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チーフ・インベストメント・ストラテジスト
サマリー: パウエル議長の議会証言は、タカ派的なメッセージとともに幕を開けました。市場は今、FRBが3月の会合で0.5%の追加利上げを実施し、ターミナルレート予想は5.6%に切り上がるとの見方に傾いています。10日公表の米雇用統計(NFP)と14日公表の米消費者物価指数(CPI)の動向が3月の0.5%利上げを左右するとみられますが、少なくともパウエル議長が2月に指摘したディスインフレが顕在化していないことは明らかとなりました。今後も強い経済データが示されれば、リスク資産は引き続き下押し圧力に晒される可能性がありますが、米ドルは上値を切り上げる公算が大きいと考えられます。
パウエルFRB議長の半期に一度の議会証言は、政治的なイベントであったものの、紛れもなくタカ派色の強い内容となりました。2月のFOMC会合でディスインフレの兆候に言及するなど緩和的なスタンスを示したにもかかわらず、パウエルFRB議長は一連のデータで米経済が成長を遂げていることに安堵するよりも、依然としてインフレ圧力の高まりに強い懸念を抱いているようです。また、「入手されるデータ全体によってより迅速な引き締めが正当化されると示唆されれば利上げペースを高める用意がある」と述べ、再び利上げペースを加速する可能性が高まっていることを強調しました。
次の図に示す通り、3月22日のFOMCで0.5%利上げが実施される可能性は急速に高まっています。パウエル議長は最新の経済データは「予想を上回る強さ」であるとし、「最終的な政策金利の水準が従来の予想よりも高くなる可能性があることを示唆している」と利上げペースが再び加速する可能性に言及しています。2月に強い経済指標が確認されてからわずか1ヶ月という短い間に生じたこうしたスタンスの変化は、パウエル議長がディスインフレが顕在化していないことに安心感を見出していることを裏付けるものとなりました。
一方、今後の経済指標の内容次第では、パウエル議長が議会証言で示したスタンスを再び覆す可能性は残されています。FRBが予想通り3月に0.5%の利上げに動くか否かは、10日の雇用統計や14日のインフレ指標が鍵となるでしょう。また、予想以上に強い経済データが続けば市場が織り込むターミナルレートは6%に向けて一段と切り上がることとなり、FRBが市場に大きく後れを取っていることが浮き彫りになります。また、2月に一旦0.25%に縮小させて利上げ幅を再び0.5%に戻すとなれば、FRBの金融政策に対する信頼感が揺らぐ事態になりかねません。
3月の50bps利上げの確率が高まったことに加えて、パウエル議長のトーンが変化したことで足元で市場が織り込むターミナルレート予想は昨年末時点の4.9%、およびFRBが12月の会合でドットプロットで示唆した5-5.25%から5.65%へと切り上がっています。パウエル議長の議会証言での発言を受けて米国債は大きく売られ、米2年国債の利回りは12bps上昇し、2007年7月以来で初めて5%超えの高水準を付け、その後アジアの取引時間中は5.05%と一段の上昇に向かいました。しかし、ロングエンドは米10年債利回りが1bp低下し3.96%、30年債利回りが2bps上昇の3.87%にとどまるなど、日中の取引時間中に付けたボトムから回復しました。これにより、2年国債と10年国債のイールドカーブはフラット化し、逆イールド現象は1981年9月以来の幅(-105bps)に拡大しました。
しかし、FRBの「より高く、より長い」利上げのメッセージは、米10年債利回りにさほど影響を与えていないことには、違和感を抱かざるを得ません。FRBのメッセージが市場と一致したものになるためには、10年債の利回りが上昇するか、あるいは2年債の利回りが低下に転じる必要があります。ただし、これは同時に金利のボラティリティが上昇する可能性があり、株式のリスクプレミアムもつられて上昇する可能性があることを意味します。これらを踏まえると、米国株以外の資産を保有することは金利リスクを低減する有効な手段になり得ると考えます。当グループでは、今年は欧州とアジアの株式市場がその他の市場をアウトパフォームすると予想しています。こうした中、中国経済も回復のモメンタムを取り戻し、着実に成長を遂げる見通しですが、同国を巡る規制や地政学的リスクの高まりを鑑みると、回復の道のりは決して平坦なものとはならないでしょう。
米ドルは再び年初来の高値水準にあり、一時的な調整を経た後にもう一段の上昇に向かう能性があります。米ドルインデックスは200日移動平均線と106.45(76.4%のフィボナッチリトレースメント)が節目となります。なお、足元では以下をはじめ複数の要因が米ドルの追い風となっています;
これらを踏まえると、たとえFRBが3月の会合で再び0.25%の利上げに踏み切ったとしても、ドットプロットが一段と切り上がってゆくと考える十分な理由があり、また、それによって米ドルが足元のレンジにとどまる公算は大きいと考えられます。