。銀行への制裁によりロシアの銀行は2/28、大きな影響を受け、ECBはSberbankの欧州子会社は同日または翌日に破綻するだろうと述べました。スイスも、欧州の対ロシアの制裁措置を採用すると発表しましたが、同国はこれまで中立的な立場と考えられロシアの富豪にとって資産の主要な人気預け先であったため、ロシアの実業家にとって痛みが大きくなっています。欧州の金融機関は2/28、4%下落し最もパフォーマンスが悪かったセクターでした。以下のリストは、ロシアに最もエクスポージャーが大きい銀行はどこか、したがってロシアへのエクスポージャーを限定したい投資家が避けるべき銀行はどこか、はっきり示しています。BISのデータからも、イタリア、フランス、そしてオーストリアが銀行システムを通じてロシア制裁措置の影響を最も受けやすいことが明らかです。
欧州のエネルギーセンターは新たなパラダイム下に
2/26の週末に英エネルギー企業のBPが、ロシア最大の石油企業であるRosneftの20%の持ち分を処分し、2兆5,000億ドルの損失を計上する可能性を発表し、他の欧州企業に自らのロシア資産をどうすべきか決断を迫る圧力となりました。Norwegian Wealth Fund(ノルウェー政府年金基金)も2/26の週末にすべてのロシア資産を売却する計画を発表し、Equinorもロシアでのすべての合弁事業から撤退すると発表してBPに追随しました。ルーブルとロシア株を防衛するため、ロシア中央銀行は2/28に金利を20%に引き上げ、モスクワでのロシア株の取引を中断しました。欧州エネルギー企業の決断は、原油・ガス価格の値上がりにもかかわらずそれらの企業に悪影響を及ぼしています。2/21の週に述べたようにエネルギー資産は引き続きヘッジ資産として見なされるべきであることを強調したいと思いますが、主要なフィルターはロシアへのエクスポージャーです。
エネルギーセクター内では、ウクライナ侵攻により欧州のグリーンエネルギー銘柄が急騰し、Orsted(洋上風力発電所建設業者)およびVestas株がそれぞれ、侵攻の前日比で28%、35%値上がりしました。グリーン・トランスフォーメーション取引は、インフレ圧力のグリーンエネルギー資産売上総利益への影響に加え、金利の上昇により非常に高い株価バリュエーションが影響を受け、見通しが非常に悪くなっていました。しかし、ロシアからの自立を果たしたい欧州はグリーンエネルギー計画を加速し、今後数年または数十年間にわたってこの方向に多額の政府資金がつぎ込まれることを予想します。また、EUは割安な中国メーカーよりも国内メーカーを優先するであろうと考えます。
欧州のエネルギー担当大臣は2/28、欧州がどのようにロシアからエネルギー面での自立を果たすことができるか会合を持ちましたが、こうした議論が中期的に継続されるでしょう。短期的には、輸送を制限する(EU内の原油消費の50%は道路輸送であるため、在宅勤務が軽減策のひとつになります)以外に現実的な方法はありません。中期的な戦略には北アフリカ諸国、イランまたはベネズエラとのガス・原油取引の可能性が含まれるでしょうし、もちろんLNG貯蔵容量の増強(ドイツはふたつのLNG基地をできるだけ早く建設することを決定しました)およびガスを代替する空気ヒートポンプに加え、全エネルギー生産量のうちのグリーンエネルギーの比率を高めることがあります。しかしながら、次のジレンマは発電にどのエネルギー源を使用するかです。
以下のリストは、LNGエクスポージャーを有する企業のいくつかを示しています。
以下のリストは、空気ヒートポンプへのエクスポージャーを有する企業を示しています。
ロシアへのエクスポージャーが大きい企業
ESGは投資家の間で人気の投資であり、ウクライナ侵攻により、ESGは紛争地帯における侵略者の資産といった地政学的リスクを含むよう拡大していく可能性があります。今回のケースでは、多くのポートフォリオでロシアの資産はESG基準に適合しないとのステータスを得ることになり、2/26の週末のBPの決定により、他の欧州企業は自らのロシア資産をどうすべきか決断する多大なモラル上の圧力を受けることになるでしょう。リストは、ロシアへのエクスポージャーが大きい主要企業の一部を示しています(売上高以外にも資産を通じてエクスポージャーを有する企業もありえます)。