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チーフ・インベストメント・ストラテジスト
サマリー: 日銀は20日の金融政策決定会合でイールドカーブ・コントロール政策(長短金利操作:YCC)の一部修正を決定し、市場のサプライズを誘いました。2023年の最終的な出口に向けて日銀は準備を整えつつあるようです。この決定は、足元の金融市場の動向に照らした判断とのことですが、その背景にインフレ急伸が継続するリスクがあることは明らかです。黒田総裁は来年4月の退任後の政策移行を円滑に終えるために、勝利宣言したようです。今後は円キャリートレードの巻き戻しが起こる可能性が高く、日本国債のショートや円ロングのポジションを取る余地が広がっています。
日銀は、12月19-20日に開催された金融政策決定会合で、長年にわたって導入してきたイールドカーブ・コントロール政策(YCC)を一部修正するという、予想外の決定に踏み切りました。これにより、長期金利(10年国債金利)の許容変動幅は「±0.25%程度」から「±0.5%程度」へと拡大されました。一方、長期金利の誘導目標は0%程度に据え置くなど、その他の金融政策手段は、現行のまま維持されました。
黒田総裁は、今回の決定は経済的な理由ではなく、あくまでも金融市場の動向を踏まえたものであることを強調し、追加の緩和政策に対する期待を打ち消すような印象を与えました。ただ、このメッセージの裏には、10月にコアCPI見通しを3.0%程度から3.5%程度に大幅に上方修正したことがあるようです。
日銀の決定は、物価目標を達成し、YCC政策で成功を収めたことを強調する黒田総裁の勝利宣言となった
今回の決定は、来年4月に控えた新総裁への移行をよりスムーズにするものであり、2023年にさらなる調整が施される可能性があります。
それでは、市場のサプライズを誘うことを好むという点以外に、なぜ日銀は予想に反して早期の修正変更に踏み切ったのでしょうか?その理由としては、次の2点が挙げられます(日銀はあまりコミュニケーションが得意ではありません)。
イールドカーブ・コントロール政策の有効性については議論の余地がありますが、今年に入ってからの世界的な金融引締めの波が押し寄せるなか、大きな痛みを負わずに現行の政策を維持することは極めて困難でしょう。今年、その影響は為替市場に波及し、日本円は32年ぶりの安値を付けました。また、債券市場もYCC政策の限界を試す展開となりました。
来年FRBが予想以上に引き締めのペースを加速する可能性は依然として残されており、市場が再び日銀の政策スタンスの限界を試めしてくる展開も予想されます。また、日銀の声明後に長期国債利回りが約15bps上昇するなど、今後も長期金利の新たな許容上限である0.5%に向けて上昇に向かう可能性があります。また、日銀が最終的にYCC政策から脱却する見通しが強まるなかで、円高進行のリスクも懸念されます。黒田総裁がどのような発言をしようとも、日銀はYCCの出口戦略に着手しているとみられ、市場はそれに備えたポジションを取るでしょう。
日本国債の利回り上昇は、世界の株式および債券市場に更なるボラティリティ上昇をもたらす可能性があります。特に、市場の流動性が低下し、他のカタリスト見当たらない場合には、大きな影響を及ぼすものと予想されます。
市場が再び日銀に最終的な出口に向かうように圧力を強めるならば、日本国債のショートや円ロングの取引を行う余地は一層広がるでしょう。特に世界経済の減速や先行き不透明感が高まる局面において、日本の投資家は国内に資金をとどめるメリットを享受できるため、円キャリートレードの巻き戻しなどが今後もこの流れを促すであろうと考えます。これは円に限らず、外国資産、特に日本の投資家が保有する金融資産のうち、大きな割合を占めてきた米国債にもネガティブな影響を及ぼします。株式では、輸出企業やテクノロジー企業よりも、日本の金融機関に有利な政策決定であると言えるでしょう。