トランプ関税2.0:より保護主義者的な世界のための投資テーマ

トランプ関税2.0:より保護主義者的な世界のための投資テーマ

株式
チャル・チャナナ

チーフ・インベストメント・ストラテジスト

主な学習内容:

  • 関税措置の拡大:トランプ大統領は、すべての国からの鉄鋼とアルミニウムの輸入に25%の関税を課すと脅しており、「相互的」関税措置が今週発表される予定である。カナダ、メキシコ、中国に対するこれまでの脅威を超えて、これらの貿易行動の拡大は、新たな輸入制限や報復の可能性につながり、投資家にとってさらなるボラティリティに向き合うべきひとしきりの期間がやって来ることを示唆しています。
  • 関税の複数の目的:関税は輸入品への課税だけでなく、国家安全保障、経済レバレッジ、歳入創出のツールとしても使用されており、短期的な貿易紛争ではなく長期的な経済政策への移行を示しています。
  • 自給自足への投資:保護主義と自給自足への傾向は、経済の構造的な変化を示唆しており、投資家は国内製造、エネルギー自給、防衛、サイバーセキュリティに焦点を当て、インフレとコストを押し上げる圧力の管理に戦略を適応させる必要があります。

トランプ大統領は、再び関税措置をエスカレートさせました。今回、米大統領はすべての国からの鉄鋼とアルミニウムの輸入に25%の関税をかけると脅しました。先週米大統領は、カナダとメキシコに対する25%の関税措置を実行するとして脅していた後、(結局、発動を1か月停止する等して)少し引き下がり、10%の中国への関税強化についても中国からの対抗措置を受けて行き詰りつつありました。が、米大統領はまた今回、貿易関係で一斉射撃を拡大しています。現在、新たな輸入制限や報復の脅威の可能性もあり、投資家は新たなボラティリティに備えようとしています。

市場はいつものように反応するでしょう - おそらく恐怖で売られ、その後、政策の中身を理解するにつれて反転するでしょう。しかし、長期投資家にとってより大きな問題は、即座に市場が揺れ動くことではありません。それは、関税強化の措置が次々ととられる世界に対峙した時にどのような姿勢をとり、どのように自分たちを位置づけるのかということです。

関税が長期的なゲームになり得る理由

関税は輸入品に課税するというだけでなく、複数の目的を持つ政策ツールです。

  • 国家安全保障:トランプ大統領が関税を最初に推し進めた際、彼は移民と麻薬密輸の懸念を対象とする「懲罰的関税」に焦点を当ててきました。
  • 経済的レバレッジと報復:貿易不均衡の是正を目的とした「構造的長期関税」や、定額料金の関税とは対照的な「相互関税」があり、これらは脅しや交渉の道具として使用されます。政府は、自国の重要な産業を不公正な外国の競争から保護するために関税を使用することがよくあります。これには、米国企業を弱体化させる補助金付きの外国企業、米国企業に対する貿易上の差別、または主要なパートナーとの持続的な貿易赤字への対抗が含まれます。
  • 歳入の創出:あまり知られていない角度からは、関税を使用して政府支出を賄うというものもあります。一部の共和党員は、失われた税収を補う方法として、すべての輸入品に10%から20%の関税を課すという案を持ち出しています。

これらの政策は、関税がもはや短期的な貿易紛争ではなく、経済政策の恒久的な定着物になりつつあることを示唆しています。

保護主義、自給自足、政府主導の産業政策への流れは今後も続くでしょう。投資家にとって、それは保護主義が例外ではなく標準である世界に向けてどのような立ち位置をとるかを決めることを意味します。

保護主義はもはや短期的な取引だけに影響を与える考え方ではありません。これは、投資全般に対する異なるアプローチを必要とする構造的な変化です。

保護主義者的な世界が投資テーマをどのように変えるか

保護主義へのシフトは、投資環境を変えます。過去数十年間は、グローバルサプライチェーン、自由貿易、コスト効率というテーマが好まれましたが、これからの未来は自給自足、冗長性、国内投資というテーマによって形作られるでしょう。

ここでは、経済の次の段階を形作る主要なテーマをご紹介します。

1. 国内製造業・産業再生

保護主義は、特に素材、技術、インフラにおける国内生産能力の再構築を加速させています。各国政府は、企業が米国を拠点とする製造業を拡大し、サプライチェーンを強化し、外国生産への依存を減らすためのインセンティブを提供しています。

これは、長期的な設備投資が以下に向けてシフトすることを意味します。

  • 工場建設と産業オートメーション。CaterpillarCAT)Emerson ElectricEMR)などの企業は、基幹施設インフラ、自動化、およびリショアリング(海外に移転していた工場などの生産拠点の国内回帰)の取り組みで役割を果たしています。また、HoneywellHON)も、高度な製造設備の構築の動きから恩恵を受けている主要な企業です。
  • 米国を拠点とする半導体および先進的な製造の中心的拠点。国内半導体チップ生産の確保に向けた動きはメガトレンドであり、NvidiaNVDA)AMD(AMD)BroadcomAVGO)が業界の中心に据えられています。Applied MaterialsAMAT)Lam Research(LRCX)は、重要な半導体装置を提供しています。
  • 国内の鉄鋼、アルミニウム、原材料のサプライチェーンの強化。Nucor (NUE)Steel Dynamics(STLD)Alcoa(AA)などの米国の鉄鋼・アルミニウムの生産者は、政府の政策が現地生産を優遇しているため、引き続き重要な役割を果たす可能性があります。
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2. エネルギー・資源の自給自足

保護主義は、工場だけでなく、石油、天然ガス、希土類鉱物、農業生産などの重要な資源へのアクセスを確保することでもあります。各国政府は、外国の供給業者への依存を減らすために、国内のエネルギー安全保障を推進しています。

このテーマへの投資には、次のものが含まれます。

  • 国内のエネルギーの安定供給を確保するための化石燃料と再生可能エネルギー。ExxonMobil (XOM)Chevron(CVX)は、米国のエネルギー安全保障において引き続き主要な役割を果たしています。再生可能エネルギーの面では、NextEra Energy(NEE)First Solar(FSLR)が米国のクリーンエネルギー関連のインフラを拡大しています。
  • 電気自動車および防衛用途向けの重要鉱物およびバッテリー製造。米国は、リチウムやその他の希土類元素の国内供給を増やすことを目指しています。Albemarle(ALB)Lithium Americas(LAC)はリチウム生産の主要プレーヤーであり、MP Materials(MP)は希土類採掘に焦点を当てています。
  • 農業政策が自給自足の拡大にシフトしており、食料安全保障。Archer Daniels Midland(ADM)Bunge(BG)などの農業関連産業の大手企業は、米国の食料生産を確保する上で引き続き中心的な役割を果たしています。
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3. 防衛&サイバーセキュリティの拡大

貿易戦争が広範な経済・地政学的紛争に発展する中、国家安全保障のための支出は増加しています。米国をはじめとする主要経済国は、防衛、サイバーセキュリティ、サプライチェーン保護への投資を増やしています。

この傾向は、次の分野での成長を支えています。

  • 軍事技術と国内の武器製造。Lockheed Martin(LMT)Northrop Grumman(NOC)などの防衛関連企業は、国防予算の増加から恩恵を受けています。Raytheon Technologies(RTX)も、航空宇宙・防衛システムの分野における主要企業です。
  • AI主導の防御およびデータセキュリティソリューション。Palantir(PLTR)AI主導の防衛およびインテリジェンスソリューションを専門とし、Booz Allen Hamilton(BAH)は米国政府にコンサルティングとサイバーセキュリティの専門知識を提供しています。
  • サイバーおよびサプライチェーンの混乱から保護するためのインフラ(基盤設備)の強化。CrowdStrike(CRWD)Fortinet(FTNT)Palo Alto Networks(PANW)などの企業は、サイバー攻撃からの脅威からデジタルインフラストラクチャを保護することに注力しています。
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4. インフレ、コスト上昇圧力、価格決定力

保護主義、関税、サプライチェーンの再編により、投入コストが上昇し、インフレ圧力が高まっています。価格決定力と強力なサプライチェーンを持つ企業は、コストの上昇を乗り切るのに適した立ち位置にいます。

歴史的にインフレにうまく対応している業界には、以下のようなものがあります。

  • 生活必需品やその他必需品。ProcterGamble(PG)Coca-Cola(KO)PepsiCo(PEP)などの企業は、消費者が経済状況に関係なく製品を購入し続けるため、価格決定力を持っています。
  • 規模と効率性を備えた小売業者。Costco(COST)Walmart(WMT)Home Depot(HD)は、強力なサプライチェーン管理力と消費者へのコスト転嫁能力を持っています。
  • 不動産投資信託(REIT)、コモディティ、TIPS(インフレ連動国債)、配当株、貴金属などの他のインフレヘッジ用金融商品も考慮できます。
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まとめの考察:ニューノーマルとしての保護主義

より保護主義者的な経済への動きは一時的なものではなく、構造的な変化です。各国政府は、効率性よりも経済安全保障、サプライチェーンの強靭性、国益を優先しています。

過去数十年間は、グローバル化した世界でコスト効率を最適化した企業に報われてきました。次の時代は、レジリエンス(困難や脅威に直面した状況でうまく適応できる能力)、国内生産、地政学的安定性を最適化する人々に報いるでしょう。

保護主義はもはや単なる短期的な取引上の戦略ではなく、今後数年間で経済と市場がどのように進化するかを決定づける力となっています。

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