最近、FRBのピボット(政策転換)を求める声が高まっている理由
今週の米国経済データはやや弱く、先週までの景気の底堅さを感じさせるものから一転した状況となっています。9月の米消費者信頼感指数は108に上昇して予想を上回り、現状指数と期待指数の双方が上昇に転じました。その後、5月以来の20万人を下回る、週間新規失業保険申請件数が発表され、労働市場の逼迫が続いていることが示唆されました。
しかし今週は、ISM製造業景気指数が予想を下回り、JOLT求人件数が伸び悩むなど、労働市場の逼迫緩和を示唆する結果となり、状況は反転しました。しかし、これらの数少ないデータでは、トレンドの変化やFRBの政策転換を裏付けるものにはなりません。
RBAの政策転換により、世界の中央銀行のタカ派姿勢ピークアウトの期待が高まる
G7の中央銀行の1つが政策を転換すると衝撃が走ることが予想されます。しかし、オーストラリア準備銀行(RBA)の場合はやや特殊です。利上げペースの減速を示唆するシグナルは、住宅市場や家計への影響への懸念から生じたものでした。また市場は、RBAが政策金利を4%まで積極的に引き上げると予想していました。
米国経済はより国内主導型であり、特に中国の活動水準への依存度が低いため、中央銀行が引き締めを行う余地がかなり高いと思われます。また、RBAは毎月会合を開いているため、会合頻度の低い他の中央銀行と比較して、毎月25bpの利上げでも結果的により大幅な引き締めを行うことができることも念頭に置いておく必要があります。本日(10月5日)のニュージーランド準備銀行の50bpの利上げは、むしろFRBや他の世界的な中央銀行が政策を転換するのはまだ先であることを確認させるものとなりました。
何かが壊れるまで…
FRB は何かが壊れるまで利上げを続ける、というのはよく聞く話です。日本円の下落から、英国債市場の急速な暴落まで、何かが壊れつつあります。金融市場で何かが壊れることで、FRBは国内経済が壊れるよりも早く方向転換する可能性があります。
当社のアナリストが指摘するECB のシステミック・リスク指標など、より広範な金融ストレスの指標を注視することが重要でしょう。今のところ、システミックリスクは見受けられず、例えば英国の年金基金業界よりも大規模な資金が問題を抱えるといった状況にならない限り、中央銀行が本格的に政策を転換するとは考えにくいと思われます。
FRBは「ボルカー」マインドで臨んでいる
パウエルFRB議長は、ジャクソンホールでのメッセージでボルカー元FRB議長の政策を引き合いに出し、インフレ政策を強化しています。高インフレが続くと中央銀行の信頼性が損なわれることは明らかであるため、FRBは政策を転換する前にインフレを完全に鎮静化したことを確認したいと考えており、早期に政策を転換することでインフレとの戦いがより困難になった過去の失敗を回避したいのです。歴史は、早すぎる方向転換が1970年代のようにインフレの再燃につながることを示しています(下表参照)。ボルカー元FRB 議長は前任者とは異なり、インフレがピークに達した後も金利を高い水準に維持し、1979年に利上げを開始して以来、1982年になってやっと政策を転換しました。