マクロ・インサイト:日銀の金融政策の行方 - ボラティリティに備える

マクロ・インサイト:日銀の金融政策の行方 - ボラティリティに備える

概況
チャル・チャナナ

チーフ・インベストメント・ストラテジスト

サマリー:  18日まで開催される日銀の金融政策決定会合に注目が集まる中、ボラティリティは急激に拡大しており、市場の警戒感が高まっています。ただ、日銀が追加の政策修正に踏み切るか否かに関わらず、イールドカーブコントロール(YCC)解除の観測は、2月10日に迫った新総裁の任命や3月の春闘、そして4月の新体制の発足を巡り、今後も一段と広がるものと考えられます。


1月18日に終了する金融政策決定会合を巡っては、様々なリスクが懸念されます。長年日本のマクロ経済政策の動向を追ってきた関係者も前回の決定で不意打ちを食らう格好となったこともあり、市場にはこれまでとは異なる空気が漂っています。

こうした中、16日は米国の債券市場が休場だったにも関わらず、ドル/円通貨オプションの夜間取引でインプライド・ボラティリティが50%超えと2016年以来の高水準(下図参照)に達したほか、ドル/円が一時127.23円前後まで下落する(17日は129円台に向けて回復)など、市場の焦点は18日の日銀の決定に集まっています。足元の動向を鑑みると、日本円の主な変動要因は単なる利回り格差から、国内の動向へとシフトしていると考えられます。

USDJPY Overnight Option Implied Volatility. Source: Bloomberg, Saxo Markets

日銀が追加の政策修正に踏み切る理由とは?

  • 日銀は市場の予想に反して12月の政策会合で長期金利(10年国債金利)の上限を0.25%から0.5%に引き上げ、量的緩和政策からの出口に向けた一歩を踏み出した
  • その後、長期国債利回りは新たな上限を試す展開となり直近3日間は許容変動幅の上限を突破して推移し、日銀は10兆円規模に上る予定外の国債買い入れを強いられる結果に
  • 日銀が大規模緩和の副作用を点検するとの国内メディアの報道を受けて、追加政策修正を行うとの憶測がさらに広がっている
  • 12月の東京23区消費者物価指数(CPI)は前年同月比4%上昇し、直近の生産者物価指数(PPI)は同10.2%と二桁台の伸びに加速するなど、日本のインフレ率にまだ鈍化の兆しは見られない
  • 一方、各国の経済が相次いでソフトランディングを実現できれば、シナリオが日本の輸出と経済成長を下支えする公算が大きい

一方、日銀はサプライズを好む傾向にあります。しかし、今週の会合で追加の政策修正に踏み切るとの観測が急速に強まる中で、当局者は次の決定を下す前に、先月の政策修正の影響を十分見極めたいと考えるかもしれません。いずれにせよ4月の黒田総裁退任を前に次期総裁が早晩「出口戦略」に着手するプレッシャーに晒される可能性が高まる中、日銀が追加の政策調整に動くか否かに関わらず、弱気筋は容易にスタンスを翻すことはないでしょう。日銀は今後1か月間で次期総裁の人事選定を進め、2月10日に国会に提示する予定です。こうした中、タカ派シナリオを支持する向きは、いずれ日銀がYCCを解除するとの見方を一層強める可能性があります。

日銀の会合を通過した後は、市場の焦点は3月の春闘に移るものと予想されます。すでにユニクロを傘下に持つファーストリテイリング、日本生命保険、サントリーホールディングスなどの日本企業がすでに賃上げを決定しています。日銀の黒田総裁は、金融緩和正常化を実現に向けた賃上げの重要性を強調しています。その後4月に日銀の新総裁および2名の副総裁の就任を控えており、引き続き政策転換を巡る憶測が広がる可能性があります。

市場の方向性については概ね当社の予想通りの展開となっていますが、政策決定のタイミングなど先行きに対する不透明感は高まっています。これらを踏まえて、日本株(JP225)に対して弱気なスタンスを維持する一方、日本の銀行株(TPX Banks ETF)を選好することも検討すべきかもしれません。しかしながら、足元のボラティリティの水準を踏まえると、今週は警戒感を強めつつ臨むべきでしょう。

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